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第86話

 和泉高校の屋上にハマグリ女房がフッと姿を現わした。


 英二の霊力を使ったとはいえサンレイとガルルンがフラつくくらいに妖力を消耗した結界に難無く入り込んだのだ。ハマグリ女房だけの力ではない。


「うふふっ、この程度の結界ならあの方に貰った妖力の詰まった水晶玉があれば簡単に入り込めるわね」


 屋上から校内を見回す。

 昼休みも半分が過ぎて食事を終えた生徒たちが運動場で遊んでいるのが見えた。


 ハマグリ女房が目を閉じる。


「私のチョコを食べたのは32人か……100個配ったにしては少ないわね、英二くんのクラスには14人ね、騒ぎを起こすのには充分だわ」


 愉しそうに口元を歪めながらハマグリ女房が目を開ける。

 12日に試供品と言って配ったホワイトチョコに何かの細工をしていたのだろう、食べた者が校内に何人いるのか調べていたのだ。


「旨く英二くんを攫えればよし、でなければ戦いましょう」


 確認するように胸元に手を当てるハマグリ女房の大きな胸の谷間にペンダントが2つ光っていた。


「手駒は揃った。幼女の神にも山犬にも負けはしません」


 妖艶に微笑みながらハマグリ女房が水晶玉を取り出した。


「そろそろ始めましょうか」


 反対の手で胸元から御札を取り出す。


「HQ様が作った傀儡札、これで私のチョコを食べた者は全て私の操り人形になる」


 右手の上に置いた水晶玉に左手に持つ呪術札を貼り付ける。


「傀儡霊糸縛り! 」


 札を貼り付けた水晶玉が眩しい光を出して輝く、


「HQ様の術とあの方の妖力があれば恐れるものなど何もありません」


 眩しく輝いていた光が消えると手に持っていた水晶玉も呪術札も消えていた。


「ここからは私のターンです。英二くんを手に入れて捧げれば……待っていて下さい愛しい人、なま様」


 うっとりして言うとハマグリ女房がスッと姿を消した。




 笑っていたサンレイがマジ顔でガルルンに向き直る。


「ガルルン! 」

「ガルも感じたがお」

「ここは任せたぞ」


 バチッと雷光をあげてサンレイが姿を消した。

 ガルルンが爪を伸ばして英二の前に立つ、


「ガルちゃんどうしたの? 」


 不安気に訊く晴美にマジ顔をしたガルルンが口を開いた。


「ハマグリ女房がお、ハマグリ女房の妖気と匂いがしたがお」

「マジかよ! 」


 大声を上げる秀輝の横で英二が顔を強張らせる。


「まだ俺を狙ってるのか……くそっ」

「サンレイちゃんは? 一人で戦いに行ったのか? 」


 宗哉が険しい顔で訊くとガルルンもマジ顔でこたえる。


「もう匂いも妖気もしないがお、逃げたか隠れているか? サンレイは確かめに行ったがう、ガルは英二を守る役目がお」

「サンレイ一人で? 俺たちも行こう」


 英二がガルルンの腕を取る。


「ダメがお、サンレイに頼まれたがう、ガルは命懸けで英二を守るがお」

「ガルちゃん…… 」


 見たことの無い険しいマジ顔のガルルンに英二は言葉が出てこない。


「くそっ! 」


 吐き捨てると秀輝が掃除道具の入っているロッカーからモップを持ってきた。


「素手よりマシだぜ」


 戦うつもりの秀輝に英二が声を掛ける。


「俺を狙ってるんだ。みんなを巻き込みたくない、もし襲ってきたら秀輝たちはクラスのみんなを逃がしてくれ、俺はガルちゃんと一緒に戦う、俺の責任だ」

「何言ってやがる! それ以上言ったら怒るぜ」

「そうだよ、英二くんに責任なんてないよ、襲ってくる妖怪たちが悪いんだからね」


 怒鳴る秀輝と並んで宗哉も怖い顔で英二を見つめる。


「でも…… 」

「でももへったくれもない、あたしたち仲間でしょ」


 小乃子が英二の腕を引っ張った。

 そこへサンレイがバチッと雷光を纏って帰ってくる。


「んだ? どした? 」

「英二がみんなを巻き込みたくないから逃げてくれって言って秀輝が怒ったがお」


 怪訝な顔で訊くサンレイにガルルンがこたえた。


「なにバカ言ってんだ? ハマグリ女如きで逃げる事なんてないぞ」


 呆れるサンレイに続けてガルルンが口を開く、


「そうがお、ハマグリ女房なんて雑魚妖怪がう、ガルの敵じゃないがお」

「ごめん……でも心配だから…… 」


 口籠もる英二を見て宗哉が表情を緩めた。


「心配してくれるのは嬉しいけど僕と秀輝は戦うつもりだからね、たとえ死んだとしても後悔はしないから、だから一緒に戦わせてくれ」


 モップを握り締めて秀輝が大きな声を出す。


「よく言った宗哉! 俺も同じ気持ちだぜ、委員長や小乃子と篠崎には危ない真似はさせないぜ、でもな、俺と宗哉は戦うぜ、サンレイちゃんとハチマルちゃんが消えたあの時、あの悲しみ、お前だけじゃないんだぜ」

