第51話
倒れていた初物小僧が呻きながら上半身を起こした。
「ぐがが……バカな……人間に……ぐぐぅ、くそぅ…… 」
「まだ生きてるのかよ」
顔を顰める秀輝の前にサンレイが出てくる。
「妖怪だからな、爆発くらいじゃ死なないぞ」
「英二気絶したから選手交代がお」
ガルルンが抱えていた英二を秀輝に渡す。
「んだ、ガルルンがやるんか? 」
「ガルがぶちのめすがお、一暴れするがう、サンレイはバリアでみんなを守るがお」
サンレイの前にガルルンが立った。
「わかったぞ、任せるぞ」
「がふふん、ガルに任すがお、デカ目を目玉焼きにしてやるがお」
とぼけ声を出すサンレイの前でガルルンがギラッと目を光らせた。
話しが聞こえたのか初物小僧が顔を強張らせる。
「山犬が……このままでは……今の俺様では山犬には勝てん、仕方ないこれを使おう」
初物小僧が懐から丸薬を取り出した。
ハマグリ女房から貰った水胆だ。
ガルルンが跳ねるようにやってきて初物小僧と対峙する。
「がふふふっ、あのまま倒れていたらよかったがお、ガルは英二みたいに優しくないがう、怪我だけじゃ済まないがお、お前死ぬがお」
爪を伸ばしたガルルンが初物小僧の向かいで牙を見せてニヤッと笑った。
「ぐははははっ、勝つのは俺様だ」
初物小僧が丸薬を飲み込んだ。
「何か食べたぞ」
サンレイが呟いた。
次の瞬間、初物小僧の体から湯気のようなものが立ち昇る。
「ヤバいぞガルルン! 」
「わかってるがお」
叫ぶサンレイの前でガルルンが突っ込んでいく、
「先手必勝がお、がうがうパァ~ンチ! 」
ガルルンの拳がぶち当たるが初物小僧はびくともしない、逆にガルルンが吹っ飛んで戻ってきた。
「ガルのパンチが効かないがお」
「マジかよ、ガルちゃんのパンチは豆腐小僧が吹っ飛ぶくらいだぜ」
秀輝が驚きの声を上げる。初物小僧は豆腐小僧よりも弱いと思っていたので驚いた。
「何だあいつ…… 」
小乃子の指差す先で初物小僧の体がムクムクと膨らんでいく、
「ぐははははっ、凄いぞ、力が湧いてくる。この力があれば山犬など敵ではないぞ、ぐははははっ」
青白い小柄な少年のような姿はもう無い、筋肉ムキムキの巨漢になった初物小僧が目の前に居た。
「何やったんだあいつ……体だけじゃないぞ、妖力が滅茶苦茶大きくなってるぞ」
顔を顰めるサンレイの後ろで宗哉が口を開く、
「さっき何か飲んだよね、たぶんアレが原因だと思う」
「そだな、それ以外ないぞ、一つ目がこんな妖力持ってるわけないからな」
サンレイの渋面を見て初物小僧が笑い出す。
「ぐははははっ、よくわかったな、そうだ薬の力だ。水胆の力だ。この力があれば貴様らなど敵じゃない、俺様がぶち殺してやる。その後で人間を喰らって大妖怪になってやる」
勝ちを確信したのか初物小僧がペラペラと饒舌だ。
ガルルンがバッと跳んでサンレイの前にやってくる。
「急に妖力上がったがお」
ガルルンが不思議そうに訊いた。
「ドーピングだぞ、ガルルンに敵わないからズルしたぞ、水胆って薬使ったって言ってたぞ、そんで妖力上がったんだぞ」
「水胆がう? サンレイ知ってるがお」
子犬のように首を傾げてガルルンが訊いた。
「おら知らないぞ、ハチマルが居てくれたらな…… 」
険しい顔でサンレイが首を振った。
ガルルンが前に向き直る。
「薬がお、急に力が上がった原因がわかったらいいがう」
構えるガルルンを見て委員長が心配そうに話し掛ける。
「ちょっ、ガルちゃん1人で戦うつもりなの? サンレイちゃんと2人で戦いなさいよ」
