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アラーーーン!!!


ブクマ登録ありがとうございます!

壁に穴あきました!!

だが、その期待は甘すぎた。


「その程度か?」


「なに?」


 アランの表情は一ミリたりとも動いていなかった。

 あれだけ拳を叩き込んだアランの腹には何の傷跡も無かった。


「……お前、どんなペテン使いやがった?」


「何のペテンもない。単純なことだ。

 お前は俺のマジックアーマーを破れなかった。

 お前の魔法はその程度ってことだ。

 エドは指先だけで俺の魔法を破ったというのに」


 アランが拳を構える。弓を引くように腕を引いたアランの右腕には魔力が集中する。


 ボッ。


「ぐっ」


  アンドリューがかろうじて感じたのは、アランの腕があった位置に見える強烈な魔力の残滓と、風切り音だった。

 気がついたら鼻に衝撃的な痛みが残っていた。


「いってぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「ちゃんと爆裂させろよ?ここからはノンストップだ」


 アンドリューは感じた。

 アランの腕にとてつもないほどの魔力が集まっている。

 そして背筋に何かを感じる。

 これは……恐怖!

 感情固定の魔法をぶち抜いて伝わってくる恐怖。

 アンドリューは全身を振るってそれを吹き飛ばすと吠える。


「うぉぉぉぉぉ!」


「おらぁぁぁぁぁぁ!」


 アランの拳が急に増える。


 否。


 音速で繰り出される連続の正拳突き。

 それらすべてに爆裂を纏った拳をぶつけるアンドリュー。

 ぎりぎりで相殺できているが、この均衡を保ち続けるには無理がある。


 アンドリューは目を本気で開いている。

 瞬きすらできない。

 瞬きをすればその瞬間にやられる。

 彼にはその確信があった。

 しかし、いかに乾燥に強い地人族でも目を開け続けていられるのはせいぜい十秒である。

 目が真っ赤になりつつあるアンドリューを見てアランは笑う。


「おらぁぁぁ!瞬き、したらどうだぁぁぁ?」


「くぉぉぉぉ!」


 アンドリューは考える。残された時間は五秒。

 何ができる!とにかく距離を取らなければ!


「くそっ、取っておくつもりだったが、仕方がねぇ!」


 アンドリューは足を上げる。足の裏でアランの足元の床を破壊する!

 残り三秒!


「その手はダメだな」


 持ち上げた足はアランに払われる。

 アランの足元を狙うことはできなかった。

 だがアンドリューは不敵に笑う。

 残り一秒!


