第二十三話 双竜
「……む?」
そして、その咆哮はブランに届いていた。
「どうした、ブラン?」
「おぬしは聞こえなかったのか、咆哮が」
「……ああ、確かに聞こえたが。それがどうかしたか?」
「儂を呼んでいる。そんな気がするのだよ。……向かっても構わないか?」
「別に問題ない」
そうして進路を変更するブラン。
きっと昔の彼ならば、人間を下に見て勝手に進路を変更していたことだろう。
しかし、今は彼を自分と同位に見ている。だからこそ一度質問し、同意を得た。
ブランの進路の先には、一匹の竜が居た。
「まさか、シンギュラリティの中に彼奴が潜んでいたとはな……。儂も想像できていたことだったろうに」
「どういうことだ、ブラン。お前だけで自己完結させていないでさっさと答えろ」
「……簡単に言えば彼奴の名前はノワールだ」
黒いドラゴンが、翼をはためかせてその場に留まっていた。
「ノワール……」
「儂が再生を司る竜であるならば、彼奴は破壊を司る竜。そして、お互いはお互いに惹かれ合い、疲弊するまで戦い合う運命にある。……降りろ、ラインハルト。ここから先はドラゴン同士の戦いだ。お前はお前の戦いをするが良い」
「待て、どういうことだ!」
「さらばだ!」
「ブラン!」
そして、ブランから無理矢理落とされた彼は雑木林の中へと落ちていった。
「さあ、始めようぞ」
そうしてブランとノワールはお互いを見合った。
◇◇◇
「対象の回収を完了致しました。如何なさいますか?」
「現在は何処に?」
「地下牢に閉じ込めております。傷が治っておらず、眠りについておりますが」
「ほとぼりが冷めたら記憶処理をしておけ。……いいな?」
「……承知しました」
陛下と秘書の会話は、冷たく終わりを告げた。
◇◇◇
『白と黒の竜が邂逅したか。ここまでは予定通り』
『然様。後はどのように進むかは、彼奴の予定がうまく行けば良い話』
『今更悩むこともあるまいて。彼奴らの動きを見るに当たっては、そうこの計画を阻害することも無かろう』
『確かに、それもその通りだ』
『すべては再生の卵を孵化させるため』
『すべては再生の巫女を蘇らせるため』
『すべては破壊の竜を封じ込めるため』
『そう、すべてはアルシュの名の下に』
◇◇◇
破壊と再生の竜の戦いは七日間続いた。
決着は大きな爆発による――互いの消失。
テスラーとマギニアは甚大な被害を負い、終戦を迎えることとなった。今回こそは世間の評判を鑑み、ミスティルカ商業兵団とアブソリュート報道局の両陣営からの妨害は無かった。
そうして、三ヶ月の時が流れた――。
第三章に続く。