「そうだよ、ガルちゃん1人じゃ心配だよ、高野くんはまだ起きないし…… 」
晴美も心配そうに小さな声で言った。
「心配無いぞ、あの程度でガルルンを倒そうなんて千年早いぞ」
ニパッと笑うサンレイの向こうでガルルンが委員長と晴美を見つめた。
「いくらパワーアップしても雑魚妖怪は雑魚妖怪がお、それにガルもパワーアップできるがお、ガルは只の山犬じゃないがお、神狼の末裔の火山犬がう、できる女がお」
とぼけ顔でこたえるガルルンを見て委員長だけでなく秀輝たちの顔にも安堵が広がる。
ニヤリと口元を不敵に歪めて初物小僧が口を開く、
「これが俺様の本当の力だ。一つめだ! 初めが肝心、一番大事、初物好きの妖怪、それが俺様、初物小僧だ。もちろん俺様もDTだ。300年守り続けたDXDTが俺様だ」
「DTを自慢してるがお」
バカにするガルルンを初物小僧が睨み付ける。
「自慢して何が悪い? 清く正しく美しい、DTこそ男の中の男なのだ。俺様が只の一つ目小僧でないことをみせてやる」
初物小僧がクイッと腰を振る。
「DT毒を喰らえ! 」
黄色い体液が飛んでくるがガルルンはさっと横に跳んで避けた。
体液が参道の脇にある大きな石に掛かる。
「凄く臭いぞ」
ガルルンが顔を顰めて鼻を押さえる。
声を震わせて委員長が石を指差す。
「石が……何なのアレは…… 」
「キモい、小さな石が出てきてるぜ」
小乃子の横で晴美も気分が悪そうな青い顔だ。
黄色い体液が付いた大きな石からゴルフボールくらいの小石がボコボコと生えるように出てきて石のツルツルだった表面が蓮の花が種を付けたようにボコボコになっている。
「んだ? あいつの妖力か? 石を溶かすんか? でも増えてるように見えるぞ」
首を傾げるサンレイにガルルンが振り返る。
「石がボコボコになったのはどうでもいいがお、それよりも物凄く生臭いがお」
鼻を押さえるガルルンを見て初物小僧が得意気に話し始める。
「溶けるだと? その逆だ。その石は増えているのだ。大石が小石を産んだのだ。俺様が300年溜めたDT毒だ。あらゆるものを孕ませる事が出来るのだ。石だろうと木だろうと生物以外のものでも何でも子を産むのだ。もちろん生き物も孕む、人間も妖怪も、男も女も関係なく、俺様のDT毒が掛かれば何でも孕むのだ」
ドヤ顔で話す初物小僧を見つめていた全員がピキッとその場に固まった。
「なっ、何言ってんだ……おっとっとと…… 」
気を失っている英二を落としそうになって秀輝は慌てて背負うと改めて言い直す。
「孕むって……何考えてんだ」
「石を妊娠させるほどDTを拗らせたんだぞ」
流石のサンレイも厭そうに顔を歪めている。
「マジかよ! 冗談じゃない最低の術だな」
言いながら小乃子が秀輝の後ろに回った。
「おい、何の真似だ? 」
振り返って睨む秀輝に小乃子がとぼけ顔で口を開く、
「あたしの壁になれ、ゴリラは子を産んでも動物園が引き取ってくれるからな」
「誰がゴリラだ! 」
怒る秀輝に背負われている英二が落ちないように小乃子が手を当てる。
「怒鳴るなよ、英二がビクッてなったぞ」
「まったくお前は…… 」
怒りながらも小乃子を庇うように前に立つのが秀輝のいいところだ。
委員長も秀輝の横にやって来る。
「孕むって……考えただけで鳥肌立つわよ」
「怖いよぉ…… 」
晴美が宗哉にしがみつく、ガルルンが居ないので傍にいた宗哉の腕に無意識で抱き付いたのだ。
「大丈夫だよ、サンレイちゃんも僕も居るからね」
優しく声を掛けると宗哉がメイロイドに命じる。
