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第39話


 翌日、期末試験前なので午前で授業が終わり昼前にみんな帰って行く、残っていた英二たちの前に昨日の女が現われた。


「約束は守るようね、無責任な人間が多い中、少しは見直したわよ」


 着物姿の女がサンレイたちを見回した後で英二に熱い視線を送る。


「ああん、英二さん、今日から貴男は私のものよ」

「まだ勝負は決まってないだろ……何で俺なんだよ」


 妖怪とはいえ可愛い女に言い寄られて内心嬉しかったが昨日のこともあるので英二は平静を装い迷惑顔だ。


「うふふふっ、それは秘密よ、私に勝てば全て教えてあげるわよ」


 そこらの男が見たら一目惚れしそうな愛くるしい笑みで見つめられて英二の頬が赤く染まっていく、

 サンレイとガルルンが英二を押し退けて前に出る。


「にひひひひっ、おらが勝ってお前の正体も何もかも全部ひっぺ返してやんぞ」

「がふふん、笑ってるのも今のうちがお、できる女のガルに勝負を挑んだこと後悔させてやるがお」


 料理なんて作ったことないくせに、その自信は何処から湧いてくるんだろう……、後ろで英二が不安気な顔で2人を見つめた。


「勝負会場は佐伯重工のサービスセンターに用意してある。車で送るよ、途中のスーパーで食材と調味料を買って行こう」


 宗哉が用意してくれた2台の車に乗って会場へと向かう、メンバーはサンレイとガルルンと英二に秀輝に宗哉に委員長と小乃子と晴美、そして勝負を挑んできた妖怪女だ。

 大型の10人乗りのバンに全員乗り込み宗哉が普段通学に使っている外車にはララミとサーシャが乗っていた。



 和泉高校から車で40分ほどの所にある佐伯重工サービスセンターはララミやサーシャのメンテを行うために週に一度は訪れる宗哉にとって馴染みの場所である。

 サービスセンターの大きなガレージの一角を使って料理勝負を行う、調理道具やシステムキッチンなどそこらのレストラン顔負けの設備が昨日急ピッチで用意された。

 相手は妖怪である。

 何が起こるか分からないので他の施設を使うことは避けたのだ。

 佐伯重工なら大抵のことを揉み消すことができる。


 食材と調味料などを買うために途中にある大型スーパーへと車が入って行った。


「デカい店だぞ、いろんなアイスがいっぱいありそうだぞ、アイスとウィンナーが食べ放題だぞ」

「わふふ~ん、良い匂いがするがお、お肉の匂いに魚の匂いがう、チーカマとドライソーセージが食べたいがお」


 喜ぶサンレイとガルルンを後ろから英二が押さえる。


「アイスやチーカマ買いに来たんじゃないからな、勝負だからな」


 2人が同時に振り返る。


「わかってんぞ、おやつは300円までだぞ」

「チーカマはおやつに入らないがお、おかずがお」

「わかってないからな」


 嬉しそうな笑みでこたえる2人を弱り切った顔で叱りつけた。

 宗哉が笑いながら割って入る。


「あははははっ、じゃあこうしよう、帰りに寄ってあげるからアイスでもチーカマでも好きなだけ買えばいいよ、だから今は勝負の材料だけにしようね」