「秀輝……宗哉も…… 」


 何とも言えない表情の英二の傍で秀輝に褒められた宗哉も嬉しそうに顔を綻ばせる。


「それでハマグリ女房は居たのかい? 」


 宗哉に訊かれてサンレイがプクッと頬を膨らませる。


「何処にもいなかったぞ、ハマグリ女、逃げ足だけは速いぞ」

「匂いは無いがお、でも妖気は少し感じるがお」


 探すように鼻をヒクヒクさせていたガルルンがサンレイを見つめた。


「でもどうやって結界に入ってきたがお」


 サンレイが顔を顰める。


「それだぞ、ハマグリ女程度が簡単に入ってこれる結界じゃないぞ」

「霊気を感じたがお、この前のホレ女と同じ霊気がお」

「呪術札だぞ、何か使っておらの結界に入ってきたんだぞ」


 険しい表情で話す2人を英二たちが黙って見つめる。

 英二たちだけではない、騒ぎを聞いて他の生徒たちも何事かという顔で見ていた。

 見守っていた生徒たちが騒ぎ始める。



 浅井の大声が聞こえてきた。


「どうした中川!? 」

「がが……ぐががぁ………… 」


 苦しげな呻きをあげると中川がバタッとその場に倒れた。

 中川だけではない、教室の彼方此方で男女関係なく倒れている。


「なにが…… 」


 英二がハッとしてサンレイを見つめる。


「もしかしてハマグリ女房の仕業か? 」

「多分な、どうやったか知らないがおらの結界に入り込んで術か何か掛けたんだぞ」


 サンレイが倒れた中川の元へ行こうとしたのをガルルンが止める。


「待つがお、様子が変がう」

「これは……この気配は…… 」


 足を止めたサンレイを見てガルルンが続ける。


「中川たちからハマグリ女の妖気とこの前の霊気を感じるがお、英二の…… 」


 英二の兄の霊気と言おうとしたガルルンをサンレイが止める。


「止めろガルルン、お喋りは後だぞ」


 険しい顔をしたサンレイが倒れている生徒たちを睨み付けた。


「動き出すぞ、英二を守るぞ」


 サンレイとガルルンがサッと英二の前に立った。



 倒れていた中川の腕がピクッと動く、


「中川! 大丈夫か中川? 」


 親友である浅井が心配そうに声を掛けると中川がムクッと起き上がった。


「ああぁ……ううぁ…… 」


 口から涎を垂らし、焦点の合っていない目をした中川がくるっと振り返る。


「うああぁ……ぶあぁ…………ああぁあぁ………… 」

「どうした? おい、中川? 」


 不安顔をした浅井が中川の肩を掴んだ。


「ううぅ……ああぁ~~ 」


