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ジャスミン・登場!

 リリアンは頭の上にクエスチョンマークをたくさん並べたような表情を浮かべている。

 それもそのはず。

 ジャスミンの読書室への扉に取っ手が無いのだ。

 入口からジャスミン仕様になっている。


「どうやって入るの?」


「幻覚の中でもそういうところは現実と対して変わらないはずだ。扉にそのまま突っ込め」


 エドガーはリリアンの背中にいながら、指示を出す。


「は?」


 リリアンは大きな口を開けて、エドガーにマヌケヅラを晒してしまう。


「いやだから、扉に突っ込め。

 その扉は幻覚なんだ。

 まぁ、大した用事がなかったり悪意を持っていたり、ジャスミンの機嫌が悪いのに入ろうとするとはじき出されるけど」


「リリィ、お先に~」


 アナベルが先に扉に歩み寄る。

 まるで水の中に入ったかのように扉が波打つとアナベルは扉の向こうに消える。


「俺も行くぜ」


 アランも同じように扉の向こうに消えてしまう。


「リリアン。早く行ってくれないか?」


「わ、わかった……!」


 リリアンは慎重に歩みを進める。

 両手はエドガーを支えるために使ってしまっているため、頭から扉に入れる。

 まるで、ゼラチンの中に頭を入れたかのようにドプンという音がすると、リリアンは扉に引き込まれる。


「ひっ……!」


 リリアンは思わず息を止めてしまった。

 だが、扉に沈み込むような感覚は一瞬で終わり、ぴょんと排出される。

 おそるおそる目を開いたリリアンは思わず言った。


「うわぁ……!」


 ジャスミンの読書室は、一言で言ってしまえば幻想的だった。

 部屋一面が何らかの輝きを放っている。

 色とりどりの玉が部屋中に浮かび、床は刻一刻と色が変化する。

 だが、そのすべてが調和している。

 目に全くうるさくない。

 それどころか、机の上は常に白色になるように調節されている。


 部屋のいたるところに椅子がある。ふかふかなものから硬いものまで。

 足が延ばせるものから背もたれがないものまで。

 ジャスミンのその日の気分に合わせて好きな椅子を使えるようにしているようだ。

 天井は高く、魔法によって空が透けて見えるようになっている。

 太陽の光が優しく部屋に浸透している。


「私もこんな部屋に住みたい」


「いや。お前、こんなにごちゃごちゃした部屋嫌いだろ」


 エドガーが口をへの字にしながら言う。


「そうだけど、こういう幻想的で女の子チックな部屋も好きだよ?

 特にピンクとか安易に使ってないところに好感が持てるね。優しい色合いでとっても落ち着きそう」


「へぇへぇ。そうですか」


 エドガーはリリアンのうっとりとした声をあっさりと聞き流す。


「何その反応。私だってそう言うとこあるんだからね?あんたは知らないかもしれないけど」


「そうか?むしろそれが強がって言っていることだって自覚してない方が怖いね」


「そんなことない!私だって……!」


 むきになって反論しようとしたリリアンだが、言いかけた言葉を何とか飲み込む。

 昔のように口喧嘩だけで日が暮れるようなことはしない。大人になったんだ、私は。


「もういいよ、私の好みの話は!さっさと言葉が通じるやつ探してよ!」


「図星らしいね。まぁ、確かに、早く見つけてこの世界とはおさらばしよう」


 エドガーは真剣な表情に変わると、ゆっくり耳を澄ませる。


「室長。どう?」


「まて、かすかに声が聞こえる。こっちだ」


 エドガーはリリアンの顔の横で指をさす。リリアンは指さされる方にゆっくり歩く。


「いや、少し小さくなった。リリアン、こっちだ」


 エドガーはリリアンのほほをツンツンと突くと向かってほしい方向を指さす。

 進行方向にはアランがいる。

 おおっと、と言いながらアランはリリアンに進行方向を譲る。


「おい、何物だ、お前は……?」


 エドガーは独り言のようにつぶやいた。すると、物の方から返答が帰ってきたようだ。


「プレゼント?俺が……。

 それなら数えるくらいしかない。

 ……ジャスミンにあげたものってなんだったっけ?思い出せねぇぞ……」


 だが、エドガーのセリフを聞いて、アナベルがハッとした表情を浮かべる。


「室長~。

 もしかして万年筆じゃない~?

