2-41 魔
魔導王さんのことを尋ねながら、私が考えていたのは別のことだった。
レインツリーさんは、エルフだから、寿命が長い。こちらの世界に来て二百年、と言っていたけど、その間にたくさんの出会いと別れを経験してきたのだと思う。
私から見れば、教科書に名前が出てくるような歴史上の人でも、レインツリーさんにとっては今も、尊敬の念を抱いている、直接教えを受けた先生、なのだろう。
きっとこの人は、いつの日か、トーチライトさんやコールズさんとの別れの日が来るのを覚悟している。それでも、そんなことを感じさせずに、エルフという特別な立場を受け入れ、生きている。
捉えどころがない人だけど、仕草の一つひとつはとても丁寧で、内側はすごく、繊細な人なのかも知れない。ものすごく年上のお姉さんに、こういう感想を持つのは失礼か。出会ってまだ一日目の人に対して、分かったようなことを思うのも、ちょっと違うのかも知れないな。
トーチライトさんが、レインツリーさんに、見守るような雰囲気の微笑みを向けていたのが印象的だった。
「今も、魔導王さんはレインツリーさんの先生なんですね」
「うん。そうだね。あの人には一生、かなわない。あ、ちなみにエレノアの先生は私ね」
「基礎魔術だけだけど」
「基礎が分からないと治療魔術だって分からないでしょーが」
「それは、そうね。感謝してますよ、ちゃんと」
「なら、敬って」
「そういうところが、駄目だと思う」
「叡智の魔女だよ、私」
「その呼ばれ方、一番、嫌いなやつだったわよね?」
「……うん」
「なんか、魔導王の横に並んでも遜色のない感じですね。叡智の魔女」
「えー、魔女とかやだよ……って、ヨリちゃん、笑うなよー」
笑ってました? 私。
「うん。なんか、穏やかに笑ってた」
えー。
「気づいてなかったです」
「あ、また笑った」
ほーへっへっ。
「照れるとその笑い方をするんだね?」
「どぅえへへ」
「ほら、二人とも、そろそろ帰りましょう?」