「問題ない!このまま足を下ろす!」


 アンドリューは構わず足を下ろした。

 足を下ろした場所が白く光る。

 光は一息で体育館の床を覆いつくした。

 途端に体育館の床が爆発した。

 アンドリューの渾身の反撃。

 あらかじめ体育館の床に爆裂魔法を仕込んでおいたのだった。

 体育館は床一面がら強烈な熱と光が発せられ、焼却炉も真っ青な熱力を一瞬に凝縮し爆発させた衝撃を生み出した。


「どうだ!アラン!」


 爆発の勢いに自分もまきこまれながらアンドリューは瞬きをした。

 開けっ放しだった目はここぞとばかりに主人に抗議する。

 真っ赤に腫れた目から次から次へと涙があふれる。


「いてぇぇぇぇ!」


 吹き飛ばされうつぶせに何とか着地し、痛みに反抗してゆっくりと目を開くアンドリュー。

 だが、彼は目を開くべきでなかった。

 彼の目の前には絶望が迫っていた。

 爆裂の魔法を受けてマジックアーマーが少し濁っている、それでも堂々と立っているアランの姿がそこにあった。

 魔力によって発生した炎がマジックアーマーに引火したままである。


「お前にしては悪くなかったぞ。

 だが、床一面に広げた爆裂では爆裂の密度が薄すぎるぜ。

 俺に傷をつけるにはな」


 アランは弓矢を引き絞るかのように腕を引く。


「また、やろうぜ」


 アンドリューが見たのはアランの腕が発射されたときに現れる魔力の残滓だった。


「やれやれ。げほっ!優秀な弟子を持つと師匠は大変だぜ……」


 アンドリューを一撃で気絶させたアランだったが、腹をおさえ膝をついてしまう。

 マジックアーマーは魔法による影響から身を守る魔法である。

 もちろん、攻撃のために物理効果を追加していたものの、それは防御のためではない。

 アーマーはアンドリューの拳に込められた爆発の魔法から身を守っただけであり、パンチの勢いは全て自分の腹で受け止めていた。

 アーマーを解除する。

 彼が纏っていた紫の魔力の輝きは消え、同時にアーマーに引火していた炎も消える。


「……なかなか強くなったじゃないの。さて……エドが待ってる」


 アランは床に寝そべるアンドリューを一瞥すると、痛む腹を撫で足を引きずりながら図書館に向かった。



「いてて~。急に転移魔法を使われたみたいだね~」


「アナベル、無事か?」


「何とかね~……」


 リカードはそう言いながら周囲の様子を確認する。

 校舎の屋上。周りにこの建物より高い建物は無い。

 おそらく図書館の上だ。

 アナベルのメイド服に大した汚れは付いていない。

 どうやらただの転移魔法だったようだ。


 そこに、見知った顔が現れる。


「いやぁ、待ちくたびれたよ~」


「グラディス……!」


 リカードは恨みがましくグラディスのことを見る。

 グラディスの体は元に戻っていた。

 傷一つなくなった彼の体をみて、リカードは驚く。


「あの方が待てっていうから待ってたのに!随分と待たされたよ!」


「あの方?アルダスのことか?」


「そうさ。僕たちの長!アルダス様!」


 リカードはハッとする。

 アルフもあの方と言っていた。

 やはりアルダスが主犯らしい……!


 リカードは背中に伝わる冷や汗を感じる。

 久しぶりの感覚。戦闘の直前。

 自分の感覚が徐々に研ぎ澄まされていく。

 周囲の状況を把握することだけに自分の体を使う。


「リカード。君はいい加減。ボクの仲間であることを認めなよ」


「誰が、認めるか!」


 グラディスの言葉遣いが中庭で出会った時より明瞭である。

 変質のステージをいくつか進んでいるらしい。


「でも、リカード。君の魔石、もうそろそろなくなっちゃうんでしょ?」


 グラディスの指摘にリカードは唇を噛む。

 なんて聡いやつなのか!


「即席で用意したのだろうし、持って残り三十分くらいかな?

 自分が変化しないための魔力も必要だろうし、攻撃するための魔法は使えてあと三回くらいだろう?」


 グラディスの得意げな顔。リカードは余裕な表情を作ることで精いっぱいだった。

 グラディスの指摘が続いて自分に少し自信を持てなくなってきている。だが……!


「だが、まだアナベルがいる!」


「あははははは!」


「何がおかしい!」


「ここにお前の味方なんていねぇんだよ!」


 グラディスはぱちんと指を弾き、アナベルを指さした。

 リカードはバッとアナべルの方を振り返る。

 アナベルは苦痛に歪んだ表情を浮かべて体を抑えていた。

 前かがみになったアナベルは苦しそうな表情でグラディスの方を見る。


「ぐ……ぐぐう~……ご、ごめんね~リック……!

 まさか伝染してるとは……!

 せ、生活魔法~……、着火……!」


「ぐぁぁぁぁ!」


 リカードは思わぬ攻撃を喰らってしまった。

 左手の裾に火がついてしまったと思った途端、服の表面を火が走り、全身が一気に燃え上がる。

 驚いたリカードはアナベルを見る。

 アナベルの目は真っ赤になっていた。


「アナベル!何してやがる!変質魔法・火炎耐性!」


 リカードの全身の皮膚が何千度の熱にも耐えられるように変質する。


「一つめ!あと使える魔法は二つだけだね?」


「貴様……!アナベルに何をした!」


 リカードは魔法が間に合わず、すこし焦げてしまった左手をさすりながら叫んだ。


「何って?そいつは俺の魔力を吸収していた!すでに伝染していたんだよ!」


「何だと!」


 リカードは思い出した。

 中庭でアナベルがグラディスの魔法を吸収してしまっていたこと。

 リカードは悔しそうな顔を一瞬浮かべる。そして、驚く。


「なぜだ。なぜ、すぐにゾンビにならなかった?」


「なぜ?

 俺ほどの強化人になれば、伝染した魔法が発動するタイミングもその効果の内容も自由自在なんだよな!

 全く、大人の顔して頭の足りない森人族は嫌いだ!」


「くそっ、伝染してからすぐ効果が現れるわけじゃないのか!」


 グラディスは顎を突き出して余裕をひけらかすとリカードに言う。


「お前もここまでだね?後二回しか使えない魔法で、どうやって俺と戦うのか、楽しみだね!

