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五年後

 転生してから、五年が経った。

 この世界にも、慣れてきたつもりだ。


 私はこの世界で、新たな名前を授かった。

 その名は「エステラ」。家族からは、愛称としてステラと呼ばれている。


 生活は大きく変わったが、広い視点ではそんなに変わっていない。

 例えば、一日三食、お風呂に入る、ベッドで寝る、など。当然かと思うかもしれないけど、本当に昔では毎日お風呂に入れるわけもないし、食べるものにも苦労している時代もあったから。


 そしてある日、今まで何の音沙汰もなかったのに、例の神様の声が飛んできた。


『朔夜、聞こえるか?』


『えっと………はい!』


 どうしたらいいのか分からなかったけれど、どうやら強く念じればいいらしい。

 所謂、テレパシーというやつだろうか。いや、念話?通話?よく分からない。


『おお、良かった良かった

 急じゃが、御主にはアメリア———御主の母と、此処まで来て欲しいんじゃ』


 母のアメリアは金髪碧眼の美人さんで、天界と呼ばれる天使の住む場所を治める、女王だ。

 普段はおっとりしているけれど、実力至上主義の天界で王になれるほどの人物。ただものではない。


『えっと……そんなに簡単に行けるものなのですか?』


 先ほども言ったが、私がいるのは天界だ。

 対して、神様が住んでいるのは「神界」と呼ばれる、また別の場所のはずである。


『アメリアなら大丈夫じゃ

 御主が生まれる前は、毎日の様に行き来していたからの』


 え、それってパシ———やめておこう。

 うん、いい秘書的な役割なんだね、きっと。


『まあ、御主が言っても信じてもらえるとは思うが、一応我からも伝えておく

 そうじゃな………二日後に来てくれ

 用意は特にいらん』


 そして、一方的にブチっと切られた。

 …………凄いフリーダム。

 まあとにかく、私は母さんについていったらいいって事だよね。おけー。


 母さんに報告に行こうとすると、廊下で妹に出会った。


「おはよう、アデラ」


「おはようございます、姉様」


 アデラ——アデリナは三歳で、私の二つ下だ。

 金髪緑眼の美少女で、可愛い。とにかく可愛い。


「何処か行かれるのですか?」


「ちょっと母様にお話があるの」


 話し方も、ある程度は丁寧にしておかないといけない。

 姉妹だから、大分気を抜いた話し方だけどね。


「そうですか

 今日も一日、頑張りましょうね」


「そうだね

 じゃあ……」


 アデラと別れて、私は母さんがいるであろう、中庭へ向かう。

 天界は実力至上主義であり、その中でも武力が求められる。魔族と戦争をしていたり、人間に攻め込まれたりした事があったかららしいけど………物騒だね。まあ、過去の話だけど。

 そして、この城——天空城には、中庭と地下に、スタジアム的な何かがある。運動場よりもはるかに広く、高性能なそこは、城にいる者達に開放されている。そう、使用人さん達も有能。強いし、賢い。


「母様、いらっしゃいますか?」


 中庭に建てられた、石製の建物に入ると、数十人が訓練をしていた。

 その中に、母さんもいる。


「あら、ステラ

 どうしたの?」


 母さんは汗を魔法で消し、さっぱりした様子でこちらへ来る。


「リンネ神様から、お聞きになりましたか?」


 先ほどの神様は、リンネ・デア神という名前で、神界のトップに立つ存在らしい。

 そんな方に会えた事、話せた事は、間違いなく貴重な体験だろう。


「ええ、ええ!

 ステラが異界からきたのは知っていたけれど、まさか案内神がリンネ神だったなんて!

 二日後だったわね。すぐに準備に取りかかりたいのだけど、少し父様と相談してくるわ」


 ………ん?

 聞き捨てならない言葉が。


「知っていた……?

 母様は、私が地球からきたと、知っていたのですか!?」


 食い気味になって聞くと、母様はけろりと答える。


「地球………は知らないけれど、魂の形が違うもの

 城にいる者は、皆知っているんじゃないかしら

 まあ、そんなに珍しいことでもないわよ?

 適性のある者が少ないと、どうしても異界から招かなければならないのよ

 だから、天使や神、魔族辺りも、異界出身の方は多いと思うわよ?」


 え〜〜〜っと???

 つまり、私の周りにも、いっぱい転生者はいると。

 え、会った事ないと思うんだけどなぁ……?


「それでも、記憶を持っているのは珍しいわね

 魂を送るときに、記憶に封印をかけるのよ。混乱を起こしてもいけないものね

 潜在力が大きければ大きいほど反発されるけれど、その場合は定期的に封印し直しているの」


 あ、なるほど。

 転生しても、その事実を知らない、と。

 まあ、考えてみれば、そりゃそうだよね。転生者ばっかりで、異世界の事持ち出されても、迷惑極まりないし。


「ステラ、準備をしたいから、先に行っておいてくれるかしら

 ライラ、お願いね」


「承知いたしました」


 ライラは、私つきのメイドさん。私はリラと呼んでいる。

 しっかり者だけどおっとりしていて、素敵なお姉さんだ。


「では、姫様

 こちらへどうぞ」

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