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銀のペンダント  作者: 上村文処
エピソード2 授業~師匠~笑う
106/1020

2-38 ハンバー

 ハンバーグ、おいしかった。そして目の前には、色とりどりの小さなケーキが乗ったお皿と、紅茶。

 どのケーキから食べよう。チョコレートのやつか、それともオレンジ色のソースがかかったムースみたいなやつか。緑は抹茶か? 苺尽くしのショートケーキはクリームも苺色。ブルーベリーソースっぽいのがかかったレアチーズケーキに、シンプルなベイクドチーズケーキ。マスカットに見えるものが乗ったタルトもある。


「しみじみ思うんですけど」

「どうしたの?」


 私の前に座っているトーチライトさんが、紅茶の入ったティーカップを置いて尋ねてきた。


「女って、甘いもののこと考えてると、幸せになりますよね」


 私、女になってまだ三日目ですけど。


「そうね」

「うんうん」


 私の左に座っているレインツリーさんがこくこく頷いている。

 道すがらに話したことと、食事中に話したのは、今の話と同じような、他愛もないこと。

 森のめぐみのすごさを力説したら、夕方なのにお洗濯をしたことをトーチライトさんに驚かれ、あ、私、洗濯したパンツと一緒に寝ないといけないのか! ということに気づいたりとか。

 自分の女子力の低さに愕然としたけど、いや、元々は私、男子ですしと開き直ってみたりする、そういう会話はとても楽しかった。


「ヨリちゃん」

「何でしょう?」

「この世界でしてみたいこととか、見つかりそう?」

「そうですねー」


 天寿を全うしたい、という話は、レインツリーさんにもした。ヨリちゃんらしいね、と言われた。レインツリーさんが言った、この世界でしたいこと、というのは、もっと具体的な、どうやってこの世界で生きていく(かて)を得たいのか、という意味なんだと思う。


「まだ三日目なんだから、ブロッサムさんをそんなに急かさなくても」

「そうだけどさー」


 気心が知れている人たちが話すのを間近で聞くのは、楽しい。コールズさんとガロウさんのやり取りも、そんな風に思って聞いていたような気がする。

 お店の中には、たくさんではないけれど友人同士や家族でのお客さんが何組かいて、煉瓦の壁を照らすランプの光が作り出す、温かな雰囲気の中で、みんな、何かを楽しそうに話している。


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