1-35 職員以外
「職員以外、立ち入り禁止」
思わず、声を出して読んでしまった。
「えーと、ここでいいんですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
ためらうことなくグリーンリーフさんが開けたそのドアの先には、階段があった。
鍵とか、かかってないんですね。
「緊急時に開くことができないよりは、という判断ですね」
ほむ。
「この先に、宿舎への渡り廊下があります」
先に中に入ったグリーンリーフさんに私も続く。階段はあまり広くはないが、窓が高い位置にあって、暗くはない。
「夜になると、真っ暗なんですか? 建物の中って」
「転生者の方が考案された、光を灯すための魔道具があります」
へー。
「まどうぐ、ですか」
「誰にでも魔法の力を使えるようにしたものです。一定以上の魔力が必要とはなりますが、この世界に住む者であれば、問題なく扱える程度の魔力量ですね」
魔力か。
「魔力って、ステータス情報で見たりとかできるんですか?」
「可能ではありますが、残念ながら、第三支部に常駐している職員の力では、魔力の表示はできません」
おぅ。
「トーチライトさんでもですか」
「そうですね。第一支部と第二支部の職員であれば、若干名ではありますが、条件を満たす者がいます」
条件?
「端末宝珠を使うには、宝鍵という魔道具が必要になるのですが、ステータス情報に表示する項目の多さは、この魔道具を扱う者の魔力の大きさによって決まります」
うーむ。
「その、宝鍵って、誰でも使えたりするものなんですか?」
「ある程度以上の魔力を備えた、女性に限定されます」
ほーむ。それで、受付には女の人しかいなかったのか。
「その、子宮に魔法の力を宿す魔道具なので」
「……おぅ、それで女の人限定、と」
長めの階段が終わり、その先の短い廊下には、左右にドアが二つずつ、真正面に一つ。
少し、話を変えよう。なんとなく気まずい。
「魔道具というのが、良く分からないんですけども」
横に並んで尋ねた私に顔を向けて歩きながら、グリーンリーフさんが、そうですね、と考え込んだ。
「全てがそうではないのですが、ステータス情報の上では、装備欄に記載されるものが多いです。技能の区分についてのお話は、もう、お聞きになりましたか?」
技能の区分?
「いえ。固有技能以外にも、何か、あるんですか?」
「技能は、固有技能、習得技能、装備技能の三つに大別されています」
ドアを抜けると、少し広い空間があって、その先に、両開きのドアがあった。ドアは既に開かれていて、続く渡り廊下が見えている。
「習得技能というのはなんとなく、分かるんですけど、装備技能というのは」
気になる。
「魔道具の装備によって、装備中のみ得られる技能のことです。例えば、宝鍵であれば、装備することで〈鍵の権利〉という装備技能を使えるようになります」
ふむ。む?
「技能階梯は、どうなるんですか?」
「技能階梯は、装備者の魔力に応じた数値になりますね」
あー、習得値の替わりに魔力、みたいなことですか。
「そうです」
渡り廊下の左右には、大き目の窓。正面には、両開きのドア。ドアは片方だけ開いている。
「着きました。ここが宿舎です」
中に入ると、すぐに左右に伸びる廊下。正面の壁には、利用者表と書かれた紙が貼ってある。あ、男性、の方に、コールズさんの名前があった。
「お部屋は二階の、女性区画の突き当たりになります」
はー、ようやく着いた。グリーンリーフさんが歩きながら、資料を入れている手提げの紙袋から鍵を出している。
「こちらがお部屋の鍵と、宿舎の入り口の鍵です」
鍵は、少し大きめ。それぞれにちゃんと、宿舎二〇二号室、宿舎入り口と書かれた布製の、名札的なものが付いている。
「開けますね」
グリーンリーフさんが鍵を使って二〇二号室のドアを開けてくれた。




