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高原署に神留まり坐す  作者: 公月奏
昔話パート3
43/56

「蹂躙」急

 ハーイ! アースガルズのトリックスター・ロキでぇす! 今回のエピソードはアタシ視点で進むよお!

 紀元前の日本なのに外来語がバンバン飛び出してくるけど、そういう理由だからってことで気にしないでねぇ♪

 んで、あと食事中には絶対読まないでね! お兄さんとの約束よ!

 大蛇オロチを討ち倒した出雲国の英雄スサノヲ様、日本人なら誰もが知っていることでしょう。

 反面、亡き母イザナミに会いたいと毎日泣きわめいたり、姉アマテラスの治める高天原に訪れた際は傍若無人極まる凶行の限りを尽くし大暴れ。

 あろうことか神殿に糞尿をまき散らし実り豊かな田を壊して回り、さらには機織り娘の陰部に――おっと、これはさすがに自分で調べて下さい。

 いずれにせよ怪物にも毅然と立ち向かうヒーローかと思いきや、過激なアウトローの面もあったりと実に多様な性格の持ち主といえましょうか。

 あまりに多面すぎるので日本国におけるトリックスター(※)と評されるほか、いくつかの神の逸話が合体した存在とされる説もあるようです。

(※神話伝承にて権力に抗い秩序を乱し、物語を展開するもの。往々にして善と悪、破壊と再生など二面性を持つ)


『フン、兵共のなんと貧弱か軟弱か脆弱か! やはり強者(おとこ)は唯の一人もおらぬと見える。これでは姉上(おんな)が主などと弱き国にもなろう』


 ――少なくともこんな武人然とした偉丈夫と、やれウンコをばらまくだのマ〇コに突き刺すなどといった下品で卑猥な事柄がピタリ結びつくとは考えにくいですよね。

 そう、現代に伝わる歴史や伝説の類はほとんどすべて何らかの脚色が入り混じっているのです。


『へへ、その犯人のひとりはこのアタシだったりして!』


 というわけで自己紹介遅れてごめんね~♪ アタシはロキ、アースガルズが誇りし世界最大のトリックスターなの!

 どれくらい悪戯好きかというと、昔世話になったルシファーとツキヨミちゃん義父子のために、はるばるこんな極東の小国まで来ちゃうくらい。

 聞くところによるとヨミちゃん、昔から自分を虐げてきたお姉ちゃんを倒したいんだって。玉座にふんぞり返ってる輩を引きずり下ろすって気分いいし、アタシは二つ返事で首を振ったわ。

 でも因果なものね、家族皆健在なのに国を巡り争うなんて。うちの兄妹なんて生き別れてもう何年経つのかしら。

 末娘(ヘル)は今回一緒に連れて来れたけど、糞爺(オーディン)に捕まってる長男(フェンリル)にどこか遠くの海に追放された次男(ヨルムンガルド)、ふたりは元気にしてるかな。


「さて、建速も姉上が大将首にしか関心なき様子。我々は手はず通りに残軍処理と致しましょうぞ。例のアレをば」


 今回一緒に組んでるヒルちゃんがキモイくらい歯を見せてニヤリ笑う。このコス狡そうな実に悪い笑顔、アタシと似てるから好き♪

 よし始めるか。倭欧同盟の力今ここに! 刮目して見よってね!


『魔剣よ来い! 顕現しやがれ【レーヴァテイン】!!』


 我が声に呼応して、目の前の空間が血液の脈打つように赤く妖しく光り出す。

 その中より現れし、大の男の背をゆうに超える大剣が宙を舞う蝶のごとく回転し、獲物を狙う蜂のように激しく地面に突き刺さる!

 そう、これがアタシ愛用の魔剣レーヴァテイン! でも実はこれ、魔術でいろんな形状に変わるの。ちな刀身は今、大木の根のようにニョロッと触手状になって土中を掘り進んでってるよ。


『ロキ殿、まだで御座いますか? 兵がそこまで迫っております』

『無問題ロ! もう充分“汲み取った”わ。クッサイからそれだけ気をつけてね』


 “ドバアアアアアア――”


 引き抜いた瞬間、穴から女のコの潮吹きのように液体が勢いよくあふれ出た。思わず鼻と口を覆い吐き気まで催すような異臭。そう、ウンコよ!