「ほんとか宗哉? 約束だぞ、やったぁあぁ~~、アイス儲けたぞ」

「わふふ~~ん、チーカマとドライソーセージいっぱい買って貰うがお」


 大喜びする2人を見て英二が諦め顔で口を開く、


「勝たないといけないんだからな、負けたらアイスもチーカマも無しだからな、俺を賭けた勝負なんだからな」

「わかってんぞ、アイスも英二もおらのものだぞ」

「がふふん、心配無いがお、チーカマも英二もガルが貰うがお」


 自信満々な2人を見ても不安しか湧いてこない。


「余裕なのも今だけよ、直ぐに泣きべそかかせてあげるわ、そして英二さんは私のものになるのよ、うふふふっ、待っていてね英二さん」


 妖艶に笑うと女はスーパーの中へと入っていった。

 委員長がサンレイの手を握る。


「私たちも行きましょうか、料理作るのに手を貸すのはダメだけどアドバイスや食材選びはいいって事だからね」

「私、昨日肉じゃが作ったよ、ガルちゃんが作るっていうから練習に作ってみたんだ」


 恥ずかしそうに言う晴美の手をサンレイが掴む、


「委員長と晴美ちゃんがいれば百人力だぞ」


 2人の手を引いて楽しそうに話をしながらサンレイがスーパーに入っていく、その後をガルルンと小乃子が続いた。


 不思議そうな顔をしたガルルンが隣を歩く小乃子の袖を引っ張る。


「肉ジャガーの肉ってジャガーのお肉がお? 」

「肉じゃがの肉って…… 」


 少し考えてから小乃子がニヤッと悪い笑みになる。


「よく知ってるな、流石ガルルンだ」

「がふふん、ガルはできる女がお、何でも知ってるがお」

「でも少し違うぞ、肉じゃが作りすぎてジャガーが少なくなってな、ジャガーの肉使うの禁止になったんだ」

「ジャガーのお肉売ってないがお? がわわ~~ん、それじゃ肉ジャガー作れないがお、どうしたら…… 」


 狼狽えるガルルンの頭を小乃子がポンポン叩く、


「心配無いよ、今ではジャガーの代わりに近い仲間のヒョウ使ったり、お肉の王様ライオンを使ったりしてるんだぞ」

「安心したがお、それじゃガルはライオンのお肉使うがお、百獣の王ライオンを使って最高に旨い肉ジャガー作るがお」


 ニパッと可愛い笑みを見せるガルルンの頭をポンポン叩きながら小乃子が必死で笑いを堪えた。

 女子たちが全員スーパーへと入って行くのを見て秀輝が英二の顔を覗き込む、


「とんでもないこと言ってるけどガルちゃんは肉じゃが作るみたいだぜ」


 英二を挟んで反対側に宗哉が立つ、


「肉じゃがか……鍋で煮込むだけだから調味料の分量さえあえば食べられないって事は無いだろうから一安心だね」

「篠崎さんが得意そうだから肉じゃが作るガルちゃんはいいとしてサンレイは何を作るんだろう…… 」


 不安気な英二が秀輝と宗哉と顔を見合わせる。



 秘密だと言って英二たち男には何も教えてくれなかったがサンレイとガルルンは女子同士相談して昨日のうちに何を作るのかは既に決めてあるらしい、スーパーに入ると目当ての食材売り場に真っ直ぐ向かって行った。

