不失正鵠とはよく言ったもんだな
メイド服に着替えると、昨晩の記憶が無かったため、一応…恐る恐る執事のロバートさんに、帰ってきたときの様子を聞いてみました。
「驚きました。ポーガレストとの往復にしては、あまりにも帰りが早く。お屋敷に入るなり倒れてしまったのですからね。私もフィロア様も、特効薬を手に入れられなかったと思いました。それも仕方ないと…。それに、パルを責めないでくれと、オルドーが必死に庇ってくれていましたよ?」
「なんだか…いろいろとすいません…」
「で、アルマが、パルが握りしめているアルデイト医院の袋を見つけた時は、全員がまたまた驚きました。わずか14時間で帰って来たことにですよ。しかも、お願いしたと特効薬の数量より多いではないですか…。そうそう、今朝早く、フィロア様とアルマは、バークランド医師に、残りの特効薬を届けに行きました。これで同じく紅咳熱で苦しんでいる人も助かるでしょう」
「本当に良く効く特効薬ですよね。アリア様も見違えるように元気になり…安心しました」
「私もですよ。フィロア様から、今日は、ゆっくり休んでくれと…」
「いえ…。それほど疲れていません。働かせてください」
汗のドロドロで、孫娘のアリア様のヒンヤリパジャマを作ってしまったため、誰も脱がすことが出来ず、朝一番の仕事は、アリア様の湯浴みとなりました。
「パルお姉ちゃんは、空を飛んでポーガレストまで行ったの?」
「はい。それよりも、頭を洗ってしまいましょう」
「もう…。二人きりの時は、メイドじゃなくて、お姉ちゃんになってよ…意地悪…」
「わかったわ。アリア。頭を洗って、湯船に入ったら、お話してあげます」
「はーい」
相変わらず、【呪詛印】の【人魚の人形】と【ワーウルフの鏡】のコンボの効果で、魅了されているアリア様は、私の胸の谷間に顔を埋めている…。
「で、森を抜け、高原を横切り、大きな川沿いに出て、橋を渡り…草原と湖の先に、ポーガレストがあるの…」
「そんなに遠いの?」
「そうよ。遠かったわね…」
「パルお姉ちゃん。アリアのために、ありがとう」
「ふふっ。アリアのためだから、頑張れたのよ」
午前中に、アリア様の湯浴みが入ったため、少し過密なスケジュールになりましたが、午後には通常通り、まったりとした時間が流れます。アリア様の体調を考慮して、午前と午後の勉強がお休みになったこともあり、さらにまったり度がアップしました。
自室で、つるっぱげ&全裸になると、盗賊に刺された背中を鏡で写します。やっぱり傷一つありません。しかし、治ると言っても、保証がないため、刺されないように気を付けます。部屋がイカ臭くなり始めたので、【呪詛印操作】でメイド服姿に戻ります。
ベッドの寝転がると、なんだかんだと、【呪詛印】を使い熟している自分に笑ってしまいました。しかし…突然…自分が人を殺してしまった事を思い出したのです。怒りに身を任せて…。あんなに簡単に人間って…死んでしまう…。アリア様の命を救おうとして、見ず知らずの盗賊を殺す。
【呪詛印操作】で修道着に着替えると、命の神エルメーラに祈りを捧げました。名前も知らない盗賊が、生まれ変わることがあれば、今度は幸せな人生を送れるようにと…。
『他者の命を奪うことに喜びを感じる悪魔から、貴方は彼を救ったのです』
『人間は迷い彷徨う…神の声を聞き、答えを導き出すのです』
それは神の啓示。正義の神ラ・シールと真実の神デフォメイルからの啓示。
■追加
・魔道具の名称:七大神のお守り
・魔道具の形状:腕輪
・魔道具の能力:七大神のご加護があると言われている
・刻まれた部位:右腕
・呪詛印の絵柄:7つの宝石
・発動時の能力:神の啓示を受ける
・正義の神ラ・シール
・真実の神デフォメイル
・無意識の効果:なし
いつの間にか新しい【呪詛印】が刻まれていました。どうやら…この【呪詛印】は、修道着を着て、神々を心の底から信仰しなければ発動しないみたいです。
今回の盗賊討伐は、正義の神ラ・シールに認められたのです。心の重荷が消えました…。