 ジャスミンにあげたものでマシなものってそれしかないよね~?」


「そうか、万年筆!俺が使っていたやつをあげたな」


「万年筆なら机?」


 リリアンはジャスミンの机に向かう。

 机は木でできた曲線を生かしたやわらかい雰囲気の物だった。

 机の上にはインク壺と万年筆が置かれている。

 万年筆は白いキャップに白い本体。

 真ん中には金色の線が入っており、ペン先も金に統一されている。

 手入れを丁寧に行っているらしく、きれいに磨かれて光沢があり、部屋の光を反射して美しく輝いていた。


「これ?」


「ああ。これだ。お前なんだろ?この魔法にある本物って」


 エドガーはバツが悪そうな表情を浮かべる。


「悪かったな。だが、思い出しただろ」


 万年筆に何か言われたエドガーは背中をぶるっと震わせる。


「善処しよう……!」


「ふはは!エド!この幻覚に囚われ続けていたいんじゃないか?」


「そんなことは無い!

 そんなこと言うアランこそ、そう思ってるんじゃないか?

 ジャスミンにうっかり変なこと言ってただろ?」


「何言ってやがる!俺が一番得意なのは話し合いだぜ?」


「殴り合いの間違いだろ。もういい、さっさと出よう」


 エドガーはよしと頷くと全員に知らしめる。


「みんな、このペンを一斉に触れ。行くぞ、せーのっ!」


 アラン、アナベル、リリアン、そしてリリアンに誘導されたエドガーが万年筆を一斉に触る。

 全員の周囲に光が溢れる。

 何本もの光が彼らの後方に流れる。

 すぐさま、流れる光の速さが徐々に早くなり、次々と色とりどりの光が通り過ぎる。

 ついには目で追えなくなりホワイトアウトする。


「うっ!」


 リリアンは思わずうめき声をあげてしまった。

 急激な景色の変化により、乗り物酔いにも似た感覚を得ていた。

 足で地面があることを確認すると、ゆっくりと目を開く。

 徐々に周囲の景色が目に入る。


「リリアンちゃん!あなたがリリアンちゃんなのね?」


 女の子のような幼く高い声が聞こえる。

 だが、声音はとてもハリがあり、はっきりとリリアンの耳に届く。

 リリアンはその人を見る。

 長い黒髪に白いシャツ。短めの黒いプリーツスカート。

 なんと、シンプルなファッションだろうか。

 足に自身の無いリリアンは小さい頃からこんな格好になったことないな、などと考えていると急に抱きしめられる。

 急なことに反応できなかったリリアンはエドガーを落とす。

 エドガーは派手に尻もちをついてしまった。


「ウッ」


「リリアンちゃん!初めまして!私、ジャスミン!」


「へっ?」


 リリアンの前に現れたジャスミンは鬼ババアなどではなかった。

 容姿だけ見ればとても若い、美少女だった。

 子供の容姿のまま、その表情にはすこし大人びた部分があるようだ。

 白に統一されたワンピースを可愛く着こなしている。


 ジャスミン=レモン。

 妖精族。

 背中には魔力でできた羽があり、意図的に出し入れできる。

 感情の高ぶりで現れることもある。


「よ、よろしくお願いします……!」


 リリアンは外見からは想像もできないパワーで抱きしめられてしまい身動きが取れない。


「い、痛いです……!」


「あら、ごめんなさい?」


 ジャスミンはリリアンを解放する。

 リリアンはジャスミンによって背骨が変形させられたかのような違和感を感じて、背中をのばすストレッチをする。

 ジャスミンは次に、エドガーを助け起こし、椅子に座らせているアナベルに話しかける。


「アナベルちゃん!この前あのおいしい紅茶を一緒に飲んで以来ね」


「ご無沙汰~」


 アナベルはにっこり笑って手を振る。

 ジャスミンは目を細めると、毛むくじゃら地人族に目をつける。

 とても不機嫌そうなジャスミンの表情にアランは居心地が悪そうに手をもむ。


「アラン。あんた、散々言ってくれたわね?

