1-5 パンツ以外
パンツ以外も、どうにかしなければならない。
「我々、身長があまり変わりませんよね」
「そうですね」
「服のサイズ、教えて頂けませんか」
「いいでしょう。下着と、私のサイズに合わせた服をご用意します。少しお待ちください」
日本で言うところのタンス的なものから、靴下、パンツ、ジャブラジャーラを取り出して壁際にあるテーブルに並べ、ハンガーから服を取り外して同じようにテーブルに並べ置くまでにスプリングフィールドさんがかけた時間は、最速で出来上がるカップラーメンの所要時間と同じぐらいだった。
服はスプリングフィールドさんが着ているのと同じような、ヨーロッパの高原地方の民族衣装に近いもので、着るための手続きが若干、多そうな雰囲気がある。
長いスカートに、長袖のシャツ。女の服だからブラウスか。あと、その上にスプリングフィールドさんが重ねて着ている、良く分からないもの。
あ、靴まで。なんか申し訳ない。が、それよりも。
「あのー」
「何でしょう」
「この、ジャブラジャーラ、大きくないですか」
「このサイズのもので大丈夫だと思います」
ジャブラジャーラを無視された。我が、渾身のボケを。
「ジャブラジャーラと、パンツもですけど、いちおう、私の前世は男子だったように思うので、こう、みょんみょんしたりするのは初めての経験のはずなのですが」
「はい」
「記憶の中になんとなくある、前世の世界のものに、非常に似通っていると言いますか」
パンツを手に取って左右にみょんみょん引っ張り伸ばしている私を意にも介さず、あー、それはですね、とスプリングフィールドさんが言った。
「女性の転生者の方々が、下着を含めた女の身の回りのものの改善に、相当、ご尽力されたと伺っております」
ふむ。
「私が生まれるより前のお話でございますが」
私やコールズさんより前から、転生者はある程度の人数がいた、と。
なるほど。
「どうなさいますか。お着替えをお手伝い致しましょうか?」
「えー、この、私が着ている白いやつのですね、」
「転生者の衣ですね」
ただの白ポンチョなのに、ずいぶんと大袈裟な名前が付いてるな!
けど、それは今は重要ではない。
「はい、それの下、私、全裸なのです」
「存じています」
「ひとりで着替えたいのですけれども」
スプリングフィールドさんが、これはうっかり、という顔をした。
「申し訳ありませんでした。お着替えが終わりましたら、お呼びください。ドアの外でお待ちしております」
出ていこうとしたところで、足を止め、私の方を振り返った。
「ブラウスの上にボディスは重ねます。位置は、この位置です」
自分の服装を指差して、紐の結び方も続けて説明してくれた。あれは、ボディスというのか。
「何か、お分かりにならないことが出てきましたら、その時はご遠慮なく」
一礼して部屋から出ていったスプリングフィールドさんがドアを閉めるのを待ってから、私は転生者の衣を脱いで、裸の世界の住人となった。




