0・東京某所の交差点にて
東京の某所、大きく広いスクランブル交差点の真ん中に落ちていた謎の籠。その中から飛び出してきたのは、過去の記録だと人間を捕食することもあるという異界生物。
報告があってからすぐに俺たち全員が集められ、駆除、および捕獲を命じられたのは今から一時間前。
異界生物はパッと見た目だけだとずんぐりむっくりのタスマニアデビル。しかし実際は食人悪魔。
こんなもの東京の外に出せるわけがないと、今日中に片を付けるように言われている。
ウォッチャーが言うには飛び出した異界性物は全部で十二匹。それらを全て捕獲ってのは確実に無理だから、とりあえず一匹以上の捕獲、残り全頭駆除できれば万々歳らしい。
相手が確実に異界性物ってわかってるから、今回は警察や自衛隊は、一般人の保護と非難にのみ駆り出されているらしい。
楽そうな仕事でなによりだ。そうつぶやいたのは誰だったか。
「無茶をするなと聡さんに言われただろう! お前以外が怒られるんだぞ分かってるのか!」
「うるさい分かってる!」
「分かってないだろ!」
「分かってるって!」
喧腰で怒鳴り合う二人の少年。片や身長百八十はありそうな銀色の髪に紫の瞳の目付きの悪い少年で、片や身長百六十代半ばの少し小柄な、金の髪に緑の瞳の少年。
七、八十年も前だったら珍しいと言われていた毛色だが、この色が珍しくなくなってはや数十年。彼らのような「色纏い」はごく当たり前のようにどこにでもいた。
ゆえにその外見は取り立てて問題ではない。
しかし彼らの手にしたある獲物は、この東京以外で見るのなら、ちょっとした騒ぎにはなりそうな物だった。
肉厚で幅の太い、反りの浅い刃の刀。「平成式胴田貫」を振り回し、彼らは進む。
その切っ先に触れて真っ二つに吹き飛ぶのは、一匹の黒い獣。
「馬鹿! お前それで残り三匹だぞ! どうやって研究用一匹捕獲するんだよ!」
「うるっさいな! だったらお前が捕まえろよ! 俺そういうの苦手なんだよ!」
某所の交差点で発生した異世界の浸食、それによる未曽有の災害を防ぐために派遣されたアルバイト、三島時雨と三島青晴。
まるで鬼神の如き強さを振るう二人の少年は、人の血肉を求め襲い掛かる悪魔どもを、まるで塵芥を払うように切り伏せていった。
こうして彼らは見事「現れたモンスターを全て駆逐」し異世界の浸食を防だのだった。