三人成虎とはよく言ったもんだな
思えば二ヶ月ぶりに屋敷の敷地から外に出ました。今の私は、黒で統一された魔女ローブと、耳を隠すための帽子を被った魔女コーデになり、ついでに言うと性格は、強気で負けず嫌いです。
そして、印象操作の範囲外になるように、なるべく人との距離を3m以上取ります。範囲内に入られると、エロい魔女という印象を与えてしまうのです。
お屋敷の主であるフィロア様に呼び出された私は、魔道士ダリル様の仕事の助手を頼みたいと言われ、ダリル邸のに来ています。直接、ダリル様の仕事部屋に通され、挨拶を軽く済ませると、仕事の説明が始まりました。
「よく来てくれたね。確かに…。印象が操作されるようだね…。事前に知らされていても…これ程の効果があるとは…」
「すまんな。メイド服以外だと、魔女ローブしか無くてな」
「あぁ…。気にしないでくれ。パルに頼みたいことは、全部で3つ。まずは君の【呪詛印】の研究。これはフィロア様から頼まれたことなんだ。君も出来るならば【呪詛印】を解呪したいと考えているのか?」
「【呪詛印】を消せるのか!? 消せるのなら…頼む…」
「わかった。次に、【呪詛印】が消えるまでの間。魔物の討伐に協力してもらいたい」
「討伐? 残念だが…無理だな。戦闘系の力は保持していない」
「すまない。説明が足りなかった。君の【呪詛印】を調べた上で、戦えると判断した場合だ」
「ふむ…。そうか…。無理だと思うがな」
「まぁ。いきなり一人で魔物と戦えとか…そういう話ではない。心配しないでくれ」
「……」
「最後のお願いはアリアを見守って欲しいということだ」
アリア様は、ダリル様の姪に当たるそうです。つまりダリル様のお姉様とフィロア様の息子の娘が、アリア様なのです。アリア様の両親が盗賊に襲われ無くなった後、元々、貴族であったダリル様は、とある脅迫からアリア様を守るため、爵位を返上したらしいのですが、詳細は不明です。
しかし、先程も言った通り、誰かと戦うとか無理ですよ? 死にますよ? アリア様のお姉さんとしてならば、吝かではないのですが…。
「まずは…【呪詛印】の調査だが…。やはり、私が君の素肌に触れと問題がある。新しい女性の助手が必要だな」
助手の調査のために、助手が必要なのですね。
「では、そうだな…。君は、魔力について、どの程度しっているのかな?」
「魔力か…。魔力を持つ者は、【呪われ人】と呼ばれ、忌み嫌われる存在というぐらいしか…」
「もし、それが間違っているとしたら? 君はどうするかね?」
「間違っている? だか、そうだとしても…」
「やはり。認識が間違っていたとしても、何も変わらぬか…」
ダリル様が言うには、遥か昔…魔力は多くの人間が当たり前のように持っていた。しかし、人が人の支配を始めると、魔力を持つ者の反発が強くなる。そこで支配する側の人間が、魔力を忌み嫌われる象徴して、長い年月をかけ世の中に広めたのだ。つまり支配する側が貴族であり、支配される側が平民なのだ。平民は魔力を持たない人間同士の結婚を求め、生まれた子も魔力なしが当たり前になる。しかし、このところ、この南西の地方では、魔力を持った平民が正義の行いで魔物を倒すため、平民の魔力持ちの評価が変わってきているという。
「つまり…貴族は、今でも魔力を持っていると?」
「その通りだ」
「ダリル様も…魔力を?」
「……」
「……」
「では、君が受けた【呪詛印】について、もう一度、説明してくれないか」
今日は、【呪詛印】の数と種類の説明だけして、お屋敷を後にしました。考えてみれば、この田舎街ウルルを歩くのは二度目です。
街を歩いていても、視線が厳しくない。それどころか優しい感じがします。
「ママ〜。まじょさんだよ!」「可愛い魔女さんね」
「やぁっ! 二ヶ月前の移民の魔女さんだね。もう街には慣れたかい?」
「どこに行くの?」
「あの魔女様、フィロア様のところのメイドさんだって!」
「明日の天気を占っておくれよ」
「今度、お店のケーキ食べに来てね!」「何よ、私の店のケーキの方が美味しいから!」
「街のお祭り、絶対に参加してね」




