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第7話

 期末テストが終わり夏休みとなる。


 8月に宗哉の別荘がある和歌山の海に行くのだ。

 英二は貯めていたお小遣いを使ってサンレイとハチマルに水着を買ってやることにした。

 小乃子と委員長もついて来てくれた。

 女の子の服など買いに行ったことのない英二は大助かりである。

 親友の秀輝を入れて全部で6人で行く買い物だ。


 ショッピングモールは学校の反対側にあるので学校近くの秀輝がバイトをしているコンビニで待ち合わせだ。

 家の近い秀輝とは一緒にコンビニに向かった。

 小乃子たちを待っている間にサンレイがアイスをねだると秀輝が奢ってくれた。


 サンレイとハチマルがガサゴソとアイスケースに頭を入れるようにして選んでいる。


「もちろん私たちにも奢ってくれるよなぁ、秀輝ぃ」


 いつの間に入って来たのか小乃子が甘えるような声を出す。

 後ろにいた委員長も笑顔でアイスを催促している。


「うわっ!! いつの間に来た。変な声出すな気持ち悪い、仕方ないな奢ってやるよ」


 結局秀輝は英二の分を入れて5人分アイスを奢ることになる。

 サンレイと一緒にアイスを選んでいたハチマルが声を上げた。


「おお、あずきバーじゃ、まだあったんじゃな」

「当然だぞ、あずきバーが無くなったらいざという時に困るだろ」

「そうじゃの、敵が攻めてきたときに困るの」

「敵が攻めてくるって? 何のこと? 」


 英二が不思議そうに訊く、何事かと秀輝や小乃子たちもハチマルに注目している。

 視線を感じたのかサンレイが振り返って口を開いた。


「あずきバーはいざという時に武器になるんだぞ」


 ハチマルが当然だという様子で続ける。


「そうじゃ、アイス界の凶器じゃからな、カチンコチンに凍らせたあずきバーは撲殺兵器となるのじゃ」

「あずきバーで撲殺してその後食べたら完全犯罪だぞ、アイスの棒は倒した相手のケツにでも刺しておけばいいんだぞ」

「武器になるアイスはいろいろあるがあずきバーの硬さは最強じゃ、日本を狙って敵が侵攻してきてもあずきバーさえあれば戦えるんじゃ」

「そんな事しませんから、あずきバーで撲殺なんかしないからな」


 英二が弱り切った顔で2人を叱った。

 構わずハチマルが話しを続ける。


「まだあったんじゃのう、儂はとっくに銃刀法違反で製造中止じゃと思っておったわ」

「手軽に使える武器として技術を残すためにわざとお目こぼしをしているんだぞ」

「そうだったんじゃのう、一度失われると回復させるのが大変なのが技術じゃからな、あずきバーを如何に硬くとも食えるアイスとして作る技術は相当なものじゃからな」

「そだぞ、でないととっくに銃刀法違反に指定されて外であずきバー食ってたら逮捕されてるぞ、冷蔵庫にあずきバー沢山入れてたらテロリストとして指名手配だぞ」

「そうじゃな、殺人未遂と同じじゃからな、あずきバー殺人事件じゃ」


 2人のバカな話に英二が思わず怒鳴る。


「アホか! そんなわけないだろ、あずきバーで人なんか殺さないからな」


 小乃子と委員長が呆れ果てた表情でそれを見ていた。

 秀輝は楽しそうに笑っている。

 ハチマルが分厚いチョコがコーティングされているバリチョコデラックスを選んでサンレイがタイヤキの形のモナカを選び、英二たちもアイスを選ぶとコンビニを出た。


 ショッピングセンターへと向かう道をサンレイたちが並んで歩いている。

 道案内の小乃子と委員長が一番前で真中にサンレイとハチマルがいて一番最後を英二と秀輝が並んで歩いていた。


「そうじゃな……あっ! 」


 楽しそうに話していたハチマルのアイスが落ちた。


「ああ~っ、儂のバリチョコデラックスがぁ~ 」


 一瞬の間を置いてハチマルが叫んだ。

 アイスの棒から外れて中身だけがポトッと地面に落ちたのだ。


「だから棒じゃなくてモナカかカップにしろって言ったんだぞ、もう夏だからな棒付きアイスは歩きながら食うのは危険だぞ」


 隣を歩いていたサンレイが落ちたアイスを見ながら顔を顰める。