 小乃子と一緒に歩くガルルンが変な歌を歌い始める。


「じゃが~、じゃが~、肉ジャガー、がお~♪ 」

「凄い歌だな」


 買い物籠を持つ小乃子にガルルンがニッコリと振り向いた。


「がふふん、ガルが作った肉ジャガーの歌がお、でも本当はジャガーじゃなくてライオンの肉を使うがお、肉ライオンジャガーがお」


 前に向き直るとまた歌を歌いながら歩き出す。


「じゃが~、じゃが~、肉ジャガー、がお~♪ ライオン、ライオン、肉ライオンジャガ~~、がおぉ~~♪」


 肉売り場に歩いて行くガルルンと小乃子を英二たちが追っていく、


「肉じゃがの歌だってさ、ガルちゃん中々旨いぜ、今度カラオケ行こうぜ」

「あははっ、本当にいい声してるね、ロリボイスって言うのか可愛い声だ。試験終わったらみんなでカラオケ行って発散しようか」


 ニヤニヤする秀輝と爽やかに笑う宗哉を見て英二が溜息をつく、


「ライオンの肉とか言ってるよ、小乃子の冗談を本気にしてるんじゃ…… 」

「肉ライオンじゃがって言ってるからな」

「 ……本気にしてるな」


 3人が顔を見合わせて力無く笑った。


 英二たちが肉売り場に行くとガルルンがあたふたと売り場の端から端まで何度も往復していた。

 サンレイの所にでも行ったのか小乃子はいない。

 英二を見つけると困った顔をしたガルルンがトトトッと駆けてきた。


「ジャガーの肉もライオンの肉も無いがお、豚さんと牛と鶏だけがう、マトンって何がお? とんまのお肉がお? 」

「小乃子は何処行ったんだ? 」


 子犬のように首を傾げるガルルンは可愛いのでこのまま放っておこうとも考えたが変なものを作られては堪らないので教えることにした。


「マトンって言うのは羊のことだよ、それで肉じゃがの肉は牛だからな、ジャガーでもライオンでもないからね」

「マジがお? ジャガーじゃないのにジャガーって言うがお? 」

「ジャガーじゃなくてジャガイモの『じゃが』だからね牛のお肉とジャガイモを煮たものだから肉じゃがって言うんだよ」

「がわわ~~ん、小乃子に騙されたがう、牛の肉ならいっぱいあるがお、一番高いお肉を買うがお」


 大きく口を開けて大袈裟に驚くとガルルンは一番高いステーキ用の牛肉パックを掴んだ。


「それは焼くのに使う肉だ。肉じゃがならそんなに高い肉は必要ない、霜降りとか溶けちゃうぞ、じっくり煮込むんだから安いバラ肉でいい」

「バラ肉がお? バラ肉、バラ肉、牛バラバラ……これがお」


 ガルルンはステーキ用の肉を棚に戻すとバラ肉を足下に置いていた籠に入れた。


「小乃子のヤツ何処行った? ガルちゃん放って置いて…… 」


 ぶつくさ言いながら秀輝が肉の入った籠を持つ、


「がふふん、これで肉はオッケーがお、あとはイモと玉葱と赤いヤツがう」

「赤いヤツって何だ。人参だろ、肉じゃがなら人参と玉葱とジャガイモだ」


 ガルルンがハッとした驚き顔を向ける。


「英二凄いがお、なんでガルの作るのが肉ジャガーってわかったがお? 」

「わかるも何も肉じゃが~って歌ってただろ」

「がわわ~~ん、無意識に歌ってたがお」


 無意識だったのか……、英二だけでなく秀輝も痛い子を見る何とも言えない目付きになっている。


「しまったがう、秘密にして驚かす予定だったがお、バレたら仕方ないがお、美味しい肉ジャガー作ってやるがお」


 ガルルンは残念そうに頬を膨らませていたが直ぐにニッコリと可愛い笑顔に変わる。


「あとは野菜がお」


 ガルルンがトトトッと走って行く、


「小乃子どこ行った? サンレイの様子も見たいのに…… 」

「宗哉も消えたぜ、ララミもサーシャもいないぜ」


 先程まで後ろにいた宗哉が消えていた。

 仕方なしに英二と秀輝はガルルンを追っていった。


「じゃが~、じゃが~、肉ジャガー、がお~♪ じゃが~いも、じゃが~いも、いもジャガー、がおお~♪ 」


 野菜売り場を歩きながらガルルンがまた変な歌を歌っていた。


「じゃが~、じゃが~、肉ジャガー、がお~♪ サツマイモー、サトーイモ、ナガーイモ、ジャガーイモ、あったがう……2つあるがお? メークイン? 男爵? 肉ジャガー男爵……悪の幹部みたいで格好良いがお、男爵にするがお」