『原理を説明してると日が暮れるから端折るけど、魔術で遠くの肥溜めや野グソと、とにかく全部探知して可能な限り吸い上げたわ』

『ククッ! そして刀身にこの水柱、いや糞柱を塗りたくり、ウン万もの軍勢も一網打尽ですな! ウンだけに!』


《何だこの臭いは!? くっ、糞か!?》

《構うなっ!! やってしまえいっ!!》


 あらら向かって来ちゃう? 後悔してからじゃ遅いのにね。まあいいわ、お望み通りアンタら全員ひとり残らずウンコまみれにしてあげちゃう!


『行くよ、魔剣変化!! 大剣(クソード)形態!!』


 再び剣に戻すのみでなく、その大きさをグングンどんどん固くギンギンビンビンに膨張させる。

 ざっと樹齢2,000年もの巨木ぐらいまでにね。そしてその切っ先にたっぷりウンコを塗りたくっちゃうの。パンにバター付けるナイフのように。


『さあ喰らいな!! “糞刃裂破衝(ふんじんれっぱしょう)”!!』


 まずは指を鳴らし、巨大な刃を思いきり横薙ぎに一閃!


《グギャアアアアアア!!》

 

『うらあ! “魔神便(マジンベン)”!!』


 そんでもって天をも裂くかの斬り上げ!


《ヒイイイィィィッッ!!》


『さあさあ汚物はもっと汚くしちゃうよ! 道を開けなァッ!!』


 敵軍前列は見事胴体が横にも縦にも泣き別れ、中列ほどまでの連中は剣先から超高圧で放たれた“ウンコの斬撃”により、全身に茶色の傷を負う。


『続きまして再変化! 長槍(ウンコルセスカ)形態!!』


 お次は槍状となった得物を統率の取れた歩兵隊みたくきれいなフォームで投げる。それはアタシの手を離れるにつれ次第に大きさを増してゆく。


『“疾翔(shit)裂駆槍(れっクソ)”! ウンチ棒で串刺しよ! キーーーンッッ!!』


 長くて太くて硬い奥様ウットリな代物が一直線推進、一気に兵らを最後列まで縦断する一突き!


《ガゴギギギイイイッ!!》


『ハイハイまだまだ! 弓矢(ゲリカーブボウ)形態!!』


 今度は巨大な弓に変身! 上空に放たれた一本の矢が無数に分裂、軍勢を丸ごと包み込む雨となり降り注ぐ! もちろんウンコ付いたまま、ね!


『仕上げはコレよ! 地雷(ベンバー)形態! はいウンコをどんどん踏んで均して、ベチョベチョグチャグチャしだいてつぶしちゃって~!!』


 兵どもの身体を貫く矢が地面に到達、それがそのまま爆弾となり瞬間巻き起こる茶色の爆発と阿鼻叫喚の嵐! 敵がどんどん倒れ超爽快、ニオイが風に乗り超不ッ快!

 もう逃げた方がいいんじゃない? 破傷風になっちゃうよ! にしてもフフ、これぞ最小限の犠牲で最大限の恐怖を与える嫌がらせの極致よね。

 戦では殺すより負傷させた方が有効。救護し後方へ下げるため多くの労力が割かれるから。そこに恐怖を煽ってやれればさらにヨシってことよ。


『生憎ですがロキ殿、もはや息のある兵はひとりもおらぬようで』

『アレレッ。あちゃ、やり過ぎちったか』

『やれやれ、雑兵とて戦終わらば国の財。これではルシファー殿よりどれだけお叱りを受けるか』

『うーんまあ大丈夫でしょ。こいつらもこんなひどい死に方したわけだしさ、きっと来世じゃ幸せになれるよ。ヨミちゃんの創る泰平の世でね!』

『はあ。ものは言いようで』


 ふう、いい汗かいた。でも臭いがヤバイし早く終わらせて一風呂浴びたいな。

 ウン万の兵もこんな簡単に壊れちゃったし、アタシでももしかしたらアマちゃんのタマいけんじゃね? ついでに仕掛けてみるか。

 というわけで次回に続くよ。高天原蹂躙戦もいよいよクライマックス、引き続きお楽しみにね♪

「ここまで大暴れしといてアレだけど、倭国の歴史にアタシの名前残るのはまずいよね」

「本来死んでいるはずのこの私もですな」

「んじゃ、というわけで!」

「ククッ、さようなわけで」


 すべてをウンコまみれにした乱暴狼藉は、後世において丸ごとタケハヤスサノヲの――タケちゃんのせいになったとさ! めでたしめでたし♪

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