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Dragoon→Dragon Knights  作者: 巫 夏希
第二章
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第十一話 交渉

 時間は少しだけ戻り、ブランとラインハルトが小屋の前に到着した頃に遡る。


「……おい、ブラン。この小屋、小さくないか?」

「何だ。そんなことも知らないのか。ドワーフは人間よりも小さい身体の種族だぞ。だからこそ、人間よりも小さい領域で生活できるのでは無いか?」

「成程。そう言われると、そうかもしれない」


 少し膝を曲げて、ドアをノックする。

 しかし、反応は無い。


「……住んでいるよな?」

「流石にそこまでは把握できない。残念ながらお前に授けた予測の力も壁に遮られてしまえば何も見えやしないからな」

「何だよそれ、ポンコツじゃないか」

「ポンコツとは何だ。無いよりましだろうが」


 ゆっくりと扉が開いたのを見て、ラインハルトはそちらを見る。


「おっ。誰か居たようでよかった。おおい、すいません。ちょっと話したいことが――」

「な、何が望みだっ。金か、食べ物かっ。命だけは助けてくれっ!」

「は?」


 突然そんなことを言われてしまったので、ラインハルトは口をぽかんと開けたままだった。

 対して、少年――ラルタスは告げる。


「……あ、あれ? もしかして、命か! ドワーフの技術がほしいのなら、僕だけを連れて行け! 僕は技術を持っているが、彼女は……ソフィーは技術力を持ち合わせていないからっ」

「あー、ちょっと待ってくれ。ちょっと落ち着こうか。ちょっと話をしようか」

「何だと、もしかしてそれじゃ不満か。頼む、お願いだ、許してくれ」

「……こりゃ、話が通じないようじゃのう」

「落ち着いてこちらを傍観するんじゃなくて、少しは助けてくれよ」


 ブランに言うラインハルトを見て、さらにラルタスは慌てる様子を見せる。

 見ていてやっていられなくなったソフィーは、ラルタスをなんとか押さえ込み、話を始める。


「ええと。つまり……、あなたは何を望んでいるんですか?」

「よかった。なんとか話の通じる人が居た。いや、人じゃなくてドワーフか?」

「そうですね。……とにかく、中に入ってください」

「中に入れるのか?」

「お兄ちゃん。見た感じ、彼は敵ではなさそうよ。とにかく話をしてみて、判断しましょう。だから、中に入れるわ。……いいわね?」


 その言葉に、ラルタスは否定の意思を持つことはできなかった。

 ソフィーは強い意思を持って彼に否定の意思を持たせないようにしていたのかもしれない。

 いずれにせよ、このままでは何も進まない。だったら一歩でも、後退でもいい、とにかく動く手段を見つけなくてはならない。

 そのための、対話。

 ソフィーが考えたその解決案は、けれどもラルタスには伝わることが無くて、しかしながらそれは相手たるラインハルトにも僅かながら通じていることだった。


「……とにかく、こちらも話ができるならば有難い。実はお願いしたいことがある」

「何でしょうか。先ほども言ったとおり、技術力を持ち合わせているのは、兄です。妹である私は技量を何も持ち合わせていませんから、できることなら一人でできることをお願いしたいのですが」

「……ああ。きっとできるはずだ。ええと……シンギュラリティの修理なんだけど、できるかな?」

「シンギュラリティ!」


 その単語だけを抜き出して、目を輝かせるラルタス。

 どうやらラインハルトが告げたその言葉に、興味を示した様子だ。


「……シンギュラリティって、あのテスラーが開発した人型兵器だよね? 破壊されても直ぐにテスラーの軍兵器回収ユニットが回収を開始するためか、誰もその技術を解析できていないという、あの! まさか僕が一番最初に触れる時がやってくるなんて。ああ、神様! 今日は不幸な日なんて言おうとしてすいません、今日は素晴らしい日だ!」

「あ、あの……。ちょっと話を。落ち着いて、話しませんか」

「ああ。すいません。ちょっと慌ててしまいました。僕は見てわかると思うのですが、技術には目が無くて……。そしてシンギュラリティは、あなたたちには知らないとは想いますが、テスラー以外には一切外に出ていない謎の技術、まさに技術的特異点(シンギュラリティ)なんですよ。けれど、テスラーは絶対に外にその技術を出したがらない。戦争において負ける可能性がありますし、わざわざ開発した技術を輸出しようなんて考えませんからね。まあ、我々みたいな『変わり者』も居ますが、それはそれとして」


 お喋りなドワーフだな、とラインハルトは思った。

 しかしそれは間違いでは無く、ラルタスは自分の興味の持った分野になると、途端に饒舌になる。それはソフィーも知っていることであったし、それは彼にとってマイナスの要素であることも間違いでは無かった。なぜなら饒舌になると彼は猪突猛進型となり、いわゆる周りが見えなくなってしまう。だからそれをコントロールできる存在が居なければならず、それが彼においては、ソフィーだった。


「……お兄ちゃん、いい加減にして。とにかくまずは自己紹介から話しましょう。私の名前はソフィー。そして彼の名前はラルタス。まあ、もう気づいていると思いますが、私たち二人は兄妹です。家族は、それ以外に居ません。唯一の肉親と言ってもいいでしょう」

「ほかの家族は、居ないのか」

「ええ。母が数年前に亡くなりまして、それが最後です」


 淡々と、ソフィーは告げた。

 それを聞いたラインハルトは、そうか、とだけ言って、咳払いを一つし、


「それじゃあ、こちらも自己紹介といこう。俺の名前はラインハルトだ。よろしくお願いするよ、ラルタス、ソフィー。……それで、先ほどの話だが」

「まずは、見させていただけませんか。実物を」


 一回落ち着いたから冷静な判断ができているのか、ラルタスははっきりと告げた。

 ラルタスは眼鏡の位置を調整して、


「別に信じていないというわけではありません。けれど、やはり、実物を見ないとなんともいえなくて。実物を見て直すことができるかどうかを判断する必要が出てくると思います。ですから、まずは実物を見せていただけますか」

「いいよ。場所は、ちょっと遠いから、ブラン……あのドラゴンに乗っていく形になるがそれでも構わないか?」

「えっ」


 小さく声を上げたのはソフィーだった。


「もし、ドラゴンに乗るのがいやなら歩いて行ってもいいのだが、やはり少し遠くてな……。徒歩で行くよりかは、ドラゴンの方が一瞬で済む。だめかな?」

「いいですよ、こちらとしては」

「お兄ちゃん、ちょっと」

「何だよ、ソフィー。直ぐに終わることじゃないか。ちょっと我慢していればいいんだよ」

「そうだけれど……」


 何かいざこざは起きているようだが、とりあえず現場に向かってもらうことは決まった。

 少しほっとするラインハルトだったが――彼は、まだ知らない。

 彼も、ソフィーも、ラルタスも知らない。テスラーが隠す真実を。



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