入島手形
一路セントエイティエンヌ孤児院に向かうため、スーコとマケルは検問に立ち寄った。
しかし、そこには普段マケルが学園のシャトルバスで見かける優しい警備員のおじさんでは無く、警棒と拳銃で威嚇してくるいつもとは雰囲気は異なるが、同じ「警備員のおじさん」が待ち構えていた。
「スーコ、それはバトルで勝った賞金じゃないとダメなのか?」
とマケルが聞いた、スーコは「アタシは頭が悪いからラップしか知らないしね」と答え、再び黙ってしまった。
マケルは小さな声で「頭が悪くてラップが出来るかよ」とつぶやき、薄暗く渦巻く立会海峡を眺めた。
すると前方に検問が見えて来た、押韻学園のシャトルバスであれば先に生徒手帳を提出して検問の前にチェックされているから、マケルは個人的にこの検問に来たのは初めてで何だか緊張していた。
スーコは上着の内ポケットから入島手形を出した、それを見てマケルは
「え!スーコそんなの持ってんだ、すげーな」
と言ったが、スーコはキッとマケルの方を見ながら「黙ってろ」と言った、マケルは何で怒られたのか分らないまま黙っていた。
押韻学園生の生徒手帳は入島手形として使用出来る、制服のポケットから学制証を取り出すと、スーコはピッとその学生証を取り上げ、自分の手形と重ねた。
「マケル、今から私の言う事を絶対に忘れるなよ?アンタは今からアタシの従兄弟で、アタシは21歳。分ったな?」
マケルは頭を縦でも無く横でも無い方向にひねり、その話しを聞いていた。
みるみる内に検問所が近付いて来る、いつも優しい警備のおじさんが控え室にいるので、マケルは笑顔でそのおじさんが出て来るのを待った。
すると、いつも優しいおじさんが、警棒を握り眉間にシワを寄せ鬼の形相でこちらを威嚇しながら近付いて来る、何ならいつもはぶら下げていない拳銃まで…。