「ララミ、サーシャ、前に出ろ、委員長たちの盾になれ」
「御主人様、了解しましたデス」
「了解です。小娘どもを守ればいいのですね」
サーシャとララミが委員長たちの前に立った。
「篠崎さんたちはララミとサーシャの後ろにいてくれ、メイロイドは変な攻撃を受けてもボディを交換すればいいからね」
どんな時でも女の子を邪険に扱わないのが宗哉だ。
前に立つサンレイが振り返る。
「心配無いぞ、おらがブンブンバリアーで防いでやるからな」
「頼むぜサンレイちゃん」
「おう、任せとけ、英二を頼むぞ」
英二を背負っている秀輝に微笑むとサンレイが前に向き直った。
「ガルルンやったれ!! 孕んだら認知して貰えばいいぞ」
初物小僧と対峙しているガルルンが振り返る。
「厭がう、ヘンタイ妖怪の子なんか孕みたくないがお、ガルは英二の子を孕むがお」
サンレイがパチンと手を叩く、
「んじゃこうするぞ、ガルルンが孕んだら英二に認知して貰うんだぞ、そしたら英二と結婚できるぞ」
「ダメでしょサンレイちゃん、なに無茶苦茶言ってるのよ」
止めようとする委員長の言葉をガルルンの大声が遮る。
「マジか! 英二と結婚がお…… 」
パッと顔を明るくするガルルンにサンレイが企むような笑みをして続ける。
「そだぞ、お腹摩ってあなたの子だぞって言ってやればいいんだぞ」
ガルルンが腹を摩りながら口を開く、
「英二の子がガルの腹に……幸せな家庭を作るがお」
妄想してニヘッと笑うガルルンを見てサンレイが悪い顔でニヤッと笑う、
「温かな家庭を作るといいぞ、おらも応援してるぞ」
いつの間に目を覚ましたのか英二が大声を出す。
「一寸待て! なんで俺の子になってんだ? 俺は何もしてないよねガルちゃん」
秀輝に支えられて英二が続ける。
「ガルちゃん騙されるな、俺が何もしてないのに認知なんてしないからな」
ガルルンが泣き出しそうな顔をして震える声を出す。
「酷いがお、ガルとは遊びだったがう……あんなに愛し合ったがお……それなのに……酷いがう、せめて認知はして欲しいがお」
「鬼畜だぞ、散々弄んでガルルンを捨てるなんて英二はケダモノだぞ」
バッと振り返って非難するサンレイに英二が大声を出す。
「サンレイは黙ってろ!! 何もしてないからな! 赤ちゃん出来るようなこと何もしてないだろが」
「英二の子じゃないがお? 」
子犬のように首を傾げるガルルンを見て英二が頷く、
「ガルちゃんとは何もしてないのに赤ちゃん出来るわけないよね、って言うか、妊娠なんてしてないだろ、初物小僧の体液に気を付けろって話しだろ」
「がわわ~~ん、またサンレイに騙されたがお」
バカ犬だ……、悔しがるガルルンを見て英二だけでなく秀輝たち全員が何とも言えない表情だ。
キッと怖い顔をしてガルルンが前に向き直る。
「こうなったのも全部お前の所為がお、英二と明るい家庭を気付くためにもお前を倒すがお、お前を倒して英二の子を孕むがお」
後ろで聞いていた委員長が英二に向き直る。
「何か凄いこと言ってるわよ」
「ガルちゃんに手を出したら承知しないからな」
小乃子だけでなく晴美も怖い目で睨んでくる。
「何もしてないから……ガルちゃんが言ってるだけだから、サンレイも居るんだぞ、変な事なんて出来ないからな」
必死で誤魔化すように言うと英二がサンレイの背を突っつく、
「ガルちゃん大丈夫かな? サンレイも手を貸してやれよ」
「心配無いぞ、黙って見てろよ」
振り向かずにこたえたサンレイの前でガルルンと初物小僧が戦いを再開する。