 よーく見せてくれよ!」


 リカードはグラディスを睨みつける。その顔色は徐々に赤くなる。


「なめんじゃねぇぞガギ……。

 俺もな、嫌いなんだよ。

 何も知らねぇ鼻たれた青二才にナメられるのはな!

 変質高位魔法・魔剣アルケミスト!」


 リカードの手元に光が溢れる。

 グラディスは思わず目を細めてしまう。

 光の中心には棒状の魔法陣が現れる。

 その色は見れば見るほど何色にも見える。

 不可思議な色の魔法陣がルーン文字と幾何学模様を踊らせ徐々に剣の形へと変わっていく。


「なんだか知らねぇが、させるか!アナベル!」


 グラディスはアナベルに指示を出す。


「ぐっ……!生活魔法~……!裁・断!」


 リカードには見えた。

 空間がずれていく瞬間が。

 そしてその空間のずれが自分に向かってきていること。

 リカードはぎりぎりで空間の切れ目を屈んでかわした。

 だが、それは罠だった。


「かかった!光魔法・レーザービーム!」


 グラディスは拳銃の形にした手の指先からレーザーを発射する。

 レーザーはアナベルの魔法を屈んでかわしたリカードの顔を正確にとらえていた。

 グラディスは勝利を確信する。

 だが、リカードは冷静だった。

 右手に持つ剣をさっとかざす。

 レーザービームは剣に当たるとすっと消える。


「なにっ?」


「ふぅ。なんとか間に合ったか。

 やれやれ、この剣を使うのも久しぶりだな。

 不思議な剣で一度出すとその後1ヶ月は出てきてくれなくなるけどな。

 その代わり、俺の魔力を必要としないんだ。

 お前はこれからこの世の物質の不思議を目の当たりにするんだ」


 リカードの右手には見事な装飾の施されたロングソードが握られていた。

 刀身はあやしく銀色に輝き、柄は金色に輝いている。

 輝きは息をするように強まったり弱まったりしている。

 リカードは感慨深く思う。

 この剣を手にするまでの苦労を。

 エドガーさんがいなければ自分がこの剣を手にすることは無かった。


「そんなちんけな剣一本で俺に勝てると思うなよ!俺はわざわざ切られてやったりしない!」


「この剣は切らない。創造しそして変質させる、ただそれだけだ」


「どうでもいい!メイド猫娘!」


「人の話を聞くのは大事なことだぜ?」


 アナベルがゆったりとリカードの方を向く。

 体に力が籠められリカードに手を伸ばす。


「生活魔法・冷凍保存……!」


「光魔法・光弾!」


 リカードの周囲に青い氷が浮かぶ。

 アナベルの冷凍魔法。

 そして、グラディスが放った輝く光弾。

 リカードはにやっと笑う。


「変質。光を熱に」


 リカードはそうつぶやくと、持っていた剣でグラディスの魔法をぶった切った。

 光弾は白い輝きを放ちながら真っ二つに割れる。

 一陣の熱風が吹き、アナベルの作った氷が全てかき消えた。

 グラディスの光魔法が熱となり、アナベルの魔法を溶かしたのだった。


「なっ!」


「やはり、この剣は最高だ。……いくぞ、オラァ!」


 リカードは走り出す。だが、そこにアナベルが立ちふさがる。


「生活魔法・泥棒ホイホイ!」


 途端、リカードの足元がトリモチ状になる。

 リカードの足は完全に固定されてしまった。


「光魔法・流星!」


 リカードは空を見上げる。空には雲が立ち込めているにもかかわらず、いくつもの光が浮かんでいた。

 リカードは無数の光が自分に近づいてきていることに気が付いた。


「ちっ!創造・かまくら!」


 リカードは図書館の屋根に剣を突き刺す。

 突き刺した部分から四方へひびが入る。

 ひびはリカードから一歩くらいの距離で円形に走ると、そこから屋根が盛り上がる。

 何かに押し出されるかのように屋根が半球を作り出した。


「変質・屋根を鋼鉄に」


 リカードを包み込んでいた図書館の屋根の半球は、硬い鉄へと変化した。

 直後、雨あられと星が落ちた。

 鉄の半球は次から次へと落ちてくる星に抉られていく。


「鉄なんて無駄だ!俺の魔法でくたばれ!」


 グラディスの流れ星は一時の夢。

 周囲を穴だらけにして、ぴたっと降り止んだ。

 鉄でできた半球は依然、穴が開くことのなく立っていた。

