四百四病とはよく言ったもんだな
突然、孫娘のアリア様が倒れました。薬草師兼コックのオルドーさんでも、原因が理解らず、街の医者を警備兼御者兼庭師のアルマさんが、大至急連れてきました。街の医者と言っても…内壁の魔法が使えない平民の医者です。魔道士ダリル様に教えられ、貴族様の住まう城壁内の住民は、全員が魔法を使える…つまり魔法で病気も治療できるはずなのです。しかし、城壁内には、お屋敷の主であるフィロア様でも立ち入る事が出来ないのです。
「流行病の紅咳熱だ。この街には…その特効薬が足りてなくて…外壁内や内壁内では体力のない子供が、大勢亡くなっている。後は…アリア様の体力が持つかどうか…」
医師のバークランドさんは、申し訳ないと言って、お屋敷を去っ行きました。フィロア様は、馬車で帰るバークランドさんと共に、アルマさんと街へ向かいました。
「パルお姉ちゃん…熱い、熱いよ…」
アリア様は、布団から小さな手を出してきました。私は小さな手をぎゅっと握ります。その手は燃えるように熱く…こんな小さな子が…耐えられるような病気ではない事を悟りました。
「熱を下げないと…」
何か助けられる手段がないかと…必死で考えます。扇子で扇いでも…意味がない…地下室に? そうだ…少しでも温度の低い場所へ…。
「地下室…ですか? 確かに…ここよりは温度が低いですが」
執事のロバートさんも、藁にも縋る思いなのか、私の提案を受け入れてくれました。オルドーさんにも協力してもらい、地下室に簡易ベッドを作ると、担架でアリア様を運びました。
「ロバートさん、私…魔法で…アリア様を包みます。よろしいでしょうか?」
アリア様の衣服を脱がし、布や革を溶かす性質を排除した透明のドロドロのコーティングで、アリア様の全身を覆います。いや…服…パジャマをイメージして…。
ドロドロのコーティングは、体温調整もしてくれる…優れた隠し効果があるのです…。
「パルお姉ちゃん…少し…楽になったみたい。これ…お姉ちゃんの魔法なの…?」
「うん。アリア様…一緒に、がんばろう…」
アリア様が寝るまで一緒に地下室にいましたが、上でフィロア様たちの声が聞こえたので、特効薬が入手できたか聞きに行くことにしました。
「次のキャラバン隊は3日後だ。とてもアリアの体力が持たんぞ…。やはり自ら行くしか無いのか…」
「外壁の外は魔物だらけだ。私達だけでは無理ですっ!」
近づくと、フィロア様とアルマさんの言い争いが聞こえてきました。巻き込まれないようにと、オルドーさんが腕を引っ張り、ロバートさんのいる食堂に、連れてこられました。
「薬のあるポーガレストという待ちに行くには、定期的に出ているキャラバン隊と行かなければ、身の安全が保証できないのです」
「キャラバン隊は何故安全なのですか?」
「ハンターを大量に雇って護衛させているからな」
「では…こちらもハンターを雇えば?」
「いえ、このウルルにいるハンターの数は限られている。既に3日後のキャラバンのために、ほとんどのハンターは、確保されてしまっているだろう」
そんな…。アリア様は、今も苦しんでいるのに…。
「それなら、私が行きます! 私もハンターです。特効薬を入手できるように紹介状を書いてください。それと…ポーガレストまでの行きかた…お店の場所とお金を…」




