2-82 今日は、どう
「今日は、どうだった?」
「謎の作業をさせられました」
「そっか。謎の作業か」
ゆっくり歩くレインツリーさんの表情は、後ろからは見えないけれど、謎の作業、という言い方に、なんだか、懐かしそうな雰囲気があった。
「もしかして、有名なんですか? あの、謎の作業」
「そうねー。まずは、思い通りに手先を動かせるようになりなさい、ということかな」
ふーむ。
「あのー、質問なのですが」
「何?」
「細工師って、魔道具を作ったりもするんですよね?」
「そうだね」
「具体的に、どういったお仕事内容になるんでしょうか」
「あー、そういう方向の質問ね」
そうねー、とレインツリーさんが言った。
「細工師の仕事は、魔力の流れる道筋を作ること。その道筋に魔力を流すための仕掛けを作る、仕上げの作業は、また、別の担当になるんだけどね」
ふむふむ。細工師は、魔力の流れる道筋を担当する、と。
「詳しいことはよく知らないですけど、電気の回路とかそういう感じのやつですか」
「そうそう。電気の回路は私も詳しくは分からないけど、なんか、そんな雰囲気だね」
銀のペンダントの表面に刻んである模様とか、ペンダントの形とかにも、そういう役割がある、ということ……なのかな。
「形とか、模様とか、そういうのが、道筋を作るんですか?」
「お、鋭いね。その考え方であってるよ」
褒められた。
むん? ということは。
「ルーペさんが当代随一、というのは、手先の技がすごい、ということだけではないんですね?」
「うん。リカルドは、消費する魔力に無駄が出ない道筋を作ることにかけては、天才だね」
レインツリーさんが天才という言葉を使いますか。
「もうさー、私の方から、こんな感じっていう、意匠のアイディアを出すじゃない?」
いしょう。
「あー、デザインのこと」
デザイン。
「うん。そうしたら、こうした方が無駄がない、という逆提案が来るんだけど、言い方が昔は生意気でさー。ほんとに」
でもね、とレインツリーさんが続けた。
「あー、こいつ、一生懸命なんだなって思ってね。少しでもいいものを作りたい。妥協したくない。できることは、全部やりたい。そういう考え方をするやつなんだよ、リカルド・ルーペは」