 肩を掴んだ浅井の手を持って中川が放り投げた。


「うわぁ~~っ 」


 近くの机や椅子を倒しながら浅井が転がっていく、


「痛てて……何すんだ中川!! 」


 怒鳴る浅井には目もくれずに中川は英二の方を向いていた。


「やはり英二くんが狙いみたいだね」


 険しい顔をした宗哉の横にサンレイが立つ、


「ハマグリ女に操られてるんだぞ、数が多いぞ、只の妖術じゃないから一人一人じゃないとおらじゃ解けないぞ」


 中川だけでなく全部で14人の男女が虚ろな目を英二に向けていた。

 転がっていた浅井が起き上がる。


「中川てめぇ、冗談でもやり過ぎだぞ」


 浅井が怒鳴りながら中川の腕を引っ張った。

 中川が振り向きもしないで腕を回す。

 次の瞬間、浅井が宙を舞った。


「浅井! 」


 ガルルンがバッと跳んで浅井を抱いて着地する。


「あっ……ありがとうガルちゃん」


 きょとんとした顔で浅井が礼を言った。

 何が起きたのかはわからないが投げ飛ばされたことはわかっている様子だ。


「中川は正気じゃないがお、近付いたりしたらダメがお」

「うっ、うん、わかった。ありがとう」


 礼を言う浅井の顔が真っ赤になっている。

 ガルルンに抱き締められて頬におっぱいが当たって物凄く気持ちが良かった。


「向こうに行ってるといいがお」

「わっ、わかった」


 ガルルンが離すと浅井は英二たちの後ろに逃げていった。

 サンレイがマジ顔で口を開く、


「リミッター外れてるぞ、火事場の馬鹿力ってヤツだぞ」


 ガルルンが戻ってくる。


「危ないがお、こいつら暴れたら怪我人が出るがお」


 今にも襲い掛かってきそうな14人を見回して宗哉が頷いた。


「そうだね、みんなを教室から避難させた方がいい、委員長頼むよ」

「わかったわ、小乃子、篠崎さん、手伝って頂戴」


 委員長が直ぐ後ろに居た二人に言うと小乃子が晴美の手を引いて走り出す。


「後ろのドアから逃げよう、篠崎は教室の外に操られているヤツがいないか確かめてくれ、あたしはドアを確保してるから」

「わかった。運動場に逃げるよ、運動場までの道を見てくるからね」


 幸いな事に教室の後ろには操られている生徒はいない、晴美を連れた小乃子が後ろのドアを使って教室を出て行く、それを見て委員長が大声を出す。


「みんな聞いて、中川くんたちは悪霊に操られているのよ、この前メイロイドのクロエが暴れたでしょ、それと同じよ、だから直ぐに逃げて、教室から出て運動場へ避難するのよ」