 その半球の一部がガラガラと崩れた。

 だが、中は見えない。

 外壁が崩れただけだった。

 グラディスは目を細めると舌を打つ。


「くそっ、どれだけ分厚い鉄にしたんだ!これでもダメか!」


「おらよっ!アナベル、パス!」


「え~!」


 リカードは鉄の半球にこもっている間に足の自由を確保していた。

 自分が入っていた半球を持ち上げて飛ばす。

 飛んだ先にはアナベルがいた。

 綺麗に放物線を描いた半球はアナベルを覆った。


「ちょっと!出して〜!」


 閉じ込められたアナベルは内側からドンドンと鉄の半球を叩く。


「ちぃぃぃぃ!光魔法・ライトソード!」


 グラディスの手から光の刀身が現れる。

 グラディスはすでに振りかぶっている。


「くっ!」


 リカードはグラディスの攻撃を間一髪で受け止める。

 そのまま、打ち合いが始める。

 グラディスの光の剣がグラディスの剣劇に合わせて強烈にしなる。

 しなりの勢いはリカードにまっすぐ伝わる。


「とんでもない威力だ……!」


 威力が強烈すぎるため、直接グラディスの剣劇を受け止められないリカードは少しずつ下がることで手にかかる衝撃を和らげていた。

 そして、リカードには不可解なことが一つ。

 さっきからずっと秘密裏にグラディスの光を熱などに変質させようとしているのだが、まったく効果が現れないのだ。

 端的に言うと、リカードは押されていた。

 リカードはグラディスがリカードの様子を見てにやっと笑うのを見た。


「変質させられないのが不思議だろう?」


 リカードは素直に感心してしまった。

 グラディスの洞察力の高さに。


「やるな、グラディス君。そうだ、なぜそうなのかな?」


「いまさら、余裕をひけらかすな、リカード。

 俺の剣は常に更新されてるんだ。

 お前が変質させてもその部分はすでに使い終わっているというわけだ」


「なるほど……」


 リカードは後ずさりながら頷く。

 剣を変質するのはあきらめたリカードだが、その決断が奥の手を使うことを決断させた。

 グラディスに向かって強く剣を振りぬくと、そのままつばぜり合いに持ち込んだ。


「なかなか、良い洞察力だがそれをひけらかしてはダメだ。

 そして、俺に剣術で勝負を挑んだことを後悔するがいい」


 そう言うとリカードは手首をくいっとひねり、グラディスのライトソードを押さえつける。


「うっ」


「剣を使うんだったらもっと下半身を鍛えておくべきだな。

 上半身の力押しだけで勝てるほど剣術は甘くない。

 足さばきが重要なんだ」


 リカードはそう言うと急にこれまでのスピードをはるかに凌駕する勢いで斬撃を繰り出し始めた。

 グラディスはそれを一つ一つ丁寧に対処して行く。

 グラディスは思う。正統派な剣戟だと。


 リカードの剣は素直そのものだった。

 まっすぐ、まっすぐにグラディスの急所を狙って来る。

 その狙いは正確そのものであり驚くべきことではあるが、狙っている先がわかる分、とても御し易い剣だった。


 だが、その正統派な剣劇はただのブラフだった。

 リカードは急に肘を突き出す。

 リカードの肘はグラディスの鼻にクリーンヒットする。

 グラディスは鼻を押さえて思わず後ずさりする。


「ぶっ……、てめぇ!汚ねぇぞ……!」


「あ?これはうちの流派特有のものだ。何も汚くねぇぞ」


 リカードはこの隙を逃すような間抜けではない。

 後ずさりしたグラディスをさらに追い詰める。

 それからさらに逃げるようにグラディスは後ろへ大きく飛ぶ。

 だが、グラディスは驚く。

 リカードは磁石のようにグラディスとの距離を変えない。


「その程度で俺から逃げられると思うなよ?」


 グラディスは鼻血を乱暴にふき取るとライトソードを振りかぶる。

 それに合わせてリカードも振りかぶる。

 二つの剣は再度、つばぜり合いに……ならなかった。

 グラディスはあるはずの剣と剣がぶつかり合う感覚が無く、たたらを踏む。

 そして、自分のライトソードを見て驚いた。

 リカードの剣を受け止めた場所でソードそのものが短くなってしまっていた。


「何だこれ!」


 だが、リカードの攻撃は止まらない。

