亡羊補牢とはよく言ったもんだな
本日は、お屋敷の主であるフィロア様にお客様が、珍しく? ご来宅しています。特別なお客様は、私ではなく、執事のロバートさんが対応しています。しかし、「何事も勉強です」と言われてしまい…。
「今日は遠い所、ご足労頂き、礼を言おう」
「いえいえ、こちらからお願いしたことですから…」
ポンとロバートさんに背中を押されました。このタイミングでお茶を運ぶのですね!
軽く挨拶をして、テーブルへお茶とお菓子をセッティングします。緊張の余り…ロバートさんの言葉が…頭の中で消えかけています。えっと…。優雅に見せるには、タイミングとリズムとスピードの強弱を意識することでしたっけ??
ふと、視線を感じて、お客様を見てしまいました。あっ…。これは…かなり不味い失態です!! ロバートさんにお説教されるパターンです!!
「君は…」
「あっ…。えっと…。人種は、狼亜人です。あの…。すいません。人間の執事であるロバートから、改めて…お茶とお菓子をご用意しますので…」
「これ、パル。このダリル殿は、博愛主義であり、亜人に偏見はない。失礼なことを言うでない」
「えっ!?」
これは、失態に失態を重ねた最悪のパターンです!! 動揺する私に、ロバートさんが近づいてきて、フォローするように、お客様に謝罪してくれました。
「いや…。フィロア様、ロバート。落ち着いてください。私は怒ってなどいません。ただ…パル、君から、魔導の力を感じたのだ」
「魔導? パル…君は、魔力持ちなのか?」
追い詰められた私は、正直に、シャーク師匠以外の全ての事を包み隠さずに話しました。もう、このお屋敷どころか、この街にもいられないかも知れません。
「そんなことが…。大変だったろう…。嫌なことを話させて、すまなかった。ダリル殿…このことは内密に…」
「フィロア様。改めて言わなくても…。問題ありません」
あれ? 反応がおかしい? 『悪魔! 出ていけ!!』とか言われるのかと…。
「フィロア様…。わ、私は…」
「魔道士ダリル殿も、問題ないと言っておる。それに、パルが来てから、アリアが笑顔でいることが多くてな。とても助かっておる」
「フィ、フィロア様…。私は…ずっと…騙していたのですよ…。それなのに…。うっ…」
「これ、パル。お客様の前で、泣くなど…フィロア様…まだまだ、教育が足らず申し訳ございません。今後は、このような事が無い様に、しっかりと教育していきます」
「うむ。今後も頼むぞ、ロバート」
ロバートさんに連れられ退室した…私は、そのまま自室で、休むように言われました。突然の休暇です。
「パル。フィロア様のおっしゃる通り、君が、このお屋敷を追い出されることはありません。しかし…いつも笑顔の君が、そんな顔をしていると、アリア様が心配してしまうのです。アリア様には、風邪と伝えておきます。そもそも…パル。君は、初めてお屋敷に来た時、魔女の格好をしていたではありませんか。騙されてなどいませんよ。寧ろ、フィロア様へ伝え忘れた私に責任があります」
ロバートさんに言われて気が付いた。始めから魔女の格好をしてたんだ。門番の人も、職業斡旋所の人も、街の住民も、誰も…奇異な目で…私を見なかった。だから…私も気が付かなかったんだ。
なんて、優しい街なんだろう、人たちなんだろう。この街に来てよかった。
でも…なんで、海から出たとき、魔女の格好にしたんだっけ? 魔女のように何でも出来るって、自信があったのかな? そんなに深い意味は無かったよね…。思えば、あの時点で失態だったのか。