 流石委員長だ。

 以前のクロエの時とは全く違うが生徒たちを逃がすのには的確な方法だ。

 その証拠にクロエが暴れた事を思い出したのか生徒たちが何一つ疑うことなく逃げ出した。


「きゃ~~ 」


 操られている14人に阻まれて逃げ遅れた数人の女子が悲鳴を上げる。

 悲鳴に反応するように虚ろな目をした生徒たちが動き出す。


「いやぁ~~ 」


 腕を掴まれて悲鳴を上げる女子、投げ飛ばされそうになった時に秀輝が操られている生徒にタックルを噛ました。

 操られて火事場の馬鹿力を出すと言っても所詮人間だ。大柄の秀輝がぶつかれば簡単に倒れて女子の手を離した。


「俺たちが時間を稼ぐ、早く逃げろ」

「ありがとう伊東くん」


 礼を言うと女子たちが教室を出て行く、近くに居た操られていた生徒はガルルンとサンレイが倒していた。


「みんな逃げたわよ、どうするの? 教室で戦うの? 」


 廊下にいた委員長と小乃子と晴美がやってくる。


「戦うって言うより一人一人の術を解くんだぞ」

「よかった。それで治るんだね」


 安堵する宗哉をサンレイが見上げる。


「治るぞ、んでも厄介だぞ、一人一人しか出来ないぞ、一人3分は掛かるぞ、その間おらは戦えないぞ」

「ガルに任せるがお、ガルが全部倒してやるがお」


 構えるガルルンを英二が止める。


「ガルちゃんダメだよ、怪我させないようにしないとね」

「そだぞ、だから秀輝と宗哉とサーシャとララミで時間を稼ぐんだぞ」


 サンレイが一番近くに居た操られている女子の頭を両手で押さえながら続ける。


「おらはこうやって1人ずつ術を解いていくからな」


 両手がバチッと光って女子がその場に倒れ込む、


「私たちは? 」


 何をすればよいかと訊く委員長に倒れた女子の額に手を当てながらサンレイがこたえる。


「委員長たちはみんなと一緒に運動場に逃げてろ」


 後ろのドアの傍に居た小乃子がやってくる。


「あたしも戦うよ、英二たちだけ危ない目に遭わせるなんて嫌だよ」

「ダメだぞ、邪魔なだけだぞ、本当は宗哉や秀輝にも戦わせたくないんだぞ、小乃子に何かあったら英二が悲しむぞ」

「サンレイの言う通りだ。それに小乃子がもし操られたらどうする? 秀輝や宗哉なら殴って止めるけどお前を殴るなんて嫌だからな」


 サンレイの横で英二が言うと小乃子が頷く、


「英二……わかった。でも気を付けろよ」


 不安気な小乃子を見て英二が優しく微笑んだ。


「ああ、俺は爆破使いだぜ、秀輝と2人で呼子を倒したんだからな」

「うん……そうだな、英二は爆弾魔だったな、んじゃ任せて避難するよ」


 からかうように言うと小乃子が教室を出て行く、その背に英二が大声だ。


「人を犯罪者のように言うな! 」


 怒ってはいない、寧ろ笑顔だ。


「こっちは任せて、みんな怪我しないでね」

「ガルちゃんもサンレイちゃんも無理はダメだよ」


 委員長と晴美も小乃子の後について教室を出て行った。



 倒れていた女子の頭をサンレイがポンッと叩く、


「1人終わったぞ」


 サンレイが宗哉に振り向いた。


「邪魔だから教室の外へと運ぶんだぞ」


 了解したというように頷くと宗哉がサーシャに命じる。


「サーシャ、小池さんを運動場まで運んでくれ、委員長に渡して直ぐに戻ってこい」

「了解しましたデス」


 サーシャが女子を背負って後ろのドアから出て行った。

 宗哉が操られて虚ろな目をしている生徒たちを見回した。


「残り13人か、僕たちでどうにか防いでサンレイちゃんが1人ずつ治すしか方法がないんだね」

「そだぞ、只の妖術なら纏めて出来るんだけどな、こいつら厄介だぞ」


 サンレイの横でモップを握りながら秀輝が口を開く、


「でも一度に襲って来ないだけマシだぜ」

「うん、大きな声や触れた時に襲ってくるみたいだな」


 サンレイを挟んで反対側でこたえる英二の腕をガルルンが握った。


「気を付けるがお、ハマグリ女房の匂いがするがお」


 鼻をヒクヒクさせるガルルンの前でサンレイが立ち上がる。


「近くに来てるぞ」

「マジかよ、ハマグリ女房が…… 」


 ぐっと拳を握り締める英二の腕をガルルンが離す。


「ハマグリ女房はガルが倒すがお、サンレイは中川たちを助けるがお」