 歩道に転がるアイスを見つめながらハチマルが考えるような顔で言う、


「バリチョコが食いたかったんじゃ……待てよ、バリチョコはチョコでコーティングしてあるからチョコを剥がせば中のバニラはまだ食えるかも………… 」

「おおそうだぞ、チョコ剥がせばセーフだぞ」


 隣でサンレイが感心の声を上げたあと思いついたように話しを続ける。


「3秒ルールだぞ、でももう3秒過ぎたからダメだな」

「3秒ルールじゃと? なんじゃ? 」


 アイスのことも忘れてハチマルが不思議そうな顔で聞いた。

 サンレイが得意気に話し始める。


「人間の世界では3秒以内なら落ちた物を拾って食っても大丈夫っていうルールだぞ、3秒以内ならバイ菌とか付かないんだぞ、3秒以内に拾うならセーフなんだ」

「なんじゃとそんなルールが……もう少し早く知っておれば儂のバリチョコも拾って食えたものを………… 」


 ハチマルが落ちたアイスを悔しげに見つめた。


「もっと早く教えてればよかったな、ごめんなハチマル」


 本当にアイスクリームが好きなのだろう2人とも本心から残念そうな表情だ。


「まあいい、今回はおしいことしたが次からは大丈夫じゃ、じゃが凄いルールじゃの3秒ルールは、じゃが…… 」


 ハチマルが顔を上げてサンレイを見つめる。

 サンレイも顔を上げて2人が見つめ合う、ハチマルの顔が強張っていく、険しい表情をして口を開いた。


「じゃが、じゃが……もしも、もしもじゃが、もしもウンチの上に落ちたら……道に落ちておるイヌやネコの糞に落ちたらどうするんじゃ? 」

「3秒ならセーフだぞ、3秒以内ならウンチだろうが毒の中だろうが落ちても拾って食えるんだ。人間はみんな拾って食うんだぞ、3秒以内なら何でもOKなんだ」

「マジか? 人間って凄いのう、3秒ルールを知っておっても儂は無理じゃ」


 ますます得意気に話すサンレイにハチマルが驚愕の表情で返す。

 すぐ前を歩いていた委員長がバッと振り返った。


「食べません!! 3秒ルールとか関係無しに外で落ちた物は拾って食べないからね、サンレイはどこでそんな事覚えてくるのかしら、まったく」

「3秒ルールっての聞いた事あるけどあれは自分の部屋とか机の上とかの話だぞ、教室の床とか外とかは落ちたらすぐにアウトだからな」


 叱るように言う委員長の隣で小乃子が楽しそうにニヤニヤ笑っている。

 一番後ろを秀輝と並んで歩いていた英二が駆けてきた。


「ほら俺のモナカ残り全部あげるからさ、悲しい顔すんなよ」

「おお、英二はほんに優しいのう」


 半分残っているモナカアイスを貰ったハチマルの機嫌がいっぺんに直る。


「立ち止まってたら暑いぜ、早く行こう」


 秀輝の言葉でまたみんな楽しそうに歩き出す。

 ハチマルとサンレイの水着を買ったあとファーストフード店で談笑して家に帰った。




 8月になった。いよいよ待ちに待っていた海へと旅行に出かける。


 サンレイとハチマルと英二と秀輝に小乃子と委員長の6人に宗哉とメイロイドのサーシャとララミの合計9人が宗哉の別荘である和歌山の白浜に遊びに行くのだ。

 サンレイがモノノケを祓ったお礼に宗哉が自分の所有する別荘にみんなを招待したのである。

 秀輝のバイトや小乃子の都合によって8月上旬となったがそれがよかった。

 7月は少し天気が崩れて雨の降る日が多かったが今日は晴天の夏真っ盛りといった陽気である。


「おおでっかいぞ、これ全部水なんか」

「ほう、これが海じゃな、これだけ大きければ魚食い放題じゃな」


 バスの椅子に座って外を見ていたサンレイとハチマルが大きな声を出す。

 窓の外に綺麗な海が広がっていた。


「うわぁーすごい綺麗だな、近くの海とは色がぜんぜん違うな」

「本当ね、近くじゃ濁った黒い青だけどさすが白浜ね、澄んだブルーって感じよね」


 小乃子と委員長も感動して声が一段高い。


「本当に凄いね、宗哉ありがとうな」

「どういたしまして、御礼を言うのはこっちの方だよ、サンレイちゃんに悪いものを祓ってもらってから毎晩あった頭痛がなくなったんだ。風邪も引かなくなったし本当に感謝してるよ、これくらい当然の礼だよ」


