密室の最強ラッパーと最弱ラッパー
今までの経緯を思い出したマケル、なぜさらわれた挙げ句バトルまでして2人ペアになったのか。
そもそもマケルよ!そこはどこなんだ!と言う疑問はないのか!?
韻韻がスーコに敵意をむき出した所で、マケルはこの場をとにかく終息したいが一心で
「責任持ちます、その人の!だから殺したりしないで、オレが責任持ちます!」
と口走った。それを聞いた韻韻は
「だとさスーコ、責任は自分で取るものだと中国では教わったが、ここじゃくそ弱いMCの男が会ったことも無い女の未来の責任を取るのか、いいじゃないか日本人的で、スーコはこのヘタレMCがお似合いあるよ。あ、そだ、最後まで残ったらお楽しみのご褒美がもらえるあるよ、せいぜい生き残るよろしな」
韻韻は、他の部下に中国語で指示したかと思うと、その場の空気が一変しテキパキと何かの準備を始めた、マケルの横にガラガラと台の上に何かを乗せて移動して来るのが分かったが、隣で止まった直後肩にズキッと痛みが走り、それ以降の記憶がきれいさっぱり無く、目が覚めた時にはスーコが隣で眠っていた、と言う事になる。
マケルはその事実を思い出すと共に辺りを見回して、窓一つ無い全く見に覚えの無い部屋である事にも気付き、電子ロックの様な物が付いた扉を足でコンと蹴った。
「おい、なんだよここ、やけに厳重だし…そう言えば爆弾、首に仕込まれたんだよな」
スーコも首をすりすりと撫でながら
「最近は傷痕とか残んねーのな、全然痛くないし」
とまるで他人事の様に言いながら、その辺に脱ぎ散らかした服を着て行く、マケルもそこかしこに散乱している自分の制服を拾い集めて服を着ながら「やだ、こんなに脱ぎ散らかして、本当に何も無かったのかな」と思ったが、実際は服を脱がされ、精密検査をされた後にこの部屋に収監されたのだが…。
スーコはいそいそと恥ずかしげに服を着るマケルを見て、再度ニヤニヤとしながらいった
「なかなかよかったぜ」
マケルは心底驚きながら心の中で叫んだ「やだー!何がよかったんだよー!俺の初体験は忘却のかなたかよー」。
そしてそれを目一杯表情に出していた。また、それを見たスーコはケラケラと笑いながら言った。
「マケルは面白ぇなー!MCバトルだよバトル。見てたんだよ、学園の体育館裏で時々タイマンバトルしてただろ?アレなかなかよかったぜ」
マケルは「そんな恥ずかしい所なんで見てるんだよ~」と言う気持ちと「俺はまだ童貞を死守してる!良かった」と言う気持ちが入り交じり、またもや見たことの無い表情をしていたらしく、スーコに「それどんな感情?」と顔を覗き込まれ赤面しながら服を着た。
「あの、遅れたけど俺はマケル、知っての通り学園最弱MCだ、なんかわりー、俺なんかと組まされちまって」
マケルは何となく申し訳無くなり、ペアを組まされた理由や、何でマケルとスーコなのか?と言う理由をすっとばして謝ってしまった。それを聞いたスーコは、服を着ながらチラリとマケルを見て
「気にすんなよ、アタシより弱いMCはどれも一緒だよ、さっき韻韻も言ってただろ?下手に自分が強いなんて思ってる中途半端なヤツより、自分の力を知ってるマケルでよかったよ、最弱なら下はいねぇ、上がるだけだ、考え方によりゃ最高じゃん」
と言った、マケルは今まで勝てない事しか考えていなかったが、勝つイメージを持ってい無かった、そしてスーコは更に続けた
「目は前にしかついてねぇ、前に進んでる時に後ろを向いちまったら何かにつまづく、歩いている時は前を見ろ!って親に言われただろ?」
マケルは何だかごもっともと思いながら言った
「そうだな、スーコ…あんたが本物かどうか知らないけど、俺はあんたを信じるよ。って言うか、ここはどこだよ!」