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第五幕 急転

 いくら秋とはいえ流石に暑い。

 青春は燃える炎だ、熱くなれ!!なんて言っている人もいたけれど、こうも熱いとそんな気にもならない。

「あーあ。彼女とか欲しーな」

 岡坂がそんなことを呟いている。

「俺には妹がいるから大丈夫だけどな」

 そんな冗談を言ってみると

「もういっそお前の妹をくれよ」

 なんて言ってきやがった。

「やるかよ」

「にしてもお前が羨ましいよ。あんな可愛くて頭のいい妹がいるなんて」

(だろ?俺だけの最っ高の妹だぜ!!)

 まあそんなことは口が裂けても言えないが。

「フフッ」

 おっ…と。少し笑ってしまったようだ。

「なんだなんだ?兄妹では結婚できないんだぞ?」

「するかよ!俺達は只の兄妹だ」

「まあいいけどよ」

 そういう割には岡坂の顔がニヤけ過ぎている。

 微妙な雰囲気になってしまったので話を変える。

「…そういえばこの前雪原がさー、

 「康ちゃん危ない!!足元に蜘蛛が」

 とか言ってきたからあいつを見たら寝てる猫の尻尾踏もうとしてる訳。だから危ないって一声かけたら、

 「うわあぁ」

 とか悲鳴あげてて、それが面白くて面白くて」

「康ちゃ―ん。大変だよ」

「おう雪村!噂をすれば。丁度お前の話してたんだ。こっち来いよ」

「???何の話してたの?」

「この前お前が猫を踏みかけて……」

「いぃやあぁ、やめてえぇ。あの話はしないって言ったじゃん」

「いやあ、でも本当面白くって」

「…ってこんな話してる場合じゃない!康ちゃん大変だよ。妹ちゃんが、結美ちゃんが急に倒れて」

「何だと!?どうして?朝は飯作りながら、フライパンなんか持って起こしに来りとか、あんなに元気だったのに……」

「保健の速川先生も解んないみたい。とりあえず早く保健室に行こう。」

 俺たちは保健室に急いだ。

  ガラガラッ

「速川先生、結美の様子は!?」

「結美ちゃんなら本当にキツそうだったから救急車で病院に運んでもらったから、後で海鹿病院にいってあげなさい」

「分かりました。ありがとうございました」

 雪原も珍しく真剣な眼差しだ。岡坂は顔面蒼白でガクブルしているが。

 俺は焦りと混乱で、倒れてもおかしくない様なメンタルなのに、意外と冷静だった。

 とりあえず午後の授業をこなし、俺たちは病院へ向かった。


病院に着き、ドアを開ける。

 ガラッ

そこには二人の白衣を着た人が立っていた。それは医者というより科学者といった方がいい風貌の男と妹の主治医らしき男だった。

 「妹は、妹の容体は!?」

 俺は医者に尋ねたつもりだったが、答えたのは科学者風の男だった。 

「妹さんが患っている病は、いや、呪いは今の人間社会の科学で解明できるものではない。

「私の見当違いかもしれないが、妹さんが罹っているのは……」

「すみません。まずどなたでしょうか?」

「…!!おっと、申し遅れました私化け物研究会所長…”元”所長、米沢大地と申します。妹さんは高熱と吐き気でとても危険な状態です。

「しかし妹さんの病は現代医学で解明されている類のものではありません。この呪いは、この街に存在するであろう悪魔によるものです。故に、治療法は存在しません。つまり私に出来る事は何もありません」

 隣にいた妹の主治医も無言で頷く。

「どういうことだよ!!」

俺はそいつの胸倉を掴む。

「お前、呪いなんてあるわけねーだろ。とっとと妹を治しやがれ」

 俺は米沢という男に殴りかかる。

「康ちゃんやめて!!」

「やめろ!!康!」

 二人に取り押さえられる。

「康、おまえちょっとは落ち着……」

「おっ…おう、すまねえ岡坂。……えっと、米沢さん、取り乱してしまってすみません。

「それで、結美が助かる方法はないんですか?」

「すまないが康くん、僕にはどうにも。神頼みでもするしかないんだ。」

(康くんには悪いがあの化け物と接触してきてもらうことにしよう)

