1-8 この人
この人、背が高いな、と思ってコールズさんを横目で見上げてから、あ、私が小さいのか、と思い直した。目の前にいる女の人は、私よりも背が高い。コールズさんよりは小柄だけれど。
「転生者組合第三支部支部長、エレノア・トーチライトです。まずは、ようこそ、剣と魔法の世界へ」
剣と魔法。あ、自己紹介を私もせねば。
「ヨリコです。名字はまだないです」
「ええ。これから選んでもらいますから。でもその前に、この世界での転生者という立場について、説明させてください」
どうぞ、とソファーを勧められたので、座った。私の向かいにトーチライトさんが、そしてその隣のソファーにコールズさんが座った。
「転生者については俺の方から説明しよう。先ほど名乗ったが、もう一度な。シバ・コールズ、転生者組合第三支部の副支部長をしている」
肩書きは初出です。
やっぱり、偉い人だったんですね。
「偉い……まぁ、肩書きだけだよ」
「謙遜しなくていいわよ、コールズくん」
トーチライトさんはコールズさんをくん付けできるパワーバランス。
「で、だ。転生者は二十一世紀初頭の地球から転生してきたと考えられている存在なわけだが、もう一つあってな」
うぃ。
「元々いた地域が日本にほぼ、限定されている。もっとはっきり言うと、日本人しかいない」
うぃ?
「例外はないんですか?」
「今のところな」
ふむ。
まぁ、私も日本人だし。そういう自覚はしっかり、残ってる。
「目が覚める前の何者かとのやり取りは、どの程度、記憶にある?」
「えー。あー、なんか、特別な力をどうこう、みたいなやつですか」
「そうだ。転生者は必ず、そのやり取りを記憶している。お前もまた、その例外にはならなかったわけだ」
「コールズさんもですか?」
「あぁ。もう、昔の話だけどな」
ふむ。
「転生者が持つ特別な力のことを、固有技能と呼んでいる。これに関連して、お前に答えてもらわなければならないことがある」
コールズさんが少し、間を置いた。トーチライトさんからは、ものすごく見られてる。
「お前の固有技能について、話せ」
そうくるわけですか。