セントエイティエンヌ孤児院にて
スーコが3歳から育ったセントエイティエンヌ孤児院。
マケルはセントエイティエンヌ孤児院について行き、そこに住む子供達と出会う。
「おい、テメーら出す物出してさっさと出て行け」
マケルは「え?どうしちゃったの?おじさん」と言いそうになったが、スーコがグッと股間に手を押し込んで来たので声が出なかった。
スーコは
「やだなぁ、出す物ってコレかな?」
と上目使いで警備員のおじさんを見ながら、マケルの生徒手帳と手形には10万円程の札束が挟まれている。
「チッ、いつもいつも適当な額しか置いていかねえなお前は、で?横に座ってる押韻のヤツは何だ、お前の飼い犬か?あ?」
と言い、いつもとは180度違うダーティーマウスでマケルの方をチラッと見た後、いやらしい目付きでやにやしながらスーコを舐める様に見た。スーコは
「そうだねー、まあそんな所かな、あれだよ!従兄弟?血のつながってない?」
「血のつながってねー従兄弟って何だ馬鹿野郎。まあ出す物も出したし大目に見るが制服は着替えさせろよ?外で見つかったら俺の首どころか手足まで飛んじまうぜ」
と警備のおじさんはいつもと全然違う態度で接して来た、拳銃に警棒で武装しているなんて、今まで全く知る由もなかった。
おじさんが警備室にもどると間もなく、橋と本土を仕切る分厚い鉄板で出来た中世の城にある門の様な仕掛けになっている道路が、ギリギリと音を立てて下がり、橋と本土に向かう高速道路が繋がった。
「次に来る時にそいつが制服を着ていたら撃ち殺して立会海峡に捨てるぞ?分ったな」
と恐ろしい暴言を吐き、警備員のおじさんは警棒で「さっさと行け」と言う仕草をした。
スーコは聞こえない位の声て「うるせえ助平じじいが」と言い車のアクセルを踏んだ。
マケルは
「なんで変な嘘つくんだよ、ちゃんと手形持ってたじゃんか」
と言うと、スーコは逆に呆れた様な顔をして
「バカか、本物の手形な訳ねーだろ。だから金渡したんだよ!あそこのオッサンは金を渡せば手書きの手形でも通れんだよ、っんとに学園の奴等は島の事全然分かってねえな」
と言いマケルのおでこを人差し指てピタンッとはねた。
車は順調に進み、程なく新江戸川区にあるセントエイティエンヌ孤児院に到着した。
セントエイティエンヌ孤児院は大分前に建てられた古い教会に隣接しており、古い門柱も外壁は何度も補修された跡があるが、キレイに色も塗り直され、開かれた窓からはレースのカーテンがヒラヒラと表に靡いていた。スーコは
「アタシんちだよ、最近じゃ1ヶ月の内に何日かしかいないけど…ママ…あ、寮母さんね、ママを紹介するよ」
マケルは言われるがまま車から降り、孤児院の門をくぐった。玄関もかなりの年代物もので彫り細工が施された磨りガラスの小窓がついている。
「ママ!ただいま!」
スーコは大きな声で帰った事を伝えた。すると廊下の奥からドタドタと数人が走って来る音が聞こえたかと思うと、襟が伸びたサイズが明らかに大きいTシャツを着た小学校低学年位の子供と、まだ保育園か幼稚園に通っていそうな子供達が
「おかえりなさーいっ!おねーちゃん!」
と口々に叫びながらスーコに飛び付いて来た。スーコはケラケラと笑いながら一人一人に「良い子にしてたか?」「お前はちゃんと宿題やってるんだろうな」等と声をかけ、その子供達が描いたとおぼしき、廊下に貼り出されている何枚もの修道女の様な絵を見ながら
「皆絵がうまいな!」
と言った。すると小学校高学年位の女の子が後ろから走って来て
「あの端っこのは私の絵、今度はスー姉の顔描いたあげる、あとね、スー姉はいつも同じ服ばっかりだから可愛い服着せたヤツ描いてあげる!」
と言った。スーコはそれを聞いて
「マジ?!嬉しいな!ナミは大人になったらデザイナーになるんだもんなー、めっちゃ可愛い服にしてよ」
と言った。ナミと呼ばれた少女は嬉しそうにニッコリと微笑んだが、その後少し暗い顔をして
「 ママの足の具合が良くないの、手術しないと治らないって…」
と心配そうな声で説明している最中に、杖をついた修道女の老婆がやっとの思いで玄関先に現れ優しい笑みを浮かべ
「ナミ、私は大丈夫よ、お医者様にも通っているんだし、こうしてスーコも帰ってくれた、これも神様の思し召し。スーコ、今日は怪我してない?」
と寮母はスーコの心配をした
「ママ、ただいまアタシは大丈夫、ママこそ足は本当に大丈夫なの?手術はいつ?」
と不安マックスの形相でスーコは寮母に近付いた、寮母は優しく笑いながら
「手術するかどうかはまだ決めて無いのよ、私がいなくなっちゃこの子達の世話を誰がするんだい」
と言った所で、二階に上がる階段の踊り場から少年の声がした