 英二が窓の外を見ながら礼を言うと宗哉が笑顔で返した。

 隣で秀輝が半分寝転びながら口を開く、


「そういや学校休まなくなったな宗哉」

「うん体は少し丈夫になったみたいだ。全部モノノケの所為だったんだね」


 シートに寝転がっていた秀輝が宗哉を見上げる。


「それにしても凄いな金持ちってのは」

「このバスは特別だよ、みんなのためにレンタルしたんだ。普段は普通の自家用車だよ」

「自家用車だって高級車だろが、まあいいや今日からしばらく俺も金持ち気分だぜ」

「ふふふっ、楽しんでくれよ、お礼だから遠慮は一切無しでいいよ」


 秀輝の厭味にも宗哉は動じもしない。


 英二や秀輝が凄いと言ったのは外の綺麗な景色だけではない、バスが豪華なのだ。

 大型の二階建てバスに横になれるくらいにゆったりしたシートが10席しかない、2階にはアルコール類が飲めるカウンターまである。

 英二たちは未成年だから酒類は置いてないが代わりに各種ジュースなどが満載されていた。

 まさに走る高級クラブといった趣の豪華バスだ。

 そんなバスに運転手を除いて英二たち9人しか乗っていない。

 メイロイドのサーシャとララミは給仕係りのようなものだから差し引くと7人での貸切と同じだ。

 白浜の動物園や他の観光などへ行く時は全てこのバスを使うという事だ。

 英二と秀輝が驚くのも無理のない超豪華な旅である。


 バスの2階でサンレイとハチマルが椅子を回転させて窓の外に広がる海を見ている。

 2階には右側に飛行機のファーストクラスのような豪華でゆったりした1人用の座席が縦に1列並んでいて反対側に電車のような長椅子がある。

 奥にはカウンターと化粧室にトイレが備え付けられていた。


 2人と同じように小乃子と委員長が並んで座っていて英二と秀輝と宗哉は反対側の長椅子に座ってはしゃぐサンレイたちを見ている。

 海を見ながらわくわく笑顔のサンレイが誰に言うとなく口を開いた。


「オタリアいるかな、おらオタリア見たいぞ」

「サンレイはオタリアが好きなの? オタリアってアザラシみたいなやつでしょ」


 委員長が椅子から身を乗り出してサンレイに振り向いた。

 サンレイも身を乗り出して委員長にこたえる。


「おらはシャチが大好きだぞ、海のギャングで一番強いんだぞ、おらはシャチが好きでシャチはオタリアが好きなんだ。そんでシャチはオタリアを食べるんだぞ、だからオタリアがいっぱい居るところにはシャチもいるんだぞ」

「サンレイちゃんがシャチを好きなのとシャチがオタリアを好きなのとはちょっと違うよね、シャチはオタリアを食べるためにエサとして好きなんだよね、サンレイちゃんはオタリアじゃなくてシャチが見たいんでしょ」


 苦笑いで言いながら委員長が椅子に座りなおす。


「そうだぞ、オタリアは為す術もなくシャチに弄ばれて食われるんだぞ」


 サンレイがニパッと満面の笑みだ。

 2人に挟まれた席に座って話しを聞いていたハチマルが口を開く、


「シャチに食われるオタリアか……ロマンチックじゃのう」

「ぜんぜんロマンチックじゃないからな、残酷だからな、使い方間違ってるからな」


 綺麗な海を見ながらうっとりとするように言うハチマルに英二が声を荒げた。


「英二はロマンがわかっておらんのう、夕日に赤く染まる海でシャチがオタリアをビーチボールのように飛ばして遊ぶ光景じゃぞ」

「夕日かと思ったらオタリアの血で海が真っ赤に染まってんだぞ」

「わあぁ~、そんな夕日の海は嫌ですから」


 叫ぶ英二を見てサンレイとハチマルが満足そうにニヤッと笑う。


 サーシャとララミがケーキやサンドイッチなどが乗ったケーキワゴンを押してきた。


「朝早く出てきたからお腹減っただろ、軽くおやつでも食べようよ」


 宗哉が言う前にサンレイとハチマルはすでに椅子を回してケーキをガン見だ。

 サンレイとハチマルの前にケーキが並ぶと小乃子と委員長も後ろの席からやってきた。

 女子全員の目の色が違う、花より団子というところである。


 朝の5時前に家を出てきて今は8時30分だ。

 ちょうど小腹がすいてくるころだ。

 楽しそうにキャイキャイ談笑しながら食事が始った。


「景色も綺麗だと食い物も美味いんだぞ」

「そうじゃの、このケーキなどさすが専門店の味じゃな」


 サンレイとハチマルが口の回りをクリームで白くしながら言った。

 2人仲良く並んで高級なケーキをパクパクと食べている。

 幼女のサンレイは分かるがハチマルがクリームを口の周りにつけている姿は可愛いというよりテレビのコントだ。

 英二がサンレイの口元を拭きながら注意する。


「2人ともあんまり食べたらお昼食べれなくなるよ」

「大丈夫じゃ、甘いものは別腹じゃ」


 言いながら自分の口も拭いてくれとハチマルが首を伸ばす。

 英二は一瞬躊躇したが甘えるようなハチマルの仕草に負けて口元を拭いてやる。


「別腹でそれだけ食べたら本番はどれだけ食べるんだ。まったく」


 秀輝たちが見ているのに気づいて英二が照れを誤魔化すように言った。


「はははっ、英二くんの言う通りだよ、ここにあるのは所詮作り置きのものだ。別荘へ着いたら昼ご飯は軽く外で食べて今日の夜はバーベキューだよ、肉も魚もいいものを用意したから楽しみにしてくれよ」


