1-52 美
「美容院のこと?」
あー、やっぱりあるんですね、美容院。
「でも、女の人向けですよね?」
美容院って。
「あなた、女の子でしょう」
おぅ、そうでした。
「その髪の長さだと、早い方がいいわよね」
そっすね。さすがにこの長さはちょっと。
「この世界のことを学んでもらう一環として、身だしなみについてのお話をする機会があるんだけど、その時に希望者は、美容師さんに髪を切って頂いたりもできます」
ほーむ。
「前髪、私、やらかしてるんですけど、大丈夫ですかね? かなり短めに切り揃えてしまったんですが」
笑われるのは別に、何ともないんですけど、美容師さんが私の悪ふざけでお困りになられるのは、なんとなく申し訳ないというか。
「自覚、あるのね。悪ふざけ」
「あー、えー、あー、うへへ」
トーチライトさんが溜息をついたあと、笑った。
「大丈夫よ。転生者は少し、個性的な人が多いというのが、先住者全般の認識だから」
ぬーん。
「それは、かつてのコールズさんも、ですか」
「ノーコメント。コールズくんの名誉のためにもね」
それ、アレだったって言ってるようなもんですよ?
「とにかくノーコメント。どうするの? 美容師さん、お願いする?」
そうですねぇ……。
手持ちのお金は、とりあえず、今月支給分の銀貨六枚か。髪を切ってもらうの、おいくらなのだろか。
「先に言っておくけど、お金の心配はしなくてもいいですからね」
「……口に出てました?」
「出てました」
うーむ。まぁ、では、せっかくですし。
「お願い致しますです」
「分かりました」
馬車道から脇道に入り、話しながら歩くうちに、私たちは転生者組合第三支部に辿り着いていた。
なんか、疲れた。




