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第94話

 週末、ハチマルの復活を祝って宗哉がパーティーを催してくれた。


 宗哉の家で行うホームパーティーだ。

 秀輝や小乃子といったいつものメンバーだけでなく秀輝の親しい友人である浅井や中川たち男子に委員長たちの友達である女子、クラスの3分の1ほどが参加した楽しいパーティーだ。

 一流シェフが腕によりを掛けて作った料理が並びサンレイとガルルンと小乃子だけでなく普段冷静な委員長まではしゃいでいる。


「旨すぎるぞ、取り敢えず1つずつ全部食うぞ」

「味見がお、全部食べて美味しいヤツを更に食べまくるがお」


 皿を持ってサンレイとガルルンが走り回っている。何十種類とある料理を全部食べてみるつもりだ。

 委員長たちと談笑していたハチマルが溜息をついた。


「まったく……余りみっともない真似をするでないぞ」

「まぁまぁ、サンレイちゃんたちがはしゃぐのもわかるわよ」


 サンレイを擁護する委員長の横で晴美も大きく頷いた。


「うん、全部美味しいもんね」

「んじゃ、あたしはサンレイとガルちゃんのお供してくるよ、1人じゃハズいけどサンレイと一緒なら遠慮なく食べられるからな」


 じゃあと言うように軽く手を上げると小乃子がサンレイとガルルンを追って行く、


「あの子は……サンレイちゃんと同レベルなんだから」


 呆れる委員長を見て晴美とハチマルが楽しそうに笑う、


「気に入って貰えて嬉しいよ」


 宗哉がトレーに乗ったアイスを自ら持ってきて勧める。


「ハチマルさん、このアイスを食べてみてよ」

「宗哉自ら持ってくるとは自信有りじゃな」


 ハチマルはトレーに並ぶアイスのカップを1つ取るとスプーンで掬ってその場で食べる。


「ほぉぅ! このアイスは最高じゃな、余計なものは入っておらん本物のアイスクリームという感じじゃ」


 この日のために特別に作ったというアイスクリームを食べて感嘆の声を上げるハチマルを見て宗哉が爽やかに微笑む、


「今朝搾った新鮮な牛乳を空輸してパティシエに一から作って貰ったものだからね」


 横からサンレイが手を伸ばしてカップに入ったアイスを取る。


「ハチマルは起きたばかりだぞ、色んなアイスを食いまくってるおらが審査してやるぞ」


 偉そうに一口食べたサンレイの顔がパァ~ッと明るくなっていく、


「凄ぇ旨いぞ、これを毎日食えるなら宗哉と結婚してもいいぞ」


 大きな声で言うサンレイを見て宗哉が声を出して笑い出す。


「あはははっ、結婚は嬉しいけど毎日は無理だな、いくら僕でも贅沢すぎるよ、今日みたいに何かあった時ならまた御馳走するよ」

「じゃな、旨いものでも毎日食えば有り難みが無くなるというものじゃ」


 呆れ顔で言いながらハチマルもアイスを食べる手が止まらなくなっている。

 2人の様子を見て小乃子もアイスを1つ取った。


「毎日食えば慣れちゃうんだよな、美食家なんて御馳走を食い飽きて最終的にゲテモノに行くんだぜ」

「そうがお、偶に食うから御馳走がお、少し食べるから美味しいがお」


 ガルルンはアイスには余り興味は無いのか肉の塊が乗った皿を持っている。

 アイスをスプーンで掬って一口食べた小乃子の動きが止まる。


「マジでうめぇ~ 」

「そんなに美味しいがお? 」

「ガルちゃんも食べてみ」


 スプーンで掬うとガルルンの口に放り込む、