 カクテルのような綺麗なジュースを傾けながら宗哉が微笑む。


「おお肉か、魚もかマグロだなおらマグロが食いたいぞ」

「バーベーキューかいいのう、夏って感じじゃぞ」


 サンレイとハチマルがケーキを食べる手を止めた。既に気持ちは夜のバーベキューへと向いている。


「うんマグロもあるよ、炭火で少し炙って食べると最高だよ、松坂牛にアワビにサザエに車海老など沢山用意したからね、本場ドイツの職人が作ったウインナーと比内鶏を使った唐揚げも用意したからね」

「ウインナーか、本場って言うとポークビッツにシャウエッセンだな」

「さすがじゃな、儂らの好物の用意も抜かりないのう」


 サンレイなど滅茶苦茶言っているが英二はもう何も言わずに聞いていた。

 自分たちとの食生活とはまったく別物で想像しただけで涎が出てくる。

 小乃子と委員長も景色を見る振りをしながら話に耳を傾けていた。その証拠に先程から一言も話さない。



 楽しげな声が途絶えることなくバスが別荘へと着いた。


「おおでっかい家だな、英二の家の5つ分はあるぞ」

「うわぁ、お城みたいだ。大きなプールもある。ここに泊まれるんだ。夢みたいだな」


 サンレイと小乃子が大声ではしゃぐ。


「これを遊びでしか使わんとは罰当たりなヤツじゃのう」


 無邪気な2人と違いハチマルは冷静だ。


「そう言われると困るな、でもここは会社の役員たちにも使ってもらってるんだよ、僕たちが使ったあと来週には本社の専務たちが使う予定だよ、春から秋の間はフルに使うから贅沢だとは思うけど無駄じゃないよ」


 苦笑いで宗哉がこたえる。

 英二と秀輝と委員長は声も出ない、吃驚して別荘を見上げていた。

 テレビなどで見る別荘とは比べ物にならない西洋風の大きな屋敷だ。

 ハチマルがニヤッと口元を悪戯っぽく歪めた。


「時々儂らを遊びに連れて来るのなら罰も当たらんぞ、儂らは神じゃからな」

「はははっ罰は怖いな、それじゃ来年も夏に招待する事にしようかな」

「うむ、それがいいの、この辺りの悪い気も儂らが3日ほどいれば綺麗になるぞ」


 宗哉の腕をサンレイが引っ張った。


「話はそのへんで早く中に入るぞ、中はハリボテじゃないだろうな」

「ハリボテは酷いな、気に入るかどうか分からないけど、どうぞ」


 苦笑いしながら宗哉が言うとサーシャとララミがサッと別荘のドアを開けた。

 サーシャとララミの間を通ってサンレイとハチマルと小乃子が遠慮なく駆け入って、その後を微笑みながら宗哉が続く、英二たちはまだ呆然と建物や辺りを見ていた。


「委員長や英二くんたちもどうぞデス」

「英二さん、秀輝さん、ぼーっと突っ立てないでとっとと入って荷物を下ろすといいです。部屋に案内しますから」


 ニッコリ微笑むサーシャと時々口の悪くなるララミの言葉で英二が我を取り戻したように別荘の中へと入って行った。



 玄関を入るとすぐに大きなフロアがある。


 ゆったりとカーブを描きながら左右から降りてくる階段、床に敷き詰められた大理石、白く塗られた壁には汚れ一つ無い、壁際には女神様の石造や中世の甲冑などが置いてあり上には高そうな絵が掛かっていた。

 あまりの豪華さに英二たちは言葉を無くして呆然としている。

 サンレイとハチマルと小乃子の3人ははしゃぎまわっていた。


 小乃子が感嘆の大きな声を上げた。


「わあぁ、ステキ! 中もお城みたいだな」

「内装はルネサンス様式を真似ているんだよ」


 宗哉がいつもの爽やかスマイルでこたえる。

 話しを聞いてサンレイが首をかしげる。


「ルネサンス? なんだか知らんが凄いな、階段が左右から伸びてんぞ」

「あれじゃな、武士が切られて転げ落ちていく階段と同じじゃな」

「違うからな、変な遊びしちゃダメだよ」


 困った顔で英二が釘を刺す。

 サンレイとハチマルが今にも階段を転げ落ちて遊びそうな気がしたのだ。


「スゲーな、あの絵1つで家が買えるんじゃないか」

「ほんとお金ってある所にはあるものね」


 絵を見上げる小乃子の隣で委員長が溜息をついた。

 驚くみんなを見回して宗哉が口を開く、


「サーシャ、ララミ、部屋に案内してあげてくれ、みんな部屋に荷物を置いてフロアに集合だよ、昼までまだ3時間ほどあるから泳ぎに行こうよ、水着持ってきてね、着替えは浜に更衣室があるから安心してくれ」

