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高原署に神留まり坐す  作者: 公月奏
現代パート2
30/56

「結実」

 有史以前の時代には、現在の常識や科学など到底及ばない力を持つ存在がこの世界を支配しており、古の人類はそれを“神”や“悪魔”などと呼んで信仰の対象としてきた。

 そんな“力”を現代にまで受け継いだ連中で構成されしオ〇ムも真っ青、日本国籍を有しながらこの国の転覆を企てる最狂最凶のテロ組織【穢レ】。

 その一員にして今回私たちを堂々と襲撃してきた刺客、そいつはこの私が永年追ってきた宿敵の“ヒルコ”だった。

 そして、こいつの前に絶体絶命だった私の前に他ならぬヨミさんが駆けつける。


「ツキヨ……君がここにいるということは、()()のやつは」

「聞くまでもないだろ。まあなかなか楽しめたよ、こっちも何回か逝かされたし」

「え!? しっ、()()のですかあの子と!? マジで!?」

「え!? いや、そんなガチで驚くなよ。物の例えだって」

「ああ、何だ紛らわしいな。君のことだからてっきり……」

「オイまさかお前まで俺を親父と一緒にするのか。殺すぞ」

「おお怖い怖い、仮にも官憲の職にある者がそんな言葉を使っていいのですか?」

「何の問題もないさ。警察ってのは殺しのプロでもあるんだぜ。知らなかった?」


 ハァそれはアンタだけだよ。今の時代本当うるさいしすぐネットに拡散されンだから、一般に対して不適切極まりない発言は控えてほしいよなァ。

 でもその軽口が今はありがたい。適度に紅の激情が抜け、代わりに蒼き闘志がこの身に満ちる。


「さあ、まだやれるか? とっとと片づけるぜ」


 そう、重傷のはずなのに不思議と痛みが治まってくる。この人が来た、これで勝ちという安心感によって。拳を鳴らし再びヒルコをにらみ据える。


「えっ、いや待って下さいよ。2対1ですか??」

「当たり前じゃん。ふたりがかりで市民をいじめンのが仕事だからね警察(わたしたち)って。知らなかった?」

「善良なる一般市民の方々に誤解を与える言い方は慎みましょうね。小夜子さん」


 地面に転がったポールを再び拾う、握りしめる手にも再び力が湧いてくる。これで貴様も終わりだヒルコ、さあ第3ラウンドよ!


「ぐげはわあっ!!」


 ビリヤードでブレイクエースを狙う心持ちで突進、野郎の喉を一直線に突く!!


「おっと! 俺の分もとっとけよな!」


 その身体が吹き飛ぶより早く、ヨミさんが飛び蹴りをやつの顔面に炸裂させ、鉛玉を喉奥へと何発もブチまける!


「ぐぼ!! ――なあんてね。ククッ」


 けどこの野郎は並大抵の攻撃じゃ殺せない、それに変わりはない。ヒルコはヨミさんの足首をつかみ受け止めると、子供の粘土工作のように握りつぶし――ねじ切った!


「グア、アアッ!!」

「ハッハッハッ!! そして喰らいなさい、これは撃ってくれたお返しですよ!」


 ヒルコが鼻を指で押さえると、片穴より丸いモノが素早く放たれる。私にした時と同じ、今撃ち込まれた弾丸だ。


「グハウッ――!!」


 片足を失ったヨミさんは弾を回避できず、額を貫かれて地面にどさっと倒れ――


「ツキヨ、しばらく会わない間に間抜けになりましたね。警察官なぞに化けのほほんと暮らしてたせいですかねェ」

「ククッ、お前こそな。昔はもっと賢くて慎重だったのに」

「――うわあ!?」


 そして呑気に近づいてきた野郎に、寝転んだままの姿勢でともえ投げをかけた。完全に不意を突かれ勝ち誇った表情はどこへやら、間抜けな叫びをあげ吹っ飛んでゆく。

 そう。“不死身の肉体”。これがヨミさんの身に宿る霊薬の力。撃たれても何のその、瞬時に傷が癒え即座に復活する。久々に見たけどやっぱ最高にインチキじみてンな。


「小夜子、そこの俺の足を投げてくれ」

「はいよ。CAがFクラスの客に酒とキャビアをサービスするように、だったっけ」


 言った通りにヨミさんが断面同士を合わせるとピタリ完全に元通り、相変わらず何でもアリだ。

 そして今度は彼がうつ伏せのやつの方へ近づき、両の足首をつかみ返すとその爪先から足首にかけて、蒼白い冷気を疾走させる。


「こっ、これは!?」

「懐かしいだろ。義父さん直伝の【氷の力】さ」

「クッ、そしてその治癒力――“変若水”ですか! まさか完成させていたとは!」


 あっという間の形勢逆転、そして不敵な笑みからの勝利宣言。やがて氷塊と化した足首に徐々にひびが入り、粉々にブチ割れる!


「うおおおおおお!! ぐああああああッ!!」

「目には目を歯には歯を、足には足を。恨みは倍ならぬ乗返し、俺たちの合言葉だろ。忘れた?」


 さらに野郎の長髪を持ち上げ回転、私の方へ放り投げる!


「行け小夜子、美味しいトコはくれてやるぞ!」

「オーケー! この瞬間を永年待ったわッ!!」


 風を斬り、猛スピードで飛来する仇敵の顔面へ向け“霞の構え”の姿勢で得物を握るこの手に、全身に力を込める。

 そうして私はその脳天、額のド真ん中をしっかりと先端で正確に受け止めた!!


「グハッ……ァァッ」


 ポールは見事その頭を貫いた。そこから先は記憶が曖昧だが――やつの身体ごと近くの電信柱に突き刺し磔としたのは覚えてる。

 そのあとはなぜか急に目の前が見えなくなった。水滴の付いたレンズみたいな視界だ。おかしいな――雨なンか降ってないのに。


「“針串刺しの刑”だぜ。それじゃあな、ヒルコ」

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