 次々と繰り出される。

 そして、グラディスはそれをライトソードで受け止める。そのたびに彼の剣は短くなって行った。


「なぜ!俺の剣が切れるんだ!」


「なぜだろうな?」


 グラディスは短くなった自分の剣を消すと、腕をブンとふって下に向ける。


「光魔法・ライトレイピア!」


 グラディスは別の魔法を発動させる。


 ライトソードと長さは同じだが太さがとても細い光の剣が現れる。

 グラディスは自分の剣を確認する暇もなく走り出す。

 リカードとの距離を取らなくてはならない。

 自分の武器をこうもたやすく切ってしまうような相手と戦った経験を彼は持ち合わせていなかった。


「逃げるな!」


 リカードはさっとグラディスの前に躍り出る。グラディスは唐突に理解する。


「くそっ!

 ライトソードに光ではなく、俺の光魔法そのものを変質させてライトソードが短くなるように設定したってことだな!

 器用なことしやがる!」


「ほう、なかなかやるじゃないか」


 リカードはそう言いながら斬撃を繰り出す。

 正確にグラディスの喉を狙う一撃であり、常人であれば間違いなく一撃で首をはねられる鋭い斬撃だった。

 だが、そんな斬撃を向けられながらグラディスは余裕で笑う。

 グラディスはぎりぎりで上体を逸らすことでリカードの斬撃をかわす。


「言い忘れてたけどな。まだ隠していることはある。

 悪いが俺の剣技はな。光魔法と合わせて使うことに合わせられてるんだ。

 光魔法・自在光弾」


 リカードは急に背後から何かが迫る感覚がして、後方に飛び上がる。

 リカードはさっきまで自分がいたところに光の玉が飛んできているのを目撃する。

 光の玉はグラディスのもとに戻ると、彼の周囲を衛星のようにくるくる回り始めた。


「六つか。ある意味七刀流というわけだな。

 これは体得に相当苦労したんだろうな。

 だがな、いいか、青年。

 刀は多ければいいというわけではないってことだ」


「ほざけ!」


 グラディスの一斉攻撃が始まった。

 教えてやるよと上から目線で言ったものの、リカードは苦戦することをわかっていた。

 足さばきが変に感じたのはこの光の玉を使うことを前提に動いていたから。

 そして、それが普通の剣技の時に出てしまうほど身についていたという事実。

 その二つの事実だけでもグラディスが熟練の剣術使いであることがわかる。


 次々と繰り出されるグラディス本人の攻撃、そして光の玉の攻撃にリカードはグラディスの攻撃をかわすことに精一杯になってしまった。

 六つの光の玉は常にリカードの死角を突くように動き、それを防ごうとすれば、すかさずグラディスが剣劇をお見舞いしてくる。

 ここまでの攻撃をたった一本の剣ではじき、受けきってきた剣の達人であるリカードでも、読み切ることが難しくなっていた。

 背後からの一撃が背中をかすめる。


「くっ!並大抵の訓練はしてないようだな……!」


「すごいな、リカード!俺の攻撃をここまでかわしたのは君が初めてだよ!」


「そりゃどうも……!」


「でも、ここまで追いつめられるとそのアルケミストとかいう剣で俺の魔法を変質させる余裕もないみたいだね。

 さて、そろそろ決着つけなきゃね。本気で行く。かわせるかな?」


「お手柔らかに頼むぜ……!」


「光たち!行け!」


 リカードの周囲にまとわりついていた光の玉が一斉にリカードを襲う。


「うぐぐ……!」


 リカードはできる限りさばいているものの、どうしてもよけきれない光の玉が出てきてしまう。

 次々と体に傷がついていく。

 リカードは痛みをこらえ、致命傷になりそうなものだけは逃さず弾く。


「ほら、隙あり!」


「ぐあああああああああああ!」


 リカードの右肩を光弾が貫通する。

 リカードは左手だけで剣を振るうことになってしまった。


「ここまでだな、リカード、あきらめろ」


 グラディスが走り込んでくる。

リカーーーード!!

ここのところ叫んでばかりです……笑


読んでいただきありがとうございます!!

お楽しみいただけていると、とっても嬉しいです!!


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