 ガルルンがイモを一つ一つ確認しながらジャガイモを手に取った。


「がふふっ、玉葱がお、近くにあったがう、玉葱はジャガーイモと友達がお? あとは人参がお」


 ジャガイモを持つ手と反対の手で近くにあった玉葱も持つと人参を探しに歩き出す。

 ガルルンが果物コーナーでぴったっと足を止める。


「わふふ~~ん、イチゴがお、イチゴは美味しいがお、赤がう……同じ赤いから人参の代わりにイチゴにするがお」

「待て、何にイチゴを使うつもりだ? 」


 追い付いた英二がガルルンの腕を掴んだ。


「肉ジャガーにイチゴのサプライズがお、人参より赤いがう、きっと美味しくなるがお」

「入れるな! 肉じゃがにイチゴなんて聞いたこともないからね、それにイチゴは茹でたら汁に色が出て実は白くなるから、ジャムに入ってるイチゴも白っぽくなってるだろ」

「そうがお? 残念がう、それじゃあイチゴはデザートに出すがお」


 秀輝の持つ籠にジャガイモと玉葱を入れるとガルルンはイチゴを持ってニコッと笑った。


「おっ、ガルちゃんの食事はデザート付きか」

「デザートならいいけど肉じゃがには絶対に入れるなよ」


 楽しそうな秀輝の隣で英二が心配顔だ。


「あとは人参がお」


 ガルルンはイチゴを籠に入れると人参を探しに行った。


「わふっ、人参はジャガイモの反対側にあったがお」


 後ろの棚で人参を見つけて材料は全て集まった。


「これで全部揃ったがお、あとは調味料がう」


 籠の中を確かめるように見た後でガルルンがトトトッと走って行った。


「調味料か……何買うのかわかってるんだろうな? 小乃子何処行ったんだ。まったく」

「サンレイちゃんの所に行ってるんじゃないのか? 宗哉と一緒だぜ」


 溜息をつく英二と先程からずっと楽しそうな秀輝がガルルンの後を追って調味料コーナーへと向かった。



 調味料の置いてある棚には缶詰やインスタントラーメンなども一緒に並んでいる。


「いっぱいあるがお……こんなに沢山あったら何を買うのかわからなくなるがお? 」


 キョロキョロ棚を見ていたガルルンがインスタントラーメンの棚でピタッと止まる。


「ラーメンがお、ガルは豚骨が好きで英二は塩ラーメンが好きがお」


 豚骨と塩ラーメンに伸ばした手を英二が止める。


「待て! ガルちゃんは何を作るつもりだ? 肉じゃがじゃなかったのか? 」

「そうがお、肉ジャガーを作るがう」

「じゃあラーメンいらないよね」

「 ……肉ジャガーラーメンという全く新しいジャガーがお」

「そんな変なものは作らなくてもいいです。勝負が掛かってるんだからね、ラーメンは今度にしてくれ」

「わかったがお、今度にするがお」


 ガルルンが名残惜しそうにインスタントラーメンを棚に戻した。

 そこへサンレイと委員長と晴美がやってくる。


「まったくバカ犬は仕方ないぞ、英二を賭けた勝負だぞ、真面目に作らないんだったら出なくていいぞ、おらが勝つとして足を引っ張るなよ」

「ガルちゃん食材はちゃんと買ったの? 」


 委員長が秀輝の持つ籠を覗き込んだ。


「小乃子そっちじゃなかったのか? いつの間にかいなくなったんだぜ」

「いないの? 肉じゃがの材料は簡単だから任せたのに……まったく」

「宗哉もいないから一緒に何処か行ったんだよ、あの女を見に行ったのかも知れないからさ、あんまり怒らないでくれよ」


 ムッとする委員長を見て英二が庇うように言った。

 サンレイと出会う以前の小乃子のことを苦手だと思っていた英二からは想像ができない行為だ。


「ララミとサーシャが一緒だし大丈夫だぞ」

「それもそうだな、それでサンレイちゃんは何作るんだ? 」


 興味津々の秀輝と一緒に英二が委員長の持つ籠を覗き込む、


「豚肉と生姜に牛蒡と人参か……何を作るのかわかったよ」


 材料を見て英二はピンときた様子だ。


「流石英二だぞ、おらはしょうがない豚焼きと牛蒡のチンピラを作るぞ」


 ニパッと笑顔でサンレイが教えてくれた。


「チンピラ牛蒡はわかるとして、しょうがない豚って何だ? 」

「ブタの生姜焼きと金平牛蒡のことだよ、両方とも俺の好物だ。サンレイはいつも変な呼び方するんだから…… 」


 首を傾げる秀輝に英二が説明した。

 2人を余所にサンレイが調味料を探しながら歌い始める。


「料理の基本はさしすせそ♪~、さ・お砂糖、し・お塩、す・お酢、せ・お醤油、そ・お味噌~~、最後の決め手は愛情たっぷり∞、美味しい料理を作りましょ♪~~ 」

「おっサンレイちゃんよく知ってるな」

「にへへへへっ、晴美ちゃんに教えて貰ったんだぞ、もう料理のエキスパートだぞ」


 秀輝に褒められてサンレイが嬉しそうに歌を続けた。


「寄生虫の基本もさしすせそ♪~、さ・サナダムシ、し・条虫、す・アニサキス、せ・線虫、そ・その他いっぱぁ~い、最後の決め手は虫下したっぷり∞、いろんな種類を集めましょ♪~~ 」