「おお海で泳ぐんか、おら初めてだぞ」

「そうじゃの、バスから見た海は綺麗じゃったからの」


 サンレイははしゃぎっぱなしだ。



 サーシャとララミに案内されて部屋へと向かった。


 部屋割りは英二と秀輝と委員長と小乃子は個室でサンレイとハチマルは2人で一部屋だ。

 2人一緒の方がいいだろうとの配慮である。

 各部屋にトイレはもちろん化粧室に浴室も完備されていた。

 ホテルのスイートルーム並みの設備だ。

 とても個人所有のものとは思えない、各自驚きながら荷物を置くと玄関口のフロアへと集まった。


「みんな忘れ物は無いね、じゃあ海に行こうか、すぐそこだから歩いていこうよ、サーシャ、ララミ、飲み物など頼んだよ」


 海もすぐ近くだ。

 別荘から歩いて5分ほどで綺麗な砂浜についた。

 綺麗な砂浜なのに人影が少ない、セレブな人たちが8組ほどいるだけである。


 この辺り一帯は佐伯重工始め全てお金持ちの所有地だ。

 周りが私有地なので許可無しでは入って来れない、当然そこから続く浜にも陸路からは許可無く入れない、つまりプライベートビーチと同じである。


「凄げえな、海も貸し切りかよ」


 秀輝が舌を巻いて驚く、


「佐伯重工は世界でもトップクラスだからね、でも本当に凄いな俺たちとは別世界だね」


 隣で言う英二の口調に抑揚が無い、驚きの連続に感動がボケていた。


「おおザザァ~ンってしてるぞ、早く泳ぎたいぞ」

「うちの更衣室はあそこだよ、鍵付のロッカーがあるから安心して着替えてくるといい、休めるようになっているから出前頼んで昼もあそこで食べてもいいね」


 宗哉が指差す先に海の家のような趣のある建物が建っていた。


「おお海の家も貸切なんだ。早く行こうぜサンレイ、ハチマル」


 小乃子がハチマルとサンレイの手を取って走り出す。

 その後ろからララミが付いていく、宗哉に命じられてララミがサンレイたちの面倒を見ることになっていた。


「僕たちも早く着替えて泳ごうよ」


 宗哉に促されて英二たちも海の家へと向かった。

 残ったサーシャが浜辺にパラソルを立てビーチチェアを設置して遊ぶ用意をしている。

 サンレイが持ってきたシャチの浮き輪とハチマルが持ってきたワニの浮き輪も膨らまして準備万端だ。



 海の家の奥にある女子更衣室でサンレイと小乃子たちが着替えていた。

 バスタオルで隠しながら着替えている委員長を素っ裸のサンレイがじっと見ている。


「う~なんで委員長はそんなにおっぱいでっかいんだ。タオルの上からでも分かるぞ」


 ペッタンコの胸を撫でながらサンレイが羨ましそうに訊いた。


「なんでって言われてもこたえようが無いわよ、それよりサンレイも早く水着着なさい」


 頬を赤く染めながら委員長が困った様子でこたえる。


「家系だな、母ちゃんも姉ちゃんもでかいよな、遺伝じゃ方法聞いたって仕方ないよな」


 からかう小乃子を隣にいたハチマルがニヤッと笑いながら見つめる。


「そう言うお主もなかなかのもんじゃぞ小乃子」

「へへへっ、そうだろ、ハチマルと菜子には負けるけどあたしも結構自信あるんだ」


