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ビッチとはよく言ったもんだな  作者: きっと小春
第一部 弾丸黒子とはよく言ったもんだな編
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転迷開悟とはよく言ったもんだな

  お屋敷の主であるフィロア様は、大変お忙しく、月に2,3日程度しか、お屋敷にお戻りになりません。また、とても恥ずかしがり屋なのか、身の回りのお世話も、湯浴みは勿論、お着替えも持ち運ぶだけで、私の手を借りようとはしませんでした。


 正直、他人に裸を見られるなんて、異常だと思っていたので、フィロア様の好感度はグングンとアップしました。あっ、主様に対して生意気でしたね。反省します。


 孫娘のアリア様の衣服やシーツ等だけでは、洗濯物の量も少ないので、お屋敷で働く皆さんの分も洗濯しています。あっ、でも、フィロア様がお出かけになるときは、警備兼御者兼庭師のアルマさんも、ご一緒なので、やはり洗濯物の量は少ないです。


 たまに洗濯板で、ガリッと、透明なドロドロのコーティングを削ってしまい、水に濡れた肌が鮫肌になってしまうのは、ご愛嬌ですね。そんなときは、人目の付かない小屋などに入って、つるっぱげ&全裸に戻り、コーティングをし直しています。


 掃除に関して言えば、フィロア様とアリア様のお部屋、応接室、客間、浴室、トイレ、玄関、ロビーなど…元々汚れていませんし、ホコリも積もっていないため、あっという間にお掃除も終わってしまいます。


 午前と午後の合計2時間は、アリア様に読み書きを教えていますので、退屈ではありません。アリア様は、とても明るく元気な性格ですが、とても聞き分けが良く、手のかからないお嬢様なのです。しかし、子供ながらに…どこか寂しさを抑え込んでいるようで、少し心配になります。特に、笑顔が素敵なので、お屋敷の男性たちは、騙されているのではないでしょうか? 女同士という事もありますが、茶色の狼の耳と尻尾が、勝手にだらんと寂しそうに垂れるので、間違いないでしょう。


「パルお姉ちゃん。今日の夜、一緒に寝て」

「アリア様。私の事は、パルとお呼びください。それに来年からは寄宿舎に入る予定なのですよね? 一人で寝ることを怖がってはいけません」

「うーっ。パルお姉ちゃんの意地悪ぅ…。アリアは、パルお姉ちゃん来るまで、ずっと一人で頑張ってきたんだもん。お願い、今日だけ!!」


 午後の勉強の後に、毎日繰り返されるアリア様からのお願い事。このお願い事に関してだけは、私が首を縦に振るまで続きます。これ以外は、とても聞き分けが良いのですが…。アリア様は、私の事を抱き枕だと思っているようです。まぁ、子供特有の日向のような匂いなので、嫌ではないのですが…。何かの拍子に、イカの香りが漏れ出したらと思うと、少し怖いのです。


 今日は、いつもよりも、アリア様の寂しさ度が高いように感じます。そんなときは、薬草師兼コックのオルドーさんを巻き込んで、お菓子作りをします。一人でも多くの人と一緒にいれば、アリア様の寂しさも紛れるのではないかと、思ったのです。


 最初の一回目は、オルドーさんの作り方を、アリア様と一緒に見学していました。驚くことに、二回目にアリア様は、「自分でやりたいと」言い出して、オルドーさんの手順通りに、お菓子をお作りになったのです! いまでは、アリア様とオルドーさんで、オリジナルお菓子を考える程に成長しました。


 私ですか? あれ? 私って…お菓子作りの才能が…。いえ、私はアリア様のお菓子を食べる係です。


 私は、夜なべして…本当は日中の空いた時間に、得意の裁縫でアリア様専用の小さな花柄のエプロンを作りました。そして、エプロン姿のアリア様は、とても可愛いのです。普段は、普段で、とても良いのですが、その長い髪で顔が隠れてしまっているのです。三角巾で綺麗な小顔がくっきりと、見えるようになり、基本性能の差は、これほどまでに残酷なのかと、私を打ち震えさせるのです。ぐっ…。将来が楽しみだぜ。


 ちなみに、魔物のマーメイドのマリナと付き合っていたときは、イカ臭い私の体は、「人間の匂いより全然いいわよっ!? 寧ろ、香水で同じ香りが欲しいぐらいよ!」と大好評でした。海底の温度はとても低く、汗が空気に触れないため緑のドロドロにも変質しませんでしたし…。あれ? 海底で暮らしていたほうが…友達もいたし、楽しかった!? 人間って、失ってから気が付く、愚かな生き物なのですね。


 パリッと、アリア様の焼き立てクッキーを食べながら、しみじみと思うパルでした…。


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