2-47 そい
「そいつのこと、お願いします」
「お前も無理するなよ」
「じゃあね」
「失礼します。またな、ブロッサム」
あ、いってらっしゃい、お気をつけて。
で、えーと。
「お二人とも、戦闘職さんだったんですか?」
「もう、昔の話だけどね」
料理長と奥さんが、戦闘職。
「変か?」
「いえ、そのー、想像がつかないと言いますか」
「そりゃあ、十五年も前の話だからな」
「そうだねぇ。もう、そんなに経つかねぇ」
十五年前。
「なんだ、戦闘職組合に興味があるのか?」
いえ、うーむ。
「入りたいんなら、推薦するぞ? 転生者は大歓迎されるはずだ」
大歓迎……転生者、イコール、戦う力のある人、というイメージが、この世界での一般認識なのかな。もしかして。
「無理です無理です。私には、戦う力とかないです」
あ、そうか。まだ、固有技能のことを言ってなかった。
「私の固有技能は、全く、戦闘に向かないものなので」
ステータス情報を出したりとかですから。
「変わった固有技能だな」
「ですよね……。戦いの役には立たないです……」
戦えない転生者は、人をがっかりさせてしまうのかも知れないな……。
「いや、そういう意味じゃねぇ。落ち込むな、違うんだ」
慌てた様子の料理長を、じろ、という擬音が相応しい感じで、奥さんが見た。
「言葉には気をつけなって、昔から言ってるよねぇ?」
「すまん。配慮が足りなかった」
いえ、そんな。事実ですし。
「使い方次第だよ、ブロッサムちゃん。おばちゃんの固有技能でも、魔道具の力を借りれば、役に立たないなりにどうとでもなったから」
「そうだぞ。こいつの戦い方は、質が悪いからな」
「一言、多いねぇ」
「……すまん」
亭主関白系かと思っていたら、実は奥さんの方が強い系なのかな。
あー、何にせよ、人に気を遣わせてしまうのが、一番駄目だ。
「気にとか、してないですから! ほんとに、元気爆発ですよ!」
ところで。
「オムカレー、すっごくおいしいですけど、メニューには入れないんですか?」
「あぁ、そうだな。考えてみるか」
私の空元気に、料理長が合わせてくれた。奥さんが、ふふ、と笑った。
「ブロッサムちゃんの目の前には、たくさんの道が今、あるんだから、悩めるだけ悩んで、悔いのない選択をするといいよ。もちろん、失敗した、と思えば、その道を戻って別の道に行ったっていいんだし」
考え込まないことだよ、と言って、奥さんが三人分のお皿を持って、席を立った。
「洗い物しようかねぇ」
はい。お手伝い致しますです。




