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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード1 転生~ステータス画面~戦い
22/1019

1-22 そこだ

 そこだ、と言ってコールズさんが入っていった部屋のドアは、(ひら)きっぱなしになっていた。食堂、と書かれた床置きの看板的なものが、ドアストッパーがわりに使われている。


「お邪魔しますです」


 中は、向かいの壁に大きめの窓が四つあって、明るかった。左手にはカウンターがあって、おばさんがこちらを見ている。

 あ、目が合った。どうも。

 おばさんのいるカウンターの奥が、厨房になっているらしい。なんか、おじさんがいる。服装は、おばさんは私に近いけど、おじさんは、白い、調理師さんが着るような服を着ている。帽子もかぶってる。


「そこのトレイを持って、こっちに来い」

「あ、そういうシステムなんですね」


 入口近くに積まれている木製のトレイを手に取り、コールズさんに続いてカウンターに並びながら、食堂の中を見渡してみた。


「ほへー」


 ハンバーガー屋さんとかによくあるような、おひとり様用の席が壁際に幾つか並んでいて、さらに、部屋の中央には長いテーブルがコの字型に三つ、置かれている。

 私から見て奥側のテーブルに、お客さんが一人。多分、リザードマンさん。ラーメン食べてる。

 お箸で。


「……なんか、私の中で、色々なものが粉々になっていくんですけど」

「気にするな」


 むーん。

 ともかく、この世界にはリザードマンさんもいて、ゴブリンさんコボルドさんトロールさんオークさんオーガさんと同じで、敵対関係とかにはない、と。

 お客さんが一人なのは、お昼時を過ぎているからなのかな。もっと、賑わっているのかと思ってた。


「注文どうぞー」


 と、おばちゃんが。あ、また目が合った。どうも。


「ラーメンのセットで」

「はいよ。お嬢ちゃんは?」


 えーと。

 カウンター上の壁に貼ってある横書きのメニューには、カレー、ラーメン、チャーハン、うどん、など。

 転生者(リレイター)の尽力、だろうな、この品揃え。


「カレーのセットをお願いします」


 メニューによると、カレーはサラダと飲み物が付くらしい。

 野菜食べないと。


「ちょっと、待っててね」


 そう言って、奥にいるおじさんにおばさんが注文を伝える間、小鉢のメニューを見ていたら、プリン、と書いてあった。


「すいませんプリンもお願いします」

「はいはい。カレーセットの飲み物は、コーヒーでいいかい?」


 ぐむむ。


「他にも、あったりしますか?」

「ミルクティーが出せるよ」

「それでお願いします」

「アイスでいいかい?」

「はい」


 コーヒーは苦手、という刷り込みが。黒くて苦い汁がこの世界にも。


「コーヒー苦手か」

「なんか、そんな気がしたので」

「妙なところで、前世の記憶みたいなもんが出てくるんだよな」


 俺も苦手なんだ、とコールズさんが言った。


「アイスのミルクティーがあるのに、軽く驚いていますけれども」


 氷があるということですよね。あと牛乳。


「気にするな」


 そうします。


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