 着替え終わった小乃子が首の後ろと腰に手を当ててポーズをとる。

 水色のセパレート水着の胸の辺りが結構大きな山を作っていた。

 巨乳というほどではないが小乃子の細い体には大きく見える。


「おうおう、儂も負けんぞ、これで英二を悩殺じゃ」


 負けじとハチマルもポーズをとった。

 ハチマルは赤色のビキニである。

 一緒に買いに行った小乃子が選んでくれた。

 引き締まった細い体に委員長より更に大きい爆乳のハチマルにはビキニが似合う。


「凄いなハチマル、その胸何が入ってるんだ? 女のあたしでも揉みたくなるぞ、秀輝や英二なんか一撃だぜ」


 小乃子が触りたそうにワシワシと指を動かす。

 組んだ腕で自分の胸を抱えるようにしてハチマルが口を開く、


「デカくて邪魔なだけじゃが男受けがよいから人間の世界では得じゃの、英二も大きいのが好きそうじゃし、小乃子とはライバルじゃな」

「なっ、違うからな、あたしはそんなんじゃないからな」


 小乃子が真っ赤な顔で否定するのを見てハチマルがニヤりと笑う。

 素っ裸のままサンレイが拗ねたように口を尖らせる。


「おらだけ……おらだけ膨れてない、おらだけおっぱい無いんだぞ」


 しょんぼりと悲しげな顔をして恨めしげな目でみんなを見ている。


「早く着なさい、一番幼いんだから仕方ないでしょ、大きくなれば膨れるわよ」


 委員長がサンレイの水着を持ってその場にしゃがむ、委員長は黄色のビキニだ。

 一緒に買いに行った小乃子やハチマルがそそのかしてビキニを買わせたのである。

 2人が勧めるだけあって巨乳で肉感的な委員長には似合っている。


 委員長が持っている水着に足を突っ込んで着ながらサンレイが口を開く、


「うぅ~おらも早く英二を悩殺したいぞ、ワンピースじゃなくてビキニを着てハチマルや委員長みたいにブルンブルン揺らして見せ付けてやりたいぞ」

「言っとくけど私はブルンブルン揺らしたりしないからね、サンレイちゃんは変な事ばっかり考えてるんだから、まったく」


 サンレイに水着を着せながら委員長が困った顔で怒る。

 本気で怒っているのではない仕方ないなという感じだ。

 サンレイは薄い水色のワンピース水着だ。

 着物もそうだが薄い水色が好きなのだろう、小学校低学年といった体型のサンレイはもちろんペッタンコである。


 英二たちは着替え終わって海の家の座敷に座りながら女子を待ってだべっていた。


「サンレイちゃんとハチマルちゃん、どんな水着かな楽しみだぜ」

「サンレイは水色のワンピースだよ、ハチマルは赤のビキニだ。買ったその日のうちに着て家の中走り回ってたよ」


 嬉しそうなニヤけ顔の秀輝を見て英二が意地悪く笑う。


「あーっ言うなよ、サンレイちゃんの水着、どんなのか楽しみにしてたのに」

「お前本気でちょっとやばいぞ、そのロリコンは」

「なっ、違うからな、ロリじゃないからな、サンレイちゃんだけじゃなくてハチマルの水着も楽しみなんだからな、それに俺はサンレイちゃんを可愛いと思っているだけで変な事しようとか考えてないからな、ロリコンってのは小さい子に変な事する奴のことだろ、だから俺はロリじゃない」


