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高原署に神留まり坐す  作者: 公月奏
現代パート3
35/56

「集結」

「ぬううん!!」


 おっと! 風をも斬るような剛腕ラリアットをスウェーでかわす。 


「どらぁっ!!」


 よっと! 鉄骨のごとしローキックをカンガルーのように避ける。


「フン、なかなかよい動きをしてくれる」

「ええ、普段から足腰は鍛えてますから。ひとえに“夜の運動”の賜物ですよ」

「だが、少しずつ鈍っているぞ!? スタミナはないようだな!?」


 何だと? こんな稀代の絶倫男をつかまえて聞き捨てならないな。

 言っとくが俺にとって1日30回戦ぐらいなら朝飯前だ。“24時間に57人”というギネス記録を破るのが夢なもんでな。


「ほう……! それはずいぶんと羨ましい話だ。オレのこの“体質”では、したくても相手が死ぬからな」

「あれ、もしかして経験ないんですか?」

「クク……“年齢イコール”だ。どうだ無様だろ。さあ笑え。笑ってくれよ?」

 

 うわあ――うわあ。そりゃ本当マジで哀れだ、哀れすぎる。あまりに不憫で俺まで泣きそうになるよ。SEXのない生など何の意味もないのに。(※個人の感想です)

 ――だが今はそんなことはどうでもいい。動きにキレがなくなってるのは疲れのせいじゃないからだ。


「ククク……どうだ! もはや、立っているだけでもやっとの思いだろう?」


 気温が暑い、いや“熱”すぎる! さっきからこいつの放つ異常すぎる熱気のせいで、汗が止まらず不快極まりない。

 哺乳類が耐えられる高温は約50℃だがヒトだけは例外で、乾燥していれば120℃超でも20分生存できた事例があるというが、これはそんな生やさしいモンじゃない。

 明らかにそれ以上の温度、まるで炎の中で戦ってるようだ。おそらく常人なら瞬時に焼け死ぬだろう。

 俺だから何とか耐えられてるが、逆に言や近くにいるだけで我が体内の“変若水”が急速に減っていくということだ。

 お得意の“奥の手”もおそらく用をなさないに違いない。かと言って、距離を取って銃を用いたとして、


「ククッ! 蚊が刺す程度にもならんな」


 思った通りものの見事に鉛玉までも効かず、むしろ撃ち込んだところから何やらドロッとしたモノが流れ出ている。

 周囲の気温がこれほど高まってるのだから、きっとやつの体温はそれ以上なんだな。皮膚一枚のところでドロドロに溶けちまうから銃弾など通用しないってことか。


「クククククッ……さあ、どうするのだ」

「アハハハ。さあ、どうしましょうかね」

「ではそろそろ……終わりにしてやろう」


 瞬時、巨体に不相応なる地を削るほどの踏み込みがくり出される。チッ、あなたこそ見事なるストロークなことで。

 距離を一気に詰めてくるのを避けきれず、利き腕をがっしりとつかまれる。


「終わりだ!! 塵も……残さんッ!!」

「クッ……!!」


 間に合うか!? 俺はなけなしの力で【氷の刃】を作り自由の利かない右腕を――自ら切り落とした!


「ぐあああ!!」

「ヌッ……!!」


 血が噴き出すより早く、握られた腕がまばゆく同じ色に発光し刹那にして骨となり、やがてそれも夜風に消えてゆく。

 もう少し遅かったらアレを全身に喰らってたし、そうなれば当然“復活”などできない。あぶなかった。


「フン……死ぬまでの時間が延びただけにすぎん! もはやお前に打つ手など、ただのひとつもない!」


 そうだな。困った、ちょっと勝てない。万全な状態ならいざ知らず、今の俺じゃどうしようもなさそうだ。でも、だったら俺が戦わなければいい。至極簡単な話だ。


 “――ぉぉぉぉぉぉオオオオオオ!!”


「ムッ……? 何だ」

「選手交代、ですよ」


 俺の視線の先から聞こえてくる、大気を裂き地を震わすほどの雄叫び。それは炎上する車からもぎ取ったドアを持ち上げつつ、流星のごとくこちらへと大跳躍する。


「オラァッ!!」

「グボォッ!?」


 着地と同時に脳天へぶち当てつつ横薙ぎの一撃。派手に吹き飛んだヒノに、さらにそれを投げつける。


「ウガァッ!!」


 颯爽と現れたそいつは、愛用のクッサイ臭っさいガラムを片手に俺に言う。


「奴さんのお陰さんでマッチが殆ど焼けちまった。もう少し弱い火あるかい」

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