尾生之信とはよく言ったもんだな
いつものように、ベッドの上には、パルの胸の谷間に顔を埋めた孫娘のアリア様の姿があった。真夜中に暗い廊下を歩いてくるのかな? アリア様は怖くないのだろうか? 不思議です。
アリア様は、本当に…私の事を抱き枕だと思っているのね。アリア様は、静かな寝息を立てて眠っています。時々、ママっと寝言を言うのです。自分の母親と重なってしまい…。なんとも、いたたまれなくなり涙が、出そうになるのです。
そして、今は、透明なドロドロのコーティングで消されている…左手の掌に刻まれた壺の【呪詛印】を、何となく眺めているのです。
【呪詛印】は発動しなければ、見えないので、知らない内に、知らない呪詛印が体に刻まれている可能性があるのです。
特に、このような商人のお屋敷なら、魔道具の一つや二つ…ありそうで怖いのですが。まぁ…増えて人間社会で暮らせなければ、シャーク師匠の元に帰れば良いかな。
このお屋敷で、今のまま暮らしていければ…。【呪詛印】など、それ程、気にする必要も無いのです。ふわぁ〜…。眠くなりましたね。私も…そろそろ…寝ますね…。
ちなみに【空模様と恋人】に衣装効果が追加されていました。はい、抱き枕でした…。
■修正
・魔道具の名称:空模様と恋人
・魔道具の形状:絵画
・魔道具の能力:片思いの相手との関係性を占う
・刻まれた部位:左肩
・呪詛印の絵柄:イカレタ竜の顔
・発動時の能力:なし
・無意識の効果:衣服により性格が変化する。()は印象操作での効果。
・全裸または下着姿(襲ってくれ):人間不信
・修道着(神々しい):神々を盲信的に信仰する
・鮫の着ぐるみ(かまってちゃん):頑張り屋
・魔女ローブ(エロ):強気で負けず嫌い
・メイド服(親しみやすい):おしゃべり大好きなドジっ子
・パジャマ(抱き枕):優しいお姉さん [New!!]
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朝は、お屋敷の誰よりも早く起きます。しかし、本日は、アリア様が目を覚ましていました。
「パルお姉ちゃん…。お耳…触っても良い?」
基本的に多くの亜人は、人間にない特徴と能力を持つため優れているのですが、人間のように工夫するというのが苦手なため、どうしても人間の後塵を拝する場面が多いのです。
亜人よりも更に強い魔物が、徘徊する世界では、人間が築き上げた、街という仕組み、文化、社会などに、保護されるしか…生きる道はないのです。
ですから、つい最近までと言っても、私の生まれるずっと前の話ですが、亜人奴隷という制度があったのです。亜人の身体能力は、奴隷として、とても役立ちました。味をしめた人間たちは、より過酷な労働を亜人たちに課していったのです。
しかし、亜人解放軍が、幾つかの街で、実力行使による人権の奪還を行うと、その種火は次々と広がり、人間と亜人の戦争に発展してしまったのです。難しいことは、わかりませんが、その後、人間と同等の人権が亜人に認められ、戦争は終結したそうです。
なので、人間とは異なる亜人の特徴を、露骨に触るというのは、ご法度なのです。しかし、私は、亜人のつもりはないし、アリア様のように、お願いされるなら…。
「パルお姉ちゃんのお耳、フワフワしてるね。いいなぁ…。アリアも、このお耳が良いなぁ…」
多分と言うか、間違いなく、私と出逢ってから、ずっと…耳と尻尾を触りたかったのだろう。だって、ピコピコ動く耳、フルフル動く尻尾は、可愛くて獣好きにはたまらないでしょうから。
しかし、耳も尻尾も、そんなに触られたことはないのだけど、ゾクッと来るね…。嫌な感じじゃないけど…。全身の力が抜ける感じがします。
「ア、アリア様…そろそろ…尻尾を離してください。朝のお仕事がありますので…」
「嫌よ。モフモフして可愛いから、嫌よ」
「うっ…。お願いします…」
何故か最近になって、アリア様が、段々と我儘になってきた気がするのですが…。