 それに、相変わらず汗臭いわよ。この部屋に来るときは体を洗ってからって言ったわよね?」


「す、すまねぇ。今日は勘弁してくれ……!風呂に入る余裕なんてないんだ」


 さっきまで威勢の良かったアランだが、小さく縮こまっている。

 フンとジャスミンは顔を振る。そうして白い魔導書を開くと、急にアランに向かって手を向ける。


「浄化魔法・消臭」


 アランはカラフルな魔法陣に包まれると、魔法陣がアランの皮膚にまとわりつく。

 ゴムが弾けたようなバチンという音とともに魔法陣が広がり霧散する。


「イッテェ!」


 アランは全身に少し焼ける様な痛みを感じ、身をよじってその痛みから逃れる。

 周囲にも少し焦げたような匂いが広がっている。


「これでよし。臭くなくなったわよ」


「ってめぇ。もう少しましな方法はねぇのか?」


「あら、これでも仕方がない状況というやつをかんがみて加減してあげたの。

 感謝して?それに口の中までは消臭できないの。喋らないでくれる?」


「やなこった」


 ジャスミンは手に持っていた本をぱたんと閉じる。

 ブンと手を振ると、次の瞬間、手に持っていた本が薄いピンクの本になる。

 ジャスミンはにっこり笑うとアランに掌を向ける。


「アナベルにこの間のお茶会で、随分便利な魔法を教えてもらったの。

 気に入らないやつを追い出す魔法よ?アランで試させてね。生活魔法・外出」


 アランは気を付けの姿勢になる。


「うっ!」


 そして、まるでロボットのように右手右足を前に出し、左手左足を前に出し、一歩ずつ扉に進む。


「おいおい!俺は邪魔者か?」


「しばらく外でおとなしくしていて」


 ジャスミンの冷たい声。

 アランは力いっぱい抵抗していたが、最終的には部屋の外に追い出されていた。

 今頃、ふてくされて扉の前で寝転がっているに違いない。または……。


「けっ!勝手にしろ!俺は自由にさせてもらうぜ!」


 どうやら後者の方だった。

 アランが扉の外から離れるのを感じたジャスミンは一息ついた。

 そして、流し目でエドガーをみる。


「さって、エドガー?」


「……何だ?」


 言っている内容がとてもそっけない事になっているが、本人は汗だくだくの表情を隠しきれていない。

 だが、そんなエドガーの状態を知ってか知らぬか、ジャスミンは語調を強める。


「なんだじゃないわよ!なんで、私にくれたプレゼントの内容忘れてるの?」


「聞こえてたか……!」


「エドガー!幻覚魔法は現実世界からあなたの肉体を消すものではないわ!

 あなたが私の目の前に立って、私の目の前で言ってたんだもの!

 聞こえてるに決まってるでしょ!」


 ジャスミンは腰に手を当てるとエドガーに詰め寄る。


「あの万年筆は私がエドガー研究室に入った時の記念にもらった物!

 以来、あれ以外のペンで何かを書いたことは無いわ!」


「それは、ジャスミンが、あれ以外のペンを持ってないだけだろ」


「屁理屈禁止!」


「へい、すいません」


「あのペン、私がどれだけ大切にしてるか、知らないんでしょ!」


 エドガーは小さく縮こまる。もはや言葉もないようだ。

 しかし、ジャスミンの怒りは収まらない。怒りは連鎖する。

 特に、過去のことへと次々とつながって。


「だいたいね!たった一回だけ、実験を失敗しただけで引きこもりやがって!

 目が見えなくなったから魔法が使えない?

 なんで、その程度の事であきらめてんの?

 たかが失明!魔法が使えなくなるわけでもない!」


「ああ、そうだった。魔法は使えた」


「でしょ!当時のエドガー。私たちの言葉なんて全く聞こうとしなかった!

 いくら復活のチャンスがあるって言っても、自分はもう終わった魔法使いなんだって主張の一点張り!