「わかったぞ、ハマグリ女は任せたぞ」

「ガルちゃん一人で大丈夫か? 」

「そうだぜ、ハマグリ女房は何を企んでるかわからないぜ」


 心配顔の英二と秀輝の前でガルルンが鼻を鳴らす。


「がふふん、ハマグリなんてガルの敵じゃないがお、ガルはできる女がお」

「でも…… 」


 英二の肩に宗哉が手をかける。


「此処はガルちゃんに任せよう、英二くんは狙われているんだから出来るだけハマグリ女房には近付かない方がいいよ」

「そだぞ、英二を取られたらおらたちの負けだぞ」

「でも……わかった」


 渋々と言った様子で納得する英二の肩から手を離すと宗哉がサンレイを見つめる。


「僕たちは術を解いているサンレイちゃんの邪魔にならない様に中川たちを近付けなければいいんだね」

「そだぞ、おら術は苦手だからな、ハチマルみたいに解きながら戦うなんて器用なこと出来ないぞ、さっきやった様に一人3分くらいは掛かるぞ、その間頼むぞ」


 英二がじっと拳を見つめる。


「近付けなければいいんだな、2寸玉でも女子にはキツいな、1寸玉で済めばいいんだけどな…… 」

「女子はサーシャとララミに押さえ込ませればいいよ」


 ララミと運動場から戻ってきたサーシャが宗哉の左右に並ぶ、


「女子を傷付けない様に取り押さえればいいのデスね」

「小娘どもなど片手で捻り押さえてやりますよ」


 腕捲りするサーシャの反対側でララミは相変わらず口が悪い。


「サンレイちゃんを守ればいいんだろ、任せてくれ、命懸けで守ってやるぜ」


 モップを横向きに持った秀輝がサンレイの前に出る。モップを使って襲ってくる生徒たちを押さえ込むつもりだ。


「13人、全部で30分くらいは掛かるぞ、頼んだぞみんな」


 バチッと雷光をあげるとサンレイが近くに居た女子の横に瞬間移動する。


「2人目だぞ」


 女子の首に手を掛けてバチッと気絶させると倒れた女子の額に手を当てる。

 しゃがんだサンレイの後ろから3人の男子が襲い掛からんと手を伸ばす。


「させるかよ! 」


 モップを横に持った秀輝が3人に向かって行く、


「いいぞ秀輝」


 秀輝がモップで押さえている男子に英二が両手を伸ばす。


「爆練、1寸玉! 」


 爆発する小さな霊気が連続で飛び出して3人の男子に当たって爆発する。


「ああぁ……うぁぁ…… 」


 呻きをあげて男子が数歩下がっていく、モップを持っていた秀輝がバッと振り返る。


「痛てて……俺まで爆発させるな」

「悪い、そこまで近いと制御できないからな、爆突だと怪我させちゃうし」


 苦笑いする英二を睨み付けると秀輝が前に向き直る。


「仕方ねぇ、これくらいなら我慢してやるぜ」


 またモップを構える秀輝に3人の男子が襲い掛かる。


「ガルガルパ~ンチ! 」


 跳んできたガルルンが3人の男子をぶっ飛ばした。


「つまらぬものを切ってしまったがお」


 英二の横に降り立つとガルルンがドヤ顔だ。

 机や椅子を倒して転がる3人を見て英二が声を上げる。


「わあぁ~~、ガルちゃんダメだよ」

「がふふん、峰打ちがお」

「パンチに峰打ちなんて無いでしょ」


 弱り顔の英二を見てガルルンがニヘッと悪い顔だ。


「怪我しない程度に力を緩めて殴ったがお、青痣できるくらいがう」

「ははははっ、流石ガルちゃんだ。男だしなそれくらいは上等だぜ」


 楽しそうに笑う秀輝の後ろでサンレイが息をつく、


「2人目終わったぞ、秀輝、ガルルン、その調子で頼むぞ」


 秀輝とガルルンがこたえる前にサンレイがまたバチッと消えた。

 英二の横にバチッと現われると近くに居た男子と女子を電気で痺れさせて捕まえる。


「2人一遍にやってみるぞ、また頼んだぞ英二」

「わかった」


 しゃがんだサンレイを庇う様に英二が立った。

 そこへ左右から女子が3人襲い掛かってくる。


「サーシャ、ララミ、女子たちを押さえてくれ」


 後ろに居た宗哉が命じるとサーシャとララミがサッと動いた。


「わかりました御主人様」

「右の2人は私に任せてくださいデス」


 左右からサンレイに近付く女子3人をサーシャとララミが止める。

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