1-44 今は目
今は目の前のお寿司その他もろもろに集中しよう。
何食べようかな。
「むーん」
小さいお椀は、うん、茶碗蒸しであってた。かまぼこ、海老のように見えるもの、こっちは椎茸か。
「おー、おいしい」
「ここの茶碗蒸しは、有名なのよ」
へーー。あ、銀杏っぽいものも入ってる。
「フェザーフォールは、色んな食材があるところなんですねー」
「交易の中心になっている街だから、海のものとか山のものとか、たくさんのものが集まるの」
あー、なるほど。
「来る途中にあったものすごく大きな広場は、交易のための場所ということですか」
トーチライトさんが頷きながら、鐘楼広場ね、と言った。
あ、そんな名前が。
広場の真ん中に、鐘のある塔みたいなやつがあったけど、そうか、あれ、鐘楼っていうんだったか。
「鐘楼広場はフェザーフォールの中心にあって、そこから南北と北西、南西、北東、南東の六つの方向に馬車道が続いているわ」
六方向。
「普段は、馬車がたくさん通る感じですか」
「ええ」
さっき通った時は、馬車の姿はほとんど見なかったけど。
何か理由が……やめとこう。ご飯を今は食べる時間だ。
「デザート、どうします?」
少し、物憂げな表情になりかけていたトーチライトさんが、え、という顔をしたあと、そろそろいいかしらね、と言った。
「ごめんなさい、そこの呼び鈴を鳴らしてもらえる?」
女中さんが提灯を置いていったテーブルの隅に、風鈴のようなものがぶらさがった、小さなアーチ状の置物があった。
これかな。
「ほいでは」
ちろりろりん、と。
「きれいな音ですねー」
指でそっと揺らすと、どこか懐かしくも聴こえる、澄んだ鈴の音が繰り返し鳴った。