 まったく、あの時ほど頭に登った血を抑える方法が見つからなかったことは無いわ!

 私をどれだけ失望させれば気が済むの?」


「すまない。まさか、そんなに思わせてしまっていたとは気が付かず……」


 エドガーは鼻の頭を掻く。

 リリアンは気が付く。

 これはエドガーがかすかに喜んでいる印だ。

 怒られて何を喜んでいるの?リリアンはエドガーのその態度に少しいら立ちを覚える。

 だが、その態度の事はジャスミンも見抜いていた。


「何を嬉しそうにしているの?」


 エドガーはハッとして鼻を掻くのをやめる。

 即座に、何も読み取れないようポーカーフェイスを決めこむ。

 今さらそんな顔をしても遅い。

 ジャスミンにはすでにばれてしまっている。

 エドガーはそんなことをしても無駄だと思い直し、ぽろっと一言こぼす。


「いや、楽しんでくれていたんだな」


「はぁ?たった三年だけ私を楽しませただけで、まさか、満足したわけじゃないでしょうね?

 こっちは千年以上の暇を持て余しているの!

 もしかして、あの約束、忘れたわけじゃないでしょうね?」


「忘れるものか。この半年、どう謝罪すればいいか。ずっと迷っていた。だが、それももう終わりだ」


「なんで?」


「もう、絶望しない。やはり、魔法の可能性は無限大だった」


「もしかして?」


「ああ。実験は成功した」


「はぁー!!!やっぱり、エドガーは最高ね!」


 ジャスミンはエドガーの手を取ってピョンピョンジャンプする。

 めのみえないエドガーは足元を気にしながらもそのジャンプに付き合う。

 ジャスミンはその様子に気が付く。


「あら、目は元に戻らなかったのね」


「残念ながらな」


「なら、今魔法戦やったら私が勝つんじゃない?

