1-22 そこだ
そこだ、と言ってコールズさんが入っていった部屋のドアは、開きっぱなしになっていた。食堂、と書かれた床置きの看板的なものが、ドアストッパーがわりに使われている。
「お邪魔しますです」
中は、向かいの壁に大きめの窓が四つあって、明るかった。左手にはカウンターがあって、おばさんがこちらを見ている。
あ、目が合った。どうも。
おばさんのいるカウンターの奥が、厨房になっているらしい。なんか、おじさんがいる。服装は、おばさんは私に近いけど、おじさんは、白い、調理師さんが着るような服を着ている。帽子もかぶってる。
「そこのトレイを持って、こっちに来い」
「あ、そういうシステムなんですね」
入口近くに積まれている木製のトレイを手に取り、コールズさんに続いてカウンターに並びながら、食堂の中を見渡してみた。
「ほへー」
ハンバーガー屋さんとかによくあるような、おひとり様用の席が壁際に幾つか並んでいて、さらに、部屋の中央には長いテーブルがコの字型に三つ、置かれている。
私から見て奥側のテーブルに、お客さんが一人。多分、リザードマンさん。ラーメン食べてる。
お箸で。
「……なんか、私の中で、色々なものが粉々になっていくんですけど」
「気にするな」
むーん。
ともかく、この世界にはリザードマンさんもいて、ゴブリンさんコボルドさんトロールさんオークさんオーガさんと同じで、敵対関係とかにはない、と。
お客さんが一人なのは、お昼時を過ぎているからなのかな。もっと、賑わっているのかと思ってた。
「注文どうぞー」
と、おばちゃんが。あ、また目が合った。どうも。
「ラーメンのセットで」
「はいよ。お嬢ちゃんは?」
えーと。
カウンター上の壁に貼ってある横書きのメニューには、カレー、ラーメン、チャーハン、うどん、など。
転生者の尽力、だろうな、この品揃え。
「カレーのセットをお願いします」
メニューによると、カレーはサラダと飲み物が付くらしい。
野菜食べないと。
「ちょっと、待っててね」
そう言って、奥にいるおじさんにおばさんが注文を伝える間、小鉢のメニューを見ていたら、プリン、と書いてあった。
「すいませんプリンもお願いします」
「はいはい。カレーセットの飲み物は、コーヒーでいいかい?」
ぐむむ。
「他にも、あったりしますか?」
「ミルクティーが出せるよ」
「それでお願いします」
「アイスでいいかい?」
「はい」
コーヒーは苦手、という刷り込みが。黒くて苦い汁がこの世界にも。
「コーヒー苦手か」
「なんか、そんな気がしたので」
「妙なところで、前世の記憶みたいなもんが出てくるんだよな」
俺も苦手なんだ、とコールズさんが言った。
「アイスのミルクティーがあるのに、軽く驚いていますけれども」
氷があるということですよね。あと牛乳。
「気にするな」
そうします。