「がわわ~~ん、前言撤回がお、このアイスはバケツいっぱい食べたいがお」


 宗哉が持っているトレーからガルルンが奪うようにアイスを取った。

 そこへ、男子たちと話をしていた英二と秀輝がやって来る。


「少しだけってガルちゃん肉食いまくってるからね」


 弱り顔の英二にガルルンが振り向く、


「チーカマとお肉は別腹がお、女の子は肉汁に目がないがお」


 美味しそうにアイスを食べていたハチマルが手を止める。


「女の子は甘いものに目がないのじゃ、肉汁に目がないのはボケ毛玉だけじゃ」


 ハチマルはガルルンのことをボケ毛玉や駄犬と呼ぶ、


「がふふん、ガルは女の子と犬のハイブリッドがお、だから肉汁と甘いものに目がないがう、ガルはできる女がお」


 自慢気に鼻を鳴らすガルルンの横でサンレイがスプーンでアイスを突きながら口を開く、


「バカとボケのハイブリブリだぞ」

「ハイブリッドな、違うものを組み合わせるって意味だ」


 言いながら英二が紙ナプキンでサンレイの口周りを拭いてやる。

 色々食べ回ってきてソースやクリームで口の周りがべちゃべちゃだ。


「ふふふっ、みんな楽しくやっておったようじゃな」


 優しい顔で笑うハチマルの向かいで晴美が訊く、


「ハチマルさん来週から学校に通うんだよね」


 英二の後ろで秀輝が嬉しそうにニヤつきながら続ける。


「またハチマルちゃんと一緒に学校に行けるなんて……やる気出てきたぜ、体育の授業とか楽しみだぜ」

「顔がヤラしいぞ、秀輝は体育以外を頑張れよな」


 からかう英二の横でハチマルが顔を顰めた。


「それなんじゃが学校は3月からじゃ、それまで四国に戻らんと行かん」


 英二の顔から笑みが消えた。


「 ……俺のために無理して出てきたんだな」


 ハチマルが横から英二の顔を覗き込む、


「そうじゃ、じゃが勘違いするなよ、お主のためという事は儂は元よりサンレイのためでもあるんじゃぞ、儂らはお主の守り神じゃからな」


 口を拭いてもらった英二の手をサンレイが握り締めた。


「そだぞ、英二がいなかったらハチマルもおらも人の姿でいられないぞ、英二が依り代になってるからみんなと一緒に遊べるんだぞ、だから英二を守ると言うことはおら自身を守ってるって事だぞ」

「依り代か…… 」


 複雑な表情の英二の後ろで秀輝が声を大きくする。


「初耳だぜ、英二が居ないとサンレイちゃん出てこれないのか? 」


 秀輝だけでなく宗哉や委員長たちも訊きたそうにハチマルを見つめる。


「少し違うのぅ、出てくることはできる。じゃが精々3日程じゃ、3日出れば一週間ほど霊気を溜めんと次に出てこれん、じゃが英二がおればずっと出ていられる。英二が依り代となり儂らを人の姿で留めてくれるのじゃ」


 サンレイが持っていたアイスを食べながら続ける。


「御山の近く、英二の祖父ちゃんの家付近なら何時でも出て行けるけどな、離れると無理だぞ、それが英二が居ればできるんだぞ、だから英二を守るのはおらたち自身を守るのと同じだぞ」


 隣で聞いていたガルルンが驚いた様子で振り向いた。


「そうだったがお、だから四国の山以外では直ぐに消えてたがう、人間が丁髷してた時に堺の町を食い荒らし回ってると急にサンレイとハチマルが居なくなったがお、ガルだけ悪者扱いされて追い掛け回されたのは3日以上出てこれなかったからがお、意地悪されたと今でも思ってたがお」


