1-6 ほーほー、へー、ほへー
ほーほー、へー、ほへー。
はー、こんな風になってるんですね。
ふむふむ、ほーほー。
パンツを穿き、ジャストサイズのお見立てだったジャブラジャーラをそれらしく装備してから、服をどうにか着終えるまで、少し、時間がかかってしまった。カップラーメン、五個分ぐらいだろうか。
ふと、部屋の明るさが気になって辺りを見回してみたら、窓があった。透明度の低いガラスがはめ込まれている格子窓で、上に持ち上げて開けるタイプだ。
最初にいた部屋にも、同じものがあったのだろう。この世界で初めて目を開いた時に感じた明るさは、窓から差す陽射しだった、ということか。
こんなことにも意識が向かないなんて、やっぱりまだ、本調子ではないのかも知れない。
「着替え終わりました」
そう呼びかけてからドアを開くと、入口ぎりぎりのところにスプリングフィールドさんが立っていた。
目線が私の胸元から動かない。
「うちの暴れん坊が、何か」
ジャブラジャーラの力で、より悪目立ちしている胸に一番引いているのは、正直なところ私自身だと思う。女の下着の補正力は、半端ではない、ということを、装備中の試行錯誤で思い知った。
「いえ。さすがに大変そうだな、と」
ですよね。
「楽になりましたけどね。先ほどまでのフリーダムな状態よりは」
「そうですか」
言葉が互いに尽きてしまった。しばらくお見合いをしたあと、あ、思い出しました、という顔をして、スプリングフィールドさんがハサミをエプロンから取り出した。
「ハサミをお持ちしました」
あ、どうもでーす。
「お借りします」
「え?」
テーブルに敷くもの……転生者の衣でいいか。この上に切った髪を落とせばいいかな。
「てい」
眉毛よりざっくり上あたりで真横にばっさりじょきじょきと。目が完全に隠れてなお余るぐらい長かったから、これで視界が良好になった。腰まで届いている前髪以外の部分は、あとで考えよう。
「そこのごみ箱は使ってもいいんでしょうか」
ハサミをテーブルの上に置き、転生者の衣を丸めながら、タンス的なものの右隣にあるごみ箱に近づく私を、
「ちょっと待ってください。色々、少し、落ち着いて」
そう言って私をとどめてこちらをじっと見たあと。
「……ふ、んぐ」
笑いやがった。