「でも、そんな」

「そういえば康ちゃん、この街に伝わる悪魔と言えば御雅神社に祀られる神と関わりがあるって聞いたことがある」

(それはそうだ。あの”悪魔”とはもともと”神”の成り損ねだったハズだからな)

「そうは言ってもただ闇雲に神社に言ったって…」

「だが私の見込みでは、十中八九あそこに何かあると思うんだ」

「まあ確かにあそこは人間は立ち入り禁止だし、行ってみる価値はありそうだな」

 岡坂も言う。

 俺も他に方法はないんだと実感し、神社へ向かうことを決めた。

「先生、妹をよろしくお願いします」

ガラッ

俺はドアを開けて廊下へと駆け出す。

「康」「康ちゃん」

 雪原と岡坂が後を追ってくる。

 俺は神社へと急いだ。


 病院から近いこともあり、社にはすぐに着いた。

 タッタッタ

 参道の階段の中心を構わず駆け抜ける。

 数枚の五円玉を投げ入れ、中へ向かって叫ぶ

「おい、ここに神なんてものがいるなら今すぐ出てきてくれ」

 数秒後、中から何かが現れる。

「こんなクソ暑いのに元気だねえ。でも騒がしいからもうちょっと静かにしてくれないかなあ?」

「おう、すまない。お前がここの神か?」

「そうだとも。私はこの神社の神だ」

 うさんくせえ

 真っ先にそう思った。だが関係者すら立ち入り禁止のこの建物の中から出てきたのだから、きっとそうなのだろう。

 そこで俺は神に尋ねてみた。

「俺の妹は今危篤なんだ、しかもそれはこの街に伝わる悪魔の呪いに罹ったせいらしい。俺も半信半疑だったが、ほかに方法が無いからな、その病の治し方を知らないか?知ってるなら教えてはくれないか?」

「うーん。まあいいよ。その代わりに条件がある……というかこうするしかないんだけど。まあとりあえず、街の奥、籠絡の森にその悪魔がいるはずなんだ。まあ倒すだけじゃあ治んないけど、まあ倒してきて貰おう」

「お前頭おかしいだろ。俺は只の中学生だぞ。悪魔なんて倒せる訳…」

「まあ最後まで聞いてよ。それなりの力と武器は君達に授けよう。

「それでも命を落とすかもしれない。だが悪魔を倒してくる他に君の妹を助けるすべはないんだよ」

「でも、こいつ等を巻き込むのは……」

「大丈夫、僕にも考えがある。人の望みをかなえるぐらいちょろいものさ。望むなら、凛君には死んだ両親に一時間だけ会わせてあげよう。浩二君には、死亡した義父と母親を連れてきてあげよう。」

「そんなことまでできるのか?」

「出来るとも。僕は神だからね。そしてそれぐらいアレは僕にとっても迷惑だからね。」

「康くんの腹は決まっているようだが、君達はどうかな?」

「康ちゃん、僕はやるよ」

「俺も断る理由はない」

 二人は迷わずそう答える。

 そして神が、

「それじゃあ決まりだ。ええっと、動くのが得意な康くんには……これ」

 と言ってきて大きなものを俺に渡した。

 それは身の丈ほどある大剣だった。ほかの二人も弓と杖をそれぞれ受け取っていた。

「でもこんなに準備万端なら、何故自分で殺らないんだ?そっちの方が、俺なんかより楽にやれるだろうに……」

 ふと浮かんだ疑問を尋ねてみる。

「いやあ、あいつのお陰で僕はこの社から出ることはできないんだ。という訳で宜しく。あっあと森には未発見の動物とか多いと思うから気は緩めないように。

「ついでにその悪魔の”角”取ってきてねー」

 そして俺達の過酷な戦いが始まった。


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