戦って来れた理由
スーコがMCバトルをして来た理由、バトルを続けられた理由。
どうしても勝たねばならなかった理由。
強く生きなければいけない訳があったのだ。
「あーあ、大変だった、また分かりづれー場所にトイレがあるんだな」
とスーコが現れた、加山は胸を撫で下ろして言った
「お前、その身体でどこかに姿をくらませたのかと思ったじゃないか!」
と言ってベッドに座らせた、スーコはなぜか少しふてくされながら
「なんだよテメー、こんなご時世未成年略取とかすげーかっこわりー罪に問われっぞ!」
加山はお構いなしに言った
「お前は昨日の事は覚えているな、どの辺まで覚えていてどの辺から記憶が無い?」
「あ?押韻学園のヤンキーMCから親の車をぶんどった後、雨が降りだして…そこから、ここに運び込まれて…」
「では私の話は聞いていたな?」
「聞いてねーよ!きたねえオッサンに連れ去られる所までは…」
加山は強めに言った
「覚えているんだな?!私の話を聞いていただろ!?」
スーコは口をとがらせ小声で言った
「……ああ、聞いてた。アタシの頭の中になんかできてんの」
「そうだ、私は患者に病症は隠さないし、立ち直るのも患者だ。その手伝いをするのに嘘は言えん。お前を放置すれば3ヶ月の余命、私が延命しても持って半年、早急に都内の大きな病院に行くんだ」
「それで治んのかよ!MCバトルには出れんのかよ!」
とスーコは言い返した。加山は島に住んでもう数年になる、島民全員がMCバトルに取りつかれている事も知っていたが、この時ばかりは驚いた
「いい加減にしろ!死ぬまでフリースタイルバトルをするつもりか!仮にも脳をいじるんだ!ラップどころか、リハビリをして話せる様になる事が先だ!」
加山は嘘は言わないと言ったが、大病院に行って例え手術に成功したとしてもしゃべる事はおろか、一生生命維持装置を付けて夢の中で生き続けるか…失敗すれば死ぬ事は確定していた、しかしそれを言う事が出来なかった。
スーコは噛みつく様に吠えた。
「ああ、死ぬまでやる!やってやるよっ!オッサンに分かるか?孤児として育って、自分の育った孤児院が無くなりそうになる瞬間、妹や弟が…あんなに小さな子供達が…あんな不安な顔をする子供達が……いちゃいけないんだ!子供はバカみたいに毎日笑いながら暮らさなきゃダメなんだよっ!」
スーコは涙を飲み込もうとしたが、もう瞳から溢れ出て止まらなかった、スーコは涙を袖で振り落としながら言った
「アタシが!…アタシがバトルに勝てば……賞金であの子達が大学に行ける!親がいなくても学がありゃ誰にもバカにされねぇ!!頭の良い奴にバカにされるのはアタシだけで良いんだ!でもアタシにはラップがある、MCバトルで…バトルでしこたま稼いでアタシの家族には不自由させねえ…そう決めたんだ…だから……だからアタシからラップを取り上げ無いでくれ、本当のママも、U次もヒデも…他の物は全部神様にあげたじゃねーか…だからラップだけはアタシにのこしてよ…」
その言葉は、加山に言ったのでは無く神に向けてのメッセージだった。スーコは言い終わると、まるで子供の様に大声で泣いた。
加山もスーコの話を聞き目を潤ませながら、肩にそっと手をやった。
残された人生が半年なのかそれ以上なのか、それすら叶わないのかは分からないが、こんな年端も行かぬ娘に背負わせるには酷すぎる道を歩んで来た事は分かる、そしてそれだけの覚悟で背負って来た事も。
加山は言った。
「1つだけ約束してくれ、月に一度…いや、具合が悪い時はいつでもここに来て欲しい、困った事があったら言ってくれ、一時しのぎだが吐き気や痛みを押さえる注射は打ってやる」
スーコはスンスンと鼻を鳴らしながらコクリと頷いた。