 ガルルンの顔を見つめてサンレイが話を始める。


「あぁ……思い出したぞ、でもあれは違うぞ、町の連中が呪術師を雇ったからガルルンを囮にしておらとハチマルは逃げたんだぞ」


 ハチマルも思い出したのかポンッと手を叩く、


「おぉ、あの時の事じゃな、毎月のように町を荒らしておったら連中、陰陽師や呪術師を何十人と雇って大変だったのぅ」

「3日以上出てこれないから帰ったのじゃなかったがお? 」


 子犬のように首を傾げるガルルンの頭をハチマルがポンポン叩いた。


「よう思い出してみぃ、3日でなく2日じゃ、あと1日は平気じゃ、じゃが陰陽師や呪術師が出てきおったから儂らは先に帰ったのじゃ」

「がわわ~~ん、やっぱり意地悪されてたがお、ガル追い掛け回されたがお」


 ガルルンが泣き出しそうな顔で二人を見つめた。


「悪かったのぅ、じゃがガルルンなら大丈夫じゃと思ったから任せたんじゃ」

「任せたがお? ガルに? 」


 不思議そうに訊くガルルンを見てハチマルが大袈裟な口振りで続ける。


「そうじゃぞ、儂とサンレイは食い過ぎて戦えんかったのじゃ、じゃからガルルンに任せたのじゃ、ガルルンなら儂らを守ってくれると思って先に逃げたのじゃ」


 ニヤリと悪い顔をしてサンレイも口を開く、


「そだぞ、ガルルンは強いぞ、おらよりも強いぞ、だから任せたんだぞ」


 ガルルンの顔に笑みが広がる。


「がふふん、呪術師の百人や二百人ガルは怖くないがお、逃げ回ってあちこち擦り剥いたけど平気がお、ガルはできる女がお」

「そうじゃろ、ガルルンはできる女じゃから大丈夫と思って安心して儂らは先に逃げたんじゃ、ガルルンの御陰で儂らは無事に逃げれたんじゃぞ」

「そだぞ、ガルルンなら少々無茶しても死なないぞ、だから囮にピッタリだぞ」


 煽てるハチマルの横でサンレイが無茶苦茶言っているがガルルンは気が付かない。


「がふふふっ、ガルに任せるがお、ガルはできる女がお」


 満面に笑みを湛えてガルルンが自慢気に鼻を鳴らした。

 アホの子だ……、英二だけでなく秀輝や委員長たちも哀れむような目でガルルンを見ている。

 傍で聞いていた委員長が晴美と顔を見合わす。


「何気に酷いわね」

「うん、ガルちゃんかわいそう」

「完全に二人の玩具だな」


 小乃子が何とも言えない表情で呟いた。

 ガルルンの口の周りも紙ナプキンで拭いてやると英二がハチマルに向き直る。


「話を戻そう、3月まで四国に帰るんだな、その後はずっと居られるんだよな、みんなと一緒に学校で遊べるんだよな」


 英二だけでなく秀輝たちも不安気にハチマルを見つめる。


「そうじゃな、無理したと言ってもサンレイが持ってきてくれた豆腐小僧秘伝の三百年高野豆腐の御陰で数年が数ヶ月に縮まっておる。元々5月頃には復活できておった。それが3ヶ月程早まっただけじゃ、最終調整をしておったところを出てきたのじゃ」

「やっぱり無理をして出てきてくれたんだな」


 心配顔の英二の頭をハチマルがポンッと叩いた。


「最終調整を切り上げたからの、完璧ではない、じゃから山神である儂の姉と妹に色々頼んである。それでほぼ完全に力を使うことができるじゃろう、その為にちょくちょく四国へと戻ることになるじゃろうがな」