「そんなもの集めません! 料理作る時に寄生虫の話ししちゃダメです」


 怒鳴る英二を見てサンレイがニヘッと悪い笑みをする。


「サナダムシゲットだぜ、行けサナダムシ! 肛門からビロ~ン攻撃だってやるんだぞ」

「やりません、やらせません、サンレイは変な本読み過ぎですから」


 弱り顔の英二を制するように委員長が手を伸ばす。


「サナダムシって条虫の仲間だから『さ』と『し』が被ってるわよ」

「おおぅ、そうだぞ、じゃあ『し』はシラミにするぞ」


 ニパッと満面の笑みをするとサンレイがまた変な歌を歌い始める。


「ね~このお尻からにょ~ろにょろ♪ い~ぬのお尻からにょ~ろにょろ♪ 何だろな? 何だろな? 回虫さんでぇ~~す。こんにちは~~♪、い~ろんなおし~りからこ~んにちわ~、こんにちは~~♪ 」

「寄生虫の歌なんか歌わないの、他のお客さんに迷惑でしょ」

「委員長も寄生虫とかよく知ってるな」


 慌てて止める委員長に秀輝が不思議そうに訊いた。

 サンレイがピタッと歌を止める。


「委員長とは図書室で一緒に寄生虫の本読んでるからな、寄生虫仲間だぞ」

「変な言い方しないの、サンレイちゃんが漢字読めないから教えてあげてるんでしょ」


 流石の委員長も困った顔だ。


「2人とも緊張感全くないな…… 」


 呑気なサンレイとガルルンを見て英二が呟いた。


「サンレイちゃんもガルちゃんも勝つつもりでいるよね、相手は料理に自信あるみたいだよ、偵察に行った僕たちを見つけても動じもしなかったよ」

「勝つつもりと言うか既に勝った気でいるな」


 いつの間に来たのか宗哉と小乃子が後ろにいた。


「小乃子お前なぁ~~ 」

「悪い、悪い、肉じゃがの材料くらい英二も知ってるだろ? あの女が何作るのか気になってさ、それで見に行ったら宗哉もいてさ、2人で偵察してきたんだ」


 声を荒げる英二に小乃子は少しも悪いと思っていない半笑いで謝る。


「叱らないでやってくれ、久地木さんはサンレイちゃんとガルちゃんの役に立てればって思ってやったんだ。相手は妖怪だよ、下手したら何されるのかもわからない、それでも役に立ちたかったんだよ」


 庇う宗哉にわかっていると言うように手を伸ばすと英二が口を開く、


「わかってるよ、だから怒るんだ。宗哉にはララミとサーシャがいるから少しくらい危険でも俺もサンレイもそれ程心配しないよ、でも小乃子に何かあったらサンレイとガルちゃんが悲しむだろ、だからさ勝手に危ないことはするな、俺だって心配したんだからな」


