赤口毒舌とはよく言ったもんだな
ポーガレストから特効薬を持って帰ってきてから3ヶ月が過ぎました。特に変わったこともなく、警備兼御者兼庭師のアルマさんとの訓練も順調で、「新人の盗賊ぐらいなら、問題ないだろう」とお墨付きまでもらうことが出来ました。
「ほら、見てください。力こぶですよ!」
「ど、どこっ!?」
「えっ!? ちゃんと見てくださいよ!!」
「う、うん。まぁ…。確かに、何かが、そこにあるな」
午後のおやつの時間に、孫娘のアリア様が作ったお菓子に、私のハーブ畑で取れたハーブティーを初めて組み合わせてみましたが、薬草師兼コックのオルドーさんと執事のロバートさんも含めた四人は、満場一致で合格点を出しました。これならば、お屋敷の主であるフィロア様にも楽しんで頂けると、ロバートさんも喜んでいます。
のんびりと、まったりと、時間がゆっくり過ぎていきました。
あの事件があるまでは…。
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「ん…。ここは…?」
「お目覚めですか? メイドのパル。いや、リーシャ・カラムだったか?」
ヒンヤリとした懐かしい感じ。修道院に作られた特別な地下室を思い出します。見た目も同じ様で、石が積まれただけの壁であったが、一部だけ違いました。鉄格子です。衣服の乱れを確認しました。
「不思議なことに、そのメイド服も下着も脱がすことが出来ませんでした」
先程から声をかけてきていた男性は、身なりの良い初老の男性でした。
「レズナ家、アーベーニ家のどちらの方でしょうか?」
「ふふふっ。察しが良くて助かります。現レズナ家の当主、アルダート・レズナ辺境伯様から、このウルルの運営管理を任されているデビデ・ハーンです」
アルダート・レズナは、辺境伯であり、子爵のフルゲェル・カラムとは、比べ物にならない権力、武力、経済力を持っています。そんな戦力差がありながら、父フルゲェルが戦っているのが、そもそも可笑しな話なのです。そのレズナ家の配下に当たるのが、ハーン家。デビデ・ハーンは、父フルゲェルと同じく子爵なのです。
「ひとつだけ…教えてください」
「何でしょうか?」
「陰で糸を引く、アーベーニ家の事は、全部理解して…それでも…」
「言いたいことはわかりますよ。ですが、理由はどうあれ、カラム家も直接、手を出したことにも事実でしょう」
「どういうことですか?」
「全ては知りませんが、貴方の母ニルス・カラムを仇として、そうですね、あたなにわかりやすく言えば、魔道士ダリルの姉リーナ・レズナと、貴方の主フィロアの息子フォイド…つまりアリアの両親が、盗賊襲われ殺害されたのですよ」
「そ、そんな…」
「その両家の事件でリーシャ・カラムも死亡していたはずなのです。生きていたらバランスが取れないでしょう? お前の様な汚い小娘と屑な父親、その屋敷のメイドたち…ゴミだとしても、天秤にかければ傾いてしまうのですよ」
「そ、そんな…」
「ですが、一度だけ、チャンスを与えます。ここに毒薬があります。一切苦しまないとまでいきませんが、早々に死ねるでしょう。次、私が来る早朝までに自害なさい。でなければ、死ななかったことを何百回と後悔することになるでしょうね」
不味いです。【呪詛印】の【壊れた懐中時計】と【棺桶いらず】によって、不老不死になっているのです。毒薬を飲んでも、拷問されても…多分、死ぬことはないでしょう。つまり、永遠に苦しむということなのでしょうか!?
初老の男性デビデは、毒薬の瓶を置いて…去りました。