 意地悪顔でからかう英二に秀輝が必死に反論する。


「そうか、ロリじゃなくておっぱい星人か」

「なに言って……んーんっと、それは否定しない、お前だっておっぱい星人だろが」

「それを言われると反論できないな、ハチマルは凄かったからな、秀輝も吃驚するぜ」

「おおう、期待がビンビンだぜ、スク水でも凄かったからな」


 英二と秀輝の顔がいやらしく歪んでいく、それを見て宗哉が楽しそうに笑う、


「フフフッ、英二くんたちは本当に面白いね、あっ出て来たよ」


 女子たちが更衣室から出てきた。

 一番着替えるのが遅かったサンレイが一番始めに元気よく走って出てきた。


「うみ~、うみ~、早く泳ぐぞ」

「待たせたのう、どうじゃ英二、待った甲斐があるじゃろ」


 赤いビキニ姿のハチマルが英二の前で腰に手をあてて自慢気に胸を張る。

 赤い薄布1枚に包まれた爆乳がブルンと揺れた。


「あるある、可愛いよハチマル、似合ってるよ水着、綺麗だよ」

「可愛い水着をプレゼントしてくれて礼を言うぞ」


 英二がだらしなく相好を崩すのを見てハチマルが満足気に頷く、

 悔しげな表情をしながらサンレイもペッタンコの胸を張ってポーズをとる。


「なあなあ英二、おらは、おらも可愛いだろ」

「うん可愛いよ、水着は前も見たけど太陽の下で見たらもっと可愛いよ」

「にへへへへっ、そうか可愛いか、なあなあ英二、早く海行って泳ぐんだぞ」


 サンレイが英二の腕に縋りつくようにして引っ張る。

 秀輝は無言だ。

 口を半開きにしてハチマルとサンレイに見惚れていた。


 小乃子と委員長がゆっくりと歩いてきた。


「おいおい、あたしたちには褒め言葉無しかよ、委員長も結構凄いんだぜ」

「ちょっと止めなさいってば、恥かしいでしょ」


 小乃子が隠れるように後ろにいた委員長の腕を取って前に出す。

 恥ずかしそうに腕で覆うが隠しきれない巨乳が腕に圧迫されて柔らかそうに波打っていた。

 真面目な委員長の恥らう姿と初めて見たビキニ姿に英二も秀輝も言葉が出ない。


「へえ、委員長のビキニなんて初めて見るよ、似合ってるよ綺麗だよ」


 見惚れて何も言えない2人に代わって宗哉が褒める。


「ほんとう佐伯くん? 変じゃない? ビキニなんて始めて着たから……小乃子とハチマルがこれにしろって言うから……でもよかった。佐伯くんが褒めてくれて」

「本当さ委員長はスタイルがいいからね、似合ってるよ可愛いよ」


 宗哉の言葉で恥かしそうにしていた委員長の顔がパッと明るくなった。

 金持ちでイケメンの宗哉は昔からモテていたので女の扱いも上手い。


「委員長は自分の価値が分かっておらんのじゃ、顔も整っておるしナイスバディじゃ、そこらの男など一発でノックアウトできる武器をもっておるんじゃぞ」


 ハチマルが委員長の隣に並ぶ。

 英二と秀輝がゴクリと唾を飲んだ。

 2人に目が釘付けだ。

 ハチマルがスイカなら委員長はメロンだと思った。


「ハチマルも委員長もスタイルいいから凄く似合ってるな、なっ、秀輝」

「おっ、おう、マジでいい女だぜ、あとは口煩いところが無ければいいんだがな」


 英二と秀輝が慌てて誤魔化す。


「なんですって、あんたたちがちゃんとすれば何も言わないわよ」


 委員長が笑顔でおどけて怒る振りだ。

 初めてのビキニで恥かしそうにしていたが宗哉や英二に似合っているといわれて今は自信ありの表情だ。


 手持ち無沙汰で突っ立っている小乃子に英二が話し掛ける。


「小乃子も水着似合ってるよ、可愛いよ」

「なん……当たり前だ。あの2人には負けるけど、これでもスタイルには自信あるんだからな褒めても何もでないぞ、そうだな、ありがとうってくらいは言っとくかな」


 ぶっきらぼうにこたえる小乃子の顔が嬉しげな笑顔だ。


「なあなあ英二、早く海行こう、早く泳ぐぞ」

「はいはい、じゃあみんな泳ぎに行こうよ」


 サンレイに腕を引っ張られて英二が歩き出す。

 その後ろをみんなが笑顔でついていく。



 真っ白な砂浜に澄み切った青い海、その中をサンレイとハチマルが走り回ってはしゃいでいる。

 2人を追いかけているのは秀輝と小乃子だ。

 委員長は宗哉と日光浴をしながら楽しそうに談笑している。

 英二は泳いで疲れたのかパラソルの下で休んでいた。


「英二さん、お飲み物どうぞデス」


 サーシャが冷たいソーダを持ってきてくれた。

 メイロイドのサーシャとララミも水着を着ている。

 2人とも競泳水着みたいな水着だ。


 宗哉に命じられたのかララミはサンレイたちが溺れたりしないように監視している。


「ありがとうサーシャ、水着姿も綺麗だね」

「ありがとうございますデス、褒められると嬉しいデスよ」


 照れるように微笑むサーシャにつられるように英二も笑った。

 プログラムされている笑顔だと分かっているが可愛いものは可愛いのである。


「サーシャ、僕と委員長にも何か飲み物をくれるかな? 」


 いつの間に来たのか宗哉が頼むとサーシャが一礼して歩いていく、委員長は寝ながら日光浴を楽しんでいる。

 宗哉が英二の隣に座った。


「明日メイロイド工場見学をしないか? あの件も了承してくれると嬉しいんだけどな」

「あの件って……サンレイを実験に使うって話か、それなら断ったはずだよ」


 少し考えたあと英二の顔付きが険しく変わる。


「実験って怖い言い方をするなよ、少し調べさせてもらうだけだよ、何も危害は無いよ」

「ダメだ。そんな事させないよ、たとえサンレイが許しても俺が許さないからな、サンレイはロボットじゃないんだ。人工知能とかメイロイドに応用できるわけないだろ、この前消えそうになったのを宗哉も見ただろ、俺はサンレイを失いたくないんだ。だから悪いけどそういう話は無かった事にしてくれ」