「ごめん、俺がもっと強かったら……ハチマルやサンレイに心配を掛けてばかりだ」


 頭を下げる英二の横でアイスを食べていたサンレイが手を止める。


「英二は充分強いぞ、雑魚妖怪なら倒せるぞ」

「そうがお、霊力は物凄く大きいがお、練習すればマジで強くなれるがお」


 ガルルンを見てハチマルが頷く、


「そうじゃな、力の使い方は儂が教えてやる、焦らずに確実に強くなっていけばよい」


 庇ってくれた二人を見て英二が涙ぐむ、


「サンレイ、ガルちゃんも……うん、強くなるよ、もっと強く、だから頼んだよハチマル、どんな修業でもするから俺を強くしてくれ」

「うむ、よう言うた。儂に任せておけ、じゃが儂は厳しいぞ」

「うん、覚悟はできてる」


 力強く頷く英二を見てハチマルもサンレイもガルルンもみんな笑顔だ。


 パーティーが終わるとその足でハチマルは四国へ帰った。

 もう少し調整して3月から学校へ通うとのことだ。

 心配掛けまいとして言わないがそれなりに無理をして出てきたのだろう、英二は精一杯の笑顔で見送った。



 月曜日、登校すると挨拶代わりに秀輝が英二の背をドンッと叩く、


「今年のバレンタインは最高だったぜ、サンレイちゃんとガルちゃんにチョコは貰えるし、ハチマルちゃんは復活するし、なぁ英二」

「痛いからな、最高か……確かにハチマルが帰ってきたのは最高だな」


 痛そうに体を捩りながら英二が続ける。


「でもさ、バレンタインとしては最悪だよ、ハマグリ女房のチョコ食べた奴らに襲われるし攫われそうになるし」


 そこへ宗哉がやって来る。


「そうだね、ハチマルさんが来てくれなかったら英二くん連れて行かれてたよね」

「気絶してたから覚えてないけど後で話しを聞いてゾッとしたよ」


 ブルッと震える振りをした後で宗哉の後ろに居るララミとサーシャを見て英二が安心顔で微笑んだ。


「よかった。二人とも治ったんだね」

「ハイ、記憶回路にはダメージを受けていませんデスからサービスセンターで予備のボディーに交換して貰いましたデス」

「全交換になりましたからチェックなど面倒でしたがどうにか直りました」


 笑顔でこたえるサーシャの横でララミが無表情で言った。


「サーシャ、ララミ、二人ともありがとうな」


 頭を下げる英二を見てララミが弱り顔で止めてくれと手を振った。


「英二さん頭を上げてください、命令に従っただけです。私たちは御主人様を守るのが役目ですから」

「そうですよ、役目を果たしただけデスので礼はいりませんデスよ」


 英二が安堵する。ララミが無表情だったので怒っているのかと思ったのだ。

 ロボットなので感情も全てプログラムされているのはわかっているが人とそっくりに作られているのでどうしても意識してしまうのは仕方がない。


 そこへ委員長たちを引き連れてサンレイがやってくる。


「礼ならおらに言うんだぞ、おらの愛が英二を救ったんだぞ」

「がふふん、できる女のガルが英二を守ったがお、だから英二はガルと結婚するがお」

「礼なら何十回と言ってるだろ、アイスも毎日奢らされてるし……ガルちゃんは結婚とか無茶苦茶言うのは無しだからね」


 辟易した様子の英二の後ろから秀輝が顔を出す。


「バイトの店長に義理チョコ渡したら大喜びしてたぜ、手作りチョコなんて貰ったの初めてだって浮かれまくってたぜ、ホワイトデーはケーキでも贈るってさ」


 サンレイと並んでガルルンもニヤリと口元を歪ませる。


「にゅひひひっ、チョコでケーキが釣れたぞ」

「がへへへっ、わらしべ長者みたいがお」

「二人とも思いっ切りゲスい顔してるからな」


 弱り顔の英二の後ろで宗哉が楽しそうに口を開く、


「サンレイちゃんとガルちゃんに手作りチョコなんて貰ったら浮かれるのは仕方ないさ」

「だな、義理チョコ食べて旨かったから本命は勿体無くて冷蔵庫に仕舞ってるぜ、テスト勉強する時にでも食べたら頑張れるような気がするからな」


 嬉しそうな笑みを湛えたまま秀輝が前に出てくる。


「委員長の愛の籠もった本命チョコも大事に食べるからな」


 楽しそうな顔で話しを聞いていた委員長が慌ててこたえる。


「何言ってんの? 本命じゃないからね、伊東は直ぐに調子に乗るんだから」

「えぇ~~、本命じゃないのかよ、委員長のためなら俺何でもするぜ」


 戯ける秀輝を見て委員長が頬を赤くする。


「まぁ、今まで一緒に居て伊東のことは認めてるわよ、だから本命じゃないけど候補くらいには考えてあげるわよ、義理よりは上だから安心しなさい」