初物小僧が腰をクイッと振った。
「300年溜めた俺様のDT毒を喰らえ!! 」
飛んでくる黄色い体液をガルルンが余裕で避ける。
「当たらなければどうということはないがお」
体液が地面に落ちる。
黄色い液がべったりと付いた土がモコモコと盛り上がってきた。土が子を産んで増えたのだ。
「キモすぎるわよ」
サーシャの後ろに隠れるように顔を出していた委員長が呟いた。
「ちょこまかと……喰らえ! 」
「がふふん、そんなもの当たらないがお」
初物小僧が連続で飛ばした体液をガルルンが全て余裕で避けていくのを見て秀輝が感嘆の声を上げる。
「おおぅ、全部避けてるぜ、流石ガルちゃんだ」
「おらとタメを張る素早さのガルルンにあんな攻撃が効くわけないぞ、薬を使っても雑魚妖怪は雑魚だぞ、ガルルンとはレベルが違うからな」
振り返りもしないでサンレイが得意気に言った。
初物小僧がクルクルと両手を回す。
「二つ目回し」
「お前の気なんて見えてるがお」
ガルルンが右手の爪を伸ばして自身の足下を切るように振った。
初物小僧が足を掴んだ気を爪で切ったのだ。
しゃがんだガルルンの隙を突くように初物小僧が腰を振る。
「DT毒を喰らえ」
黄色い体液がガルルンに迫る。
「焔爪! 」
くるっと体を捻ったガルルンが左手で体液を叩き切った。
ガルルンの目の前でジュッと音を立てて分断された体液が地面に落ちる。
「バカめ、俺様のDT毒は指先に付いただけでも確実に孕むのだ」
勝ちを確信してニヤッと笑う初物小僧を見てサンレイが口を開く、
「バカはお前だぞ、汚い汁なんてガルルンには一滴も付いてないぞ」
「がふふん、ガルは触ってないがお」
鼻を鳴らすガルルンの左手の爪から青い炎が伸びている。
「触っていない? 俺様のDT毒が…… 」
驚く初物小僧の向かいでガルルンが得意満面で青い炎を灯す左手を見せた。
「がふふん、焔爪がお、火で切ったからお前の汚い汁には触ってないがお、ガルは只の山犬じゃないがう、神狼の血を引く大妖怪の火山犬がお、火を使うのは得意がお」
ガルルンが左手をさっと振った。
青い炎が一瞬で大きな赤い炎になって初物小僧に迫る。
「ぐははっ、この程度…… 」
バッと跳んで避けた初物小僧の腹を炎の矢が貫く、
「グギャギャ~~ 」
初物小僧が大きな悲鳴を上げながら仰け反るように倒れた。
ガルルンの右手が煙を上げている。
「言ったがお、火を使うのは得意がうって……これは毛火矢がお、只の火矢じゃないがう、ガルの妖力が籠もってるがお、お前如きなら殺せるがお」
初めの攻撃は囮だ。
初物小僧が避けるのを承知で右手の火矢を放ったのだ。もっともガルルンは計画などは立てていない、これまでの経験と野生の勘で技を使ったに過ぎない。
倒れた初物小僧は腹から血を流して動かない。
「やったぜ、流石ガルちゃんだ」
駆け付けようとした秀輝たちをガルルンが止める。
「ダメがお! 」
大きな声で言った後、ガルルンが倒れている初物小僧を見つめた。
「さっさと起きるがお、ガルに死んだ真似なんか通用しないがお」
初物小僧がゆっくりと上半身を起こす。
「ぐははっ、隙を付いて殺してやろうと思ったんだがな、まあいいだろう」
バンッと跳ぶように立ち上がる。
「ぐははははっ、こんなものが効くかぁ~~ 」
大声で叫ぶ初物小僧の腹に空いた大怪我がみるみる塞がっていく、
「好きな車はDT―R、電話は格好良くデラックスなDTのKDDT、もちろんアニメはドラゴン○ールDTが好きだ。PTTは反対だがDTTは賛成だ。DXなDTである俺様が山犬なんぞに負けるものか」