 厳しい表情で断る英二の隣で宗哉が立ち上がった。


「そうか……英二くんがそう言うなら仕方ないね、協力して欲しかったんだけどね」


 向こうからサーシャが飲み物を運んで歩いて来た。

 サーシャを連れて宗哉が委員長のもとへと戻って行く、


「手荒な事はしたくなかったんだけどな」


 歩きながら宗哉が小さな声で呟いた。

 楽しそうに走り回るサンレイたちを見ている英二には当然聞こえていない。



 大きなシャチの浮き輪を背負うように持ってサンレイが走って来た。


「がお~、シャチだぞ、海のギャングだぞ、なあなあ英二、一緒に泳ぐぞ」

「儂はワニじゃぞ、大ワニじゃ、小乃子と一緒に乗って秀輝に引っ張ってもらうんじゃ、シャチとワニで決闘じゃ」


 ハチマルも大きなワニの浮き輪を取りに走って来た。


「おらも、おらもぉ~、おらもシャチに乗るから英二が引っ張る役だぞ」


 サンレイがピョンピョン跳ねながらおねだりだ。

 大きなシャチの浮き輪を背負ったままなので後ろから見たらシャチの浮き輪だけが跳ねているように見える。


「はいはい、じゃあシャチとワニの競争でもしますか」


 笑いながら英二が立ち上がった。

 サンレイに手を引かれて英二が駆けていく、楽しく遊んで夜はバーベキューを食べてあっという間に1日が終わった。



 サンレイたちは夜もはしゃぎ回って英二や秀輝などの部屋を行き来していたがいつの間にか静かになった。

 昼間あれだけ走り回ればぐっすり眠れるだろう。

 英二はなかなか寝付けずにベッドでゴロゴロ寝返りを打っていた。

 いくら寝心地の良いベッドでも枕が変わるとなかなか眠れないものである。


 やっとうつらうつらし始めたころ部屋のドアがそっと開いた。

 トトトッと足音が聞こえて英二が掛けていたタオルケットの中に何かが潜り込んでくる。

 何事かとバッと起きるとサンレイが丸まっていた。


「なんだサンレイか、吃驚させるなよな、どうしたんだハチマルと喧嘩でもしたのか」

「そうじゃないぞ、こんな楽しい所に来て喧嘩なんかしないぞ、英二と一緒に寝るんだぞ、だってだって、英二と一緒がいいんだぞ、ハチマルが来てから部屋も別になって英二と一緒に寝てなかったからな、今日は一緒だぞ」


 はにかんだ可愛い笑顔のサンレイを見て英二が溜息を付く、


「仕方ないな、でもこのデカいベッドなら寝相悪くても蹴り落とされる心配無いな」

「なあなあ英二、明日はもっと楽しくなるよな」

「うん、明日もいっぱい遊ぼうね、だからしっかり寝ないとな」


 ニパッと笑顔を見せるサンレイを英二がギュッと抱き締めた。

 いつの間に来たのかハチマルが抱きあう2人の上からガバッと覆い被さる。


「抜け駆けはいかんぞ、儂も英二とラブラブじゃ」

「うわっ、はっ、ハチマル…… 」


 英二が上ずった声を出す。

 薄いタオルケットの上から抱きつくハチマルの爆乳が気持ち良過ぎて体から力が抜けていく、


 無邪気なハチマルにいつまで我慢できるだろう? このまま襲えばどうなるだろう? サンレイがこの場にいなければ……、英二の頭の中をよからぬ妄想がグルグル回る。


「んだ、起きてたんかハチマル、そっと出てきて旨くいったと思ったのに」


 サンレイがムスッとした顔でハチマルを睨んだ。


「明日もいっぱい遊ばんといかんからな、依り代である英二に元気を貰わんとな」

「依り代って? 確かハチマルが出てきたときも言ってたよな」


 英二が不思議そうな顔をして聞いた。


「おらたちがこの世に形を成すために英二からエネルギーを貰ってるんだぞ」

「人間が言うところの気とか霊力とか言うものじゃ、儂らが人の姿を維持するために必要な分だけ貰っておる。お主は凄い力を持っておるんじゃぞ、普通の人間ならサンレイ1人でもフラフラになって寝込むほどじゃがお主は儂ら2人でもまだ余力がある」


 大雑把にこたえるサンレイに続けてハチマルが説明してくれた。


「英二の霊力ならおらの5人分くらいは大丈夫だぞ」


 隣で横になっているサンレイがにぱっと可愛い笑みを見せた。

 サンレイが5人なんて考えただけでゾッとするな……、英二は苦笑いだ。


「力を貰うといっても英二には何も害は無いから安心せい、儂もサンレイも基本的には山で溜めた霊力を使っておる。英二に貰っておる分は繋がりじゃ、この地に居続けるために必要じゃからの、何かあって大きな力が必要な時にはお主にもそれなりに負担が掛かるがの、じゃが今の平和な世には儂らの力など必要無いじゃろ」


 苦笑いする英二を見て心配していると思ったのかハチマルが付け加えて説明してくれた。


「そうなのか……サンレイとハチマルが必要なら俺の力はいくらでも使ってくれ、2人が一緒に居るのに必要なら俺は何でもするからさ」

「おらたちが本気で力を吸い取ったら英二は死ぬぞ、だから何でもするなんか言うな」

「儂らが本気を出すような大きな力は必要ないじゃろう、あったとしても英二を巻き込むなどせん、じゃから今まで通り少しでいい、じゃからこれからもずっと一緒じゃ」

「そうだぞ、おらもハチマルも英二を守る神様になったんだぞ」

「霊力は元より心の相性が通じなければ依り代となることはできん、心の通じた本当の依り代となれば互いに成長するのじゃ、儂らと英二の関係はまさにそれじゃ、守り神となった儂らが英二を守り、英二が儂らに力を与えてくれるんじゃ」

「だからな、だからな、ずっとずっと一緒だぞ」


 2人の話を聞いて英二の頭から邪な妄想が消える。

 ハチマルを襲っても逆に殴られるだけだよな……、英二はサンレイと反対側にハチマルを寝かせた。


「うん、ずっと一緒だよ、サンレイ、ハチマル」


 英二にこたえるかのようにサンレイとハチマルが左右から抱きついた。

 ハチマルの爆乳は物凄く気持ちよかったが不思議と邪な気持ちは湧いてこなかった。


 ベッドに3人並んで眠った。

 先程まで寝つきが悪かった英二だがサンレイとハチマルが一緒だと安心したのかすぐに眠りに落ちた。

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