 エドガーが引きこもってからやってないから、記念すべき百戦目がまだなのよね」


「ふっ。俺だって新たな力を手に入れている。これまでの俺とは一味違うぞ?」


 二人がやる気満々なのを見てアナベルは過去に思いをはせる。


「え~、またあの戦いやるの~?闘技場壊れるから、大学からストップかかってたよ~」


「何言ってるの!闘技場なんて一瞬でもとに戻せるわ!」


「そうだけど~。引き換えに大学職員が十人ほど倒れるじゃない~」


「職員なんてどうだっていいの」


「はぁ~。相変わらずわがままだな~」


「わがままじゃないわ。正直、他人なんてどうでもいいのよ。

 生きてたところでなんの面白みもないもの」


 リリアンは呆気に取られて見ているだけになっていた。

 噂には聞いていたジャスミン。思った以上に自己中心的だった。

 リリアンは置いてけぼりだが、研究室のメンバーは慣れっこという感じだ。

 エドガーはそんなジャスミンの雰囲気に合わせて急に話題を変える。


「ところでジャスミン。リカードは?」


「奥で寝てるわよ。赤い目をしていたし、リカードとしては異常な筋肉。

 さらには、特有の甘ったるい匂いに、かなりの量の魔力が吹き込まれた魔導石。

 リカードはあの外をうろついている変なのになりかけていたんでしょ?」


「そうだ。さすがだな」


「あら、このくらいできなきゃエドガーと並ぶ実力者と言われないんだもの。

 私、二番手は嫌だから、仕方なく身に着けた洞察力よ。

 一応寝かせといたけど、それでいいわよね?」


「ああ、問題ない。

 ところで、この図書館に仕掛けられた幻覚魔法は何に対して発動するようになっているんだ?」


「もちろん、外をうろつく変な奴らだけど」


「やはりそうだよな。リカードに反応したのか?」


「いや、むしろリカードは普通にこの部屋まで来たわ。

 彼は図書館に着いて一人ぼっちになったから私の部屋に来たって言ってたわ。

 どうせ私の魔法だろう?って疑ってきたのね。

 ま、間違ってないけど。

 リカードはなんで責める口調で私を詰問したの?」


「そりゃ~ね~」


 アナベルは困り顔になりながらも、そう言った。エドガーは顎に手を当てる。


「ふむ、リカードには反応していない。俺たちに反応した。一体、何に反応したのか……」


「あの魔法は皮膚の様子に反応するようにしていたわ。

 ここにくるときに一体から皮膚をとってそれを元に魔法を設定したもの」


 エドガーはジャスミンの手際の良さに感心した。そして、一つの可能性を思い当たる。


「あ、もしかして、これか?」


 エドガーは白衣のポケットからシールを取り出す。


「これは?」


「外をうろつく変な奴らの皮膚だ。ジャスミンに分析してもらおうと思ってたんだが」


「あら、はぎ取った皮に反応するようにはしてなかったつもりだったけれど……。

 まぁ、トラップ魔法の設定で皮膚は使い切っちゃっていたからちょうどよかったわ。

 わかったわ。やってあげるからそれちょうだい」


 エドガーはジャスミンにゾンビの皮膚を採取したシールを渡す。


「ちなみに、エドガーの仮説は?」


「伝染する強化魔法。元に戻す方法は不明」


「なるほどね」


 ジャスミンはピンクの魔導書をぱたんと閉じる。

 ふっと上に振るとそこには青い魔導書が出現する。

 そして、シールを見つめるとふぅと息を吐いて言う。


「これね。あら。この皮膚サンプル、いったい誰がとったの?」


 リリアンはおそるおそる手を上げる。

 怒られるのであろうか。だが、仕方が無かった。

 うつるかもしれないのに、触らなければならない恐怖。

 拘束しているのに全く暴れない不気味なゾンビ。

 怖くて手が震えてしまったかもしれない。

 だが、リリアンの心配をよそにジャスミンは満足気な表情を浮かべていた。


「ふぅ~ん?なかなかいい感じに皮膚とれてるじゃない?

 ほめてあげる。さすが、エドガーの幼馴染ね」


「俺の幼馴染みであることは関係ないだろ」


 ジャスミンはため息をつく。


「はぁ、あんたたちまだそんなふわっとした関係なのね。

 そういえば、エドガー。リリアンにかけた魔法は解いたの?」


 ジャスミンの何気ない一言にリリアンが反応し、エドガーの顔をまじまじと見つめる。


「ちょっと待って。エド?私になんか魔法かけてあるの?」


 エドガーはバツが悪そうに顔をそむける。


「……まぁな。俺に会いたいと思った時に別の事がしたくなるようにする魔法をな」


「え?そうなの?なんでそんな魔法かけたの?」


「いや、しつこかったから……。

 俺が実験失敗したって、どこからか聞きつけてな。

 もう一回やってみろとか諦めないでとか……」


 リリアンは驚く。だが、同時に疑問に思う。


「そんな理由で……。ん?ちょっと待って!ならなんで、今、こうして一緒にいるの?」


「……わからない」


 そんなエドガーにジャスミンは言う。


「この世にはね。魔法なんかじゃ到底及ばない力ってものがあるのよ」


「……そうなの?」


 リリアンは首をかしげて問う。


「そんなわけないだろ。この世界は科学と魔法で全て説明できるはずだろ?オイゲンの仮説によれば」


 エドガーはぴしゃりとそう言った。


「誰よ。オイゲンって。それよりも、さっさと私にかけた魔法といてよ」


「お前、オイゲンをバカにするとゆるさねぇぞ。

 あの人の理論は近代魔法学に超!影響を及ぼしてんだ!

 いいか、俺が説明するのはおこがましい限りだがな……」


 エドガーの高説が始まりそうだった。しかしジャスミンはそれを全く意に介さず言う。


「それはそうと、さっさと魔法を解いてあげなよ。

 常駐させてるんだからリリアンちゃんにも負担でしょ。

 私も今から分析するけど、その間、暇でしょ?」


 ジャスミンは机の上に集中して、ゾンビの皮膚が閉じ込められているシールの位置を調節する。

 黙って入れば、どんな男も振り向く美人だ。

 エドガーはしょんぼりと肩を落としながら言う。


「わかったよ………!!」

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