訳のわからないことを叫ぶと初物小僧がガルルンを見据えた。
「ぐははははっ、貴様の攻撃など俺様には通じん、水胆の力があれば俺様は無敵だ」
初物小僧がガルルンに殴り掛かる。
「押さえ込んでDT毒を喰らわせてやる」
ガルルンがスッと姿を消した。
「ガルガルキィ~ック! 」
初物小僧の後ろに現われたガルルンが後頭部に蹴りを食らわす。
「ぐががっ…… 」
初物小僧が前につんのめって転がった。
「がふふん、お前の汚い液で晴美ちゃんに貰った着物を汚すわけないがお」
倒れた初物小僧をガルルンが見下ろす。
「バカな……俺様の目で見切れないなんて…… 」
バッと振り返った初物小僧を見てガルルンが八重歯のような牙を見せてニヤッと笑う、
「少し本気を出しただけがお、お前なんかに見切れるわけないがう、山犬を嘗めるながお」
ガルルンが右手を突き出す。
「お前なんか相手にもならないがお、降参しないなら殺すがお」
「殺す? この俺様を? ぐはははっ、女などに俺様が殺されるか! ぐははははっ 」
全身から湯気を立たせて初物小僧が起き上がった。
「また妖力が上がったぞ、あの薬凄いぞ」
後ろで見ていたサンレイが感心するように言った。
「何度でも殺してやるがお」
ガルルンが右手の爪に青い炎を灯して斬り掛かる。
「焔爪! 」
「ググゥ…… 」
胸を切られた初物小僧が苦しげに唸る。
「グググ……こんなものは……こんなものが俺様に利くかぁ~~ 」
叫ぶと共に胸の傷が塞がっていった。
後ろで見ていた英二がサンレイの肩を叩く、
「ヤバそうだよ、サンレイも力を貸してガルちゃんと2人で戦ってくれ」
「そうだね、幾らでも強くなるのなら今のうちに倒した方がいいね」
英二の隣りにいた宗哉だけでなく秀輝たちも同意見なのかサンレイの背を見つめている。
サンレイがくるっと振り返った。
「心配無いぞ、コップに水を入れても満タン以上は入らないぞ」
話の途中でサンレイが考える。
「う~んと、ちょっと違うな、風船だぞ、風船にいっぱい空気を入れたらどうなる? 空気を入れ続けるんだぞ」
何かに気付いたのか宗哉がポンッと手を叩く、
「風船か……空気を入れ続けたら耐えられなくなって破裂するね」
「そだぞ、風船と同じだぞ、あいつはもう限界だぞ、だから黙って見てればいいぞ」
サンレイがニッコリと笑顔で言った。
ガルルンが構えていた腕を降ろす。
「ガルの勝ちがお」
「ぐははははっ、何を言っている。俺様は不死身だ。水胆の力があれば貴様らなどは………… 」
大笑いする初物小僧の動きが止まった。
「ぐぐっ、グガガァガァァ~~ 」
先程塞がった腹が割けて血が噴き出す。
腹だけではない、英二に切られた背や脇腹からも血が溢れている。
「ぐががっ……何が……力が抜けていく………… 」
膝を着いた初物小僧の体が縮んでいく、
「一つ目の妖力が縮んでいくぞ、限界を越えて妖力が弾けたぞ」
前に歩いて行こうとするサンレイを英二が止める。
「何が起きたんだ? 俺が付けた傷からも血が出てるけど」
「いくら妖怪でもあんな無茶が持つわけないぞ、体が耐えきれなくなって自爆したんだぞ」
初物小僧に近付いていくサンレイの後を英二たちも追う、
「ぐがが……がひぃぃ……力が………… 」
倒れ込んだ初物小僧の姿を見て英二たちが息を呑む、
「ヨボヨボのお爺ちゃんみたいになってるよ」
小乃子が指差す先で初物小僧は元の青白い少年ではなく皺くちゃの老人のようになっていた。