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高原署に神留まり坐す  作者: 公月奏
現代パート2
18/56

「逃走」

 さて騒ぎになる前に出るか、と大月の亡骸に背を向けフロントに電話をする。もちろん鼻をつまんで。


「はぁい♪ お客サマのお上がりでぇす♡」


 まあ俺が来たことなどすぐばれるが高原署による超法規的捜査扱いとなるだけだ。同業連中もここのケツモチも黙ってる他ない。

 だが迂闊だったな。先日の大月のガサ入れで、本来の所轄署に身柄を引き渡したあとの処理や確認をすっかり怠ってしまってた。

 そう、確かに留置されたはずなのになぜこんなところにいたのか。脱獄したなど何かトラブった類の話は一切聞いていないのに。

 つまり八俣らかはわからんが警察内に“膿”があるのは間違いない。何にせよとんだ失態だ、これではまた次の給与査定に響くな。

 クレカの引き落としと夜の店のツケを差っ引いたら再び当面、精米所の余り米のダクト飯しか口にできなくなってしまうぞ畜生。


「さらにはより厄介な“これ”のオマケ付き、ときたモンだしな」


 そして本題はこれだ。昨日まで普通の人間だった者が外見、身体能力はおろか精神性まで変わってしまう狂人化現象――“穢レ”。

 八俣はおそらくその“素養”のある者を大勢集め俺たちにぶつける気だろう。兎角このままでは危険だし、早めに皆と合流せねば。


「お客様、ちょっと」


 だがドアを開け廊下に出ると、目の前に黒服が3人も立っていて思わず驚いた。もうお上がりで? とすかさず声をかけられる。


「いやあ恥ずかしながら僕、早漏なもので候、ってなモンでね」

「それでもまだ30分ですよ。2時間もご予約頂いてましたのに」

「僕、クールないい男を目指してるんだ。ほら、ただ話だけして帰るのが上客の証だっていうからねぇ」

「したのかしてねぇのか、どっちなんだ! それに何だあの電話は!? うちの嬢に何かしたのか!?」


 ですよねー。これ以上誤魔化しようがないので部屋の奥を指すと、内ひとりが慌てて様子を見に行く。


「オイ血ィ出てんぞ! まさか死んで!?」

「生理中って言ってたよ。超重いんだって」

「テメェいつまでもふざけてんじゃねえ!」


 俺の隣にいるやつが懐に手を入れる。それをしかと見逃さず、


「おっ、ありがとう。これで正当防衛だな」


 さっきくすねといた剃刀で、そこを一閃!


「うぎっ――っ!?」


 さらに返す刃でそのまま頸動脈を――なんてのはさすがにやり過ぎなので手刀に留め、気を失わせる。


「ぐわぎゃっっ!!」


 さらにすぐ近くのふたり目の、慌てふためく間もなく頭を壁に叩きつけて倒す。そして室内に残った最後の男へ銃を向け告げる。


「警察庁か宮内庁へ連絡して読山がやった、と言え。一切の他言無用と生活が当分監視されるのを条件に結構な謝礼が支払われる」

「なっ、なんだと!」

「口外すれば最悪君は隔離施設に一生収容されるぞ。社会的な抹殺と金ですべて忘れる、どっちがいい」

「うっ、うるせえ! てめえを見逃したらオヤジのさらに上、スゲェ偉い連中に消されちまうんだ! ――おめえら出てこい!!」


 男が怒鳴ると廊下のドアが次々に開き、待機中だったと思われる女の子らが続々と現れた。手にはそれぞれ刃物を光らせている。


「こいつを殺せば、1億円ももらえる――」

「こっ、怖いけど。おっ、お金のためなら」


 ある子は虚ろな目をしながら、またある子は脂汗まみれで手元を震わせつつじわじわと近づいてくる。

 くっ、店の子たちまで抱き込んでるとはな。ちな抱き込むといってもヤラシイ意味じゃないぞ、たとえこういう所だとしてもな。

 ともあれここのバックも八俣だったのか。ちなバックといってもイカガワシイ意味じゃないぞ、いくらこういう店だとしてもな。


「チッ……とにかく浮かれてて下調べが全然足りてなかったな」


 こんなこと強要した連中を放置するのは許せない。だが普通の女性に手を上げるなど間違ってもできないし、今は逃げるのみだ。

 廊下のつきあたり、非常ドアを銃でこじ開け階段の手すりから飛び降りそのまま温泉街をあとにする。

 八俣め……今にこの貸しは何倍、いや何乗にもして返してもらうぞ。払い損のウン万円分も含めてな!

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