「おおマジか、他の奴らよりは希望があるって事だな」


 満更でもない様子の委員長を見て秀輝が声を大きくして喜ぶ、

 隣りにいた小乃子が声を出して笑い出す。


「あははははっ、菜子に惚れると面倒だよ、口煩いし、怖いし、恋人って言うより小姑って感じだよ」


 真っ赤になった委員長が話を逸らす。


「何言ってんのよ、人のことに構ってないで自分のことを心配しなさい、ハチマルに高野くん取られちゃうわよ」

「ちょっ違うよ、何言ってんだよ、あたしは英二のことなんか何にも思ってないからな」

「久地木さん真っ赤だよ」


 慌てる小乃子を晴美がからかう、


「ちょっ、篠崎まで何言ってんだよ、そんなんじゃないからな」


 耳まで真っ赤になると小乃子が俯いて黙り込んだ。

 ちらっと小乃子を見てから委員長が晴美に意地悪顔を向ける。


「篠崎さんは旨くいってるわよね、佐伯くんと名前で呼び合う女子は篠崎さんだけよ」

「あっ……うん、宗哉くんは優しいから………… 」


 頬を染めながら晴美が続ける。


「でも良かった。委員長と久地木さんと別々で……喧嘩しなくていいもんね」


 上目遣いで窺うような晴美を見て委員長と小乃子がプッと吹き出す。


「あはははっ、まぁなんだ。なるようになったって感じかな」

「私はまだ決めたわけじゃないからね、あくまで他の男子よりマシかなって程度だから」


 2人の向かいで晴美も楽しそうに笑顔になった。

 傍で聞いていた英二と秀輝が黙り込む、恋愛経験など全く無いのでどうしていいのかわからない、頬を赤く染めた小乃子や晴美がチラチラ様子を伺うように見ている。

 爽やかスマイルを湛えた宗哉が口を開いた。


「春休みにみんなで遊びに行かないかい? 去年の夏に行った別荘が空いているからよかったらまた招待するよ、春の海もいいものだよ、船を出すから釣りでもしようよ」

「おう、あの別荘か? もちろん行くぜ、なぁ英二」

「うん、春休みならハチマルも戻ってきてるし喜んで行くよ」


 普段なら遠慮する英二も助かったというように話に乗った。


「夏にも招待するからその下見を兼ねて行こう、委員長や久地木さんに晴美さんもいいよね、日付は女子たちで決めていいからね」


 爽やかに言う宗哉に委員長が身を乗り出す。


「また招待してくれるの? もちろん行くわよ」


 普段冷静な委員長が遠慮無しに喜んでいるのを見て晴美が指で小乃子を突っついた。


「別荘って? 」


 首を傾げる晴美に小乃子が教える。


「篠崎は初めてだったな、和歌山だよ、南紀白浜だよ、海が綺麗で御馳走が旨くて動物園も楽しくてマジで思い出に残るよ」


 小乃子の一段高い声から本当に嬉しいのがわかった。

 英二の向かいでサンレイがニタリと悪い顔で口を歪めている。


「にゅひひひひっ、チョコで服やケーキを釣った後で海で海老で鯛を釣るんだぞ」

「またゲスい顔になってるからな」


 サンレイの横でガルルンが泳ぐ真似をする。


「ガルは泳ぐがお、タコ殴りにしてタコを捕まえてやるがお」

「ガルちゃん風邪引いちゃうから泳いじゃダメだよ」


 困り顔の晴美を見てガルルンがニッと笑う、


「大丈夫がお、少しくらい寒くてもガルは平気がお」

「バカは風邪引かないから大丈夫だぞ」


 からかうサンレイを見てガルルンがムッと言い返す。


「ガルはバカじゃないがお、できる女がお、温かい毛があるから風邪なんて引かないがお」

「そうだったぞ、ガルルンは毛むくじゃらだからな、全身無駄毛の無駄駄犬だぞ」


 更に馬鹿にするサンレイの向かいでガルルンがプクッと膨れる。


「無駄じゃないがお、ガルの毛は武器にも使えるがお」

「にへへへっ、ガルルンの毛なんて犬臭くてズラにも使えないぞ」


 サンレイの頭をポンポン叩きながら委員長が間に入る。


「ハイハイ、喧嘩しないの、じゃあ明日にでも遊びに行く日を決めましょうよ、今日帰って親に了解を得て予定を合わせて明日みんなで相談しましょう」


 英二がどうするというように秀輝を見る。


「俺たちはバイトがあるからな…… 」

「大丈夫だぜ、こういう時のために正月出たんだからな、バイトは2日くらいどうにかなるから委員長たちの都合で決めてくれ」

「じゃあ決まりだね、去年の夏に使ったバスで行こう、食事も全て僕に任せてくれ」


 爽やかスマイルの宗哉に全員笑顔でこたえた。

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