辛苦遭逢とはよく言ったもんだな
「いや…待ってくれ…命だけは助けてくれ…」
残り二人が武器を捨て、両手を上げ、跪きました。いや、こっち…刺されてるし…どうしましょうか? と、考えている間に、馬車の入り口を守っていた私兵が、バッサ、バッサと二人を斬り伏せてしまいました。
あぁ…やっぱり、それで良いのか。と、感心していると、今度は、倒れている盗賊たちにも、グサリグサリと止めを刺し始めます。
盗賊全員に止めを刺した私兵は、私に御礼の言葉をかけてきました。
「魔女様のおかげで、我が主を守ることが出来ました。何とお礼を言って良いのか…」
しかし、私兵は…同い年ぐらいの男の子。私の露出していないはずの胸元を見て、興奮してしまい…固い者が硬い鎧に引っかかったのか、腰をウネウネしています。
うん。見なかったことにします。
馬車の窓から見ていたのでしょうか? 戦闘が無事、勝利で終わったためか、馬車の中から女性が降りてきました。驚くことに…その女性を知っています。子爵フルゲェル・カラムの次女ウリファの娘…カーファです。
「貴方…。リーシャなの?」
二年ぶりにリーシャという名で呼ばれました。確か、カーファは、地方の都市…ポーガレストに嫁いだと…。
「久しぶりだな。カーファ姉様…。頼みがある。この馬車は、ポーガレストまで行くのか?」
再会の喜びや会話より、アリア様の特効薬の方が大事なのです。事情を説明すると、カーファ姉様は、「では、話は馬車の中で…」と快く乗せてくれました。御者も殺されていたので、私兵が代わりに手綱を握ります。 カーファ姉様は、「アルデイト医院まで走らせて」と私兵に命令しました。
「まずは盗賊から救ってくれて、感謝しているわ」
「気にするな。偶然通りかかっただけだ。それに馬車に乗っているのが、カーファ姉様だと知っていたら、助けなかったかも知れない」
「そう…。それ程…一族を恨んでいるの?」
「………」
「修道院から突然消えて…一族総出で一年以上捜索したのよ?」
「………」
「それで…もう呪いは消えたのかしら?」
「いや。まだ何も解決していない。ただ呪いを抑える方法を手に入れただけだ」
「確かに…人を魅了するような美しさを手に入れたようね」
「……」
「戻ってくる気はないの?」
「ない。今日、ここで出逢ったことは、誰にも言わないで欲しい」
これ以上、会話する気はないと、窓の外を向き目を閉じる。そして、背中を刺された事を思い出し…手を当ててみます。コーティングが傷ついているものの、刺し傷も消えている気がします。やはり不死なのですね。
慣れない戦闘で心が疲労したためか、不死の治療で体力を使ったためか、いつの間にか、乗り心地の悪い馬車の中で寝てしまいました。
「着いたわよ。起きて。リーシャ」
馬車の窓から夕日が見えました。どうやら半日で、目的地のポーガレストにあるアルデイト医院まで来れたようです。カーファ姉様に挨拶をして馬車を降り、アルデイト医院に入ったのですが、何故か、カーファ姉様も一緒に入ってきました。
「私がいた方が、話が早いわよ? 本当なら、城塞内の医者を紹介したいけど、仕方がないわよね…。ほら、紹介状を出して…」
確かに…。受付で並んでいる人達を差し置いて受付嬢は、カーファ姉様を優先的に対応していたし、医師も特効薬を素早く多めに渡してくれました。
「助かった。それでは…元気でな。何度も言うが、ここでの出来事は一族には黙っていてくれ」




