セントエイティエンヌ孤児院出身
ヒデ失踪後の凄惨な日々。しかしバトルMCとして強靭なMC力を手入れれ、様々な闇バトルで名をはせている…しかし、再びスーコと出会うも過去のヒデとは全くの別人になっていた。
その話を聞いていたのかいないのか、しゃがみこんでいたヒデがゆっくりと上昇する業務用エレベーターの金網を、自分の手錠を擦り付け、カラカラと鳴らしながら言った。
「そうだ、俺とスーコはセントエイティエンヌ孤児院って所で育った、あと仲間のU次もだ、U次は死んじまったが俺はこうして生きてる、ハッハッハ!死ぬも生きるも運だぜ!首に爆弾埋め込まれても生き残るヤツは生き残る、そう言うもんなんだよ!」
マケルは「やだ怖い、すごい中二っぽい」と思ったが、スーコはうつ向いてしまい、一言一言漏らすように呟いた。
「ヒデ、代打ちバトルでU次は殺されたってマジかよ…」
ヒデは汚れがこびりついた人差し指で十字を切りながら
「ああ、神に誓って嘘は言わねえ、代打ちでU次はぶっ殺されたよ、ヘッヘッヘッ」
スーコは今にも零れそうな涙を押さえながら
「ヒデが生きてるなら、U次だって生きてて良いじゃんか…」
ヒデはそれを聞きながら、ぼやりとしていたが
「元彼が生きてたってのにそりゃねーぜ、まあ代打ちバトルに出され続けたおかげで今の俺は闇MCバトルじゃ負けなしだ……クスクスクスクス」
と言った。スーコは涙ぐみながら「ヒデが強くなるのと代打ちに負けたのに何の関係があるんだ」と聞いたが、ヒデはニヤニヤするのみでいっこうに返答しない。場の空気が重くなり、皆が押し黙った頃、再度ヒデが口を開いた。
「俺とU次はスーコと一緒に野良バトルによく出てたもんだ、あんときゃスーコも14で俺も15だったな、そん時にスーコはまだ『にこにこビーフ!!』でしかラップを見たことが無かったが、俺とU次が色々なラップを聴かせて韻の踏み方も教えた」
トメ子は「にこにこビーフ!!」と言うタイトルをヒデの口から聞きビクッと反応したが、マケルは話が見えず聞きかえした
「U次って誰だ、代打ちってなんだよ。なぜ死んじゃったんだよ」
ヒデはチラッとマケルを見てしゃがみこんだまま答えた。
「U次は俺と同い年で同じ孤児院育ちの兄弟みたいなヤツだ。マケルとか言ったな、お前代打ちバトル知らねぇのか……スネークとか言うギャングのあんちゃん、あとグリッターとか言うそこの二枚目も会場で見たことがあるぜ、代打ちバトルの事説明してやれや」
するとグリッターが息を飲んでから説明を始めた
「代打ちってのはヤクザのシマや落とし前をかけて、ヤクザの組どおしがバトルMCを立ててバトルをさせる、言わば代理戦争…究極の闇バトルだ…」
クックックと笑いながらヒデは言った
「それに俺とU次が出場してぼろ負けしたのさ、まあ俺は大分頑張ったがな。でだ、目も当てられねえ負け方をしたU次はコンクリ詰めにされ立会海峡に投げ込まれたが、俺はリリックがバンバン出てくる魔法のお薬の実験台になったって訳よ、ッヘッヘッ」
マケルはそんな酷いバトルはバトルなんかじゃない!と思ったが、スネークもグリッターもそれに参加していたのだろうか。グリッターは言いにくそうに続けた
「俺は、北地区のノースサイドクリックと言う……ギャングの頭をしている、ギャングとは言え、やはりヤクザに上納しなければこの島じゃやって行けない。ヤクザが代打ちバトルを打つ時は召集がかかる、そうなれば俺たちもいつ代打ちに出されるかわからん。
ヒデの飼い主のヤクザは好んで因縁をつけてヒデをけしかける厄介な親だ、しかもこの一年薬浸けで負け知らずなのに、ヤクザに飼われているから決して表に出ない、今ヤツがしている首輪を見ろ」
とグリッターはヒデの首を顎で示した。犬の首輪の様だが内側に短いトゲが付いている。すなわち首にトゲが刺さっている状態だ。爆弾はそれを避けて上手く仕込まれたのだろう。
「その首輪でヤツは呼吸を制御している、放たれれば常人なら過呼吸で心不全を起こしてしまう程の酸素を吸入し、急激に脳に酸素を送る。だから今はぼんやりしている様に見えるが首輪を外せば…膨大な量のリリックが腐りかけた脳から放出される」
グリッターがそう言い終わるとヒデが食いぎみで続けた
「俺の飼い主様が言ったんだよ『飼い主以外でお前の首輪を外すヤツがいたら、それはお前が死ぬときでもあり、外したヤツも死ぬときだ』っな、まあお前らごとき首輪を外さなくても充分勝てるがな、フッヘッヘ」
ヒデが変な笑いかたをした。