 最後に言った『俺だって心配した』という言葉に小乃子がパッと顔を明るくした。


「 ……ごめん、今度から勝手なことしないように気を付けるからさ、心配してくれてありがとうな」


 照れながら謝る小乃子は可愛かった。


「まあ、今回は力で戦うんじゃなくて料理勝負だからな」


 赤くなって誤魔化す英二の肩に宗哉が手を置いた。


「僕も心配して欲しいな……冗談は置いておいて相手が作る料理がわかったよ」

「心配してるよ、ララミとサーシャのことだってさ、女の子の小乃子一人よりは安心ってだけだよ、それで何を作るんだあの女? あれ? ララミは? 」


 小乃子の事ばかり心配していた英二がララミがいないことに今気付いた。いつも宗哉の左右にいるララミとサーシャが今はサーシャだけしかいない。

 フッと笑うと宗哉が続ける。


「変な事はしないと思うがララミに見張らせている。あの女は親子丼とお吸い物を作るってさ、僕を見つけたら材料も調味料も全て見せてくれたよ」

「あたしも見せてもらったよ、親子丼は普通の鶏と卵と玉葱とか使ったやつだ。それでお吸い物は貝を使ったやつだよ、なんだっけなあの貝? アサリより大きいヤツ」

「ハマグリだよ、ハマグリのお吸い物だよ、ハマグリは良い出汁がでる。普通に作っても美味しいけどプロが作ると更に一段美味しくなる貝だよ」

「ハマグリか……デカかったよな、小さいお椀なら入らないくらいにデカいハマグリだったよ、1つ500円くらいする高いヤツだぜ」


 宗哉と小乃子が交互に話してくれた。


「本格的だな、委員長が教えてくれても勝てるかどうか…… 」


 英二が不安気に見るとサンレイは委員長と一緒に楽しそうに駄弁りながら調味料を選んでいる。

 ガルルンは晴美と秀輝と一緒だ。



「オイルサーディン? 」


 ふとサンレイが立ち止まった。


「なぁなぁ英二ぃ~、サーディンって何だ? ゴルゴか? ゴルゴのことか? 」


 オイルサーディンの缶詰を持って駆け寄ってくる。


「ゴルゴはサーティーンだ。13って意味だ。サーディンは鰯とか小魚のことでオイルサーディンは小魚のオイル漬けってことだ」

「なんだ。ゴルゴがオイルまみれになったかと思ったぞ」

「サンレイは漫画とかよく知ってるな、昼休みの話しにもちょくちょく出てくるし、あたし以上に知ってるよな」


 感心する小乃子の前でサンレイが自慢気に胸を張る。


「にへへへへっ、褒めるなよ、おらは神だからな何でも知ってんだぞ」

「褒めてないからな、サンレイの知識の源はテレビと漫画と図鑑だからな、変な事ばかり覚えて困るから余計なこと教えるなよ」


 弱り顔の英二を見てサンレイと小乃子が益々調子に乗って駄弁り始める。



 サンレイと英二と小乃子が話し込んでいるのをガルルンがチラッと見た後でガサッと棚から袋麺とカップ麺を取ると秀輝の持つ籠の中へと放り込んだ。


「ラーメン何するんだ? 」

「ガルのおやつがお、ガルは肉ジャガーよりカプメンが食べたくなったがお、怒られるから英二には内緒がう、塩分多いから食べちゃダメって言われてるがお、だから時々しか食べられないがう、犬とか猫の体にはよくないって言ってたがお」


 頼むように見つめられて秀輝は断れない。


「わかったぜ、見つからないように俺が隠して買ってやるぜ」

「わふふん、秀輝は優しいがお」


 ガルルンに抱き付かれて秀輝は気持ちよさそうに赤い顔をして浮かれていた。

 抱き付いたガルルンがプクッと頬を膨らませて秀輝を見上げる。


「英二は優しいけど色々煩いがお、玉葱とかチョコ食べちゃダメって言うがお、犬や猫はダメって言うけどガルは妖怪がお、そこらの犬猫扱いは止めて欲しいがう、ポンポン痛くなっても玉葱もチョコも食べるがお」

「いや、腹痛くなったら食べちゃダメだぜ、英二はガルちゃんのこと心配して食べるなって言ってんだよ」


 困って顔を顰める秀輝から離れるとガルルンが胸を張る。


「カップ麺が襲ってくるがお、ガルに酷い事する気がお、塩分なんかに負けない……でもビクンビクンって食欲に負けてしまうがう」

「エロゲーみたいだな、食欲に負けるのがガルちゃんらしいぜ」

「だから徐々に慣らしていくがお、塩分もネギも玉葱もチョコもいくらでも食べられるようになるがう、最終目標はネギ大盛りのラーメンが食えるくらいに頑張るがお」


 2人の後ろで黙って話を聞いていた晴美が悲しそうに口を開いた。


「ダメだよ、犬はネギ沢山食べたら死んじゃうから、慣れるとかそう言うんじゃ無いからね、ガルちゃんが病気になったら悲しいよ、高野くん泣いちゃうよ」


 ガルルンが振り返ると晴美が泣き出しそうな目で見つめていた。


「わかったがお、ネギとチョコは諦めるがう、晴美を悲しませたくないがお」


 ニパッとガルルンが笑うと晴美も頷いて笑顔になった。

 おとなしくて優しい晴美はサンレイだけでなくガルルンも大好きである。



 英二が近付いてきて秀輝が籠の中のラーメンをサッと隠す。


「ガルちゃんは調味料買ったのか? 」

「ああ、こっちは晴美に聞いて全部揃えたぜ」

「んじゃ、買い物は終わりだぞ」


 サンレイは調味料選びどころか全て委員長に任せっきりである。

 そこへララミがやって来て宗哉に何やら報告した。


「相手も終わったようだね、じゃあ勝負会場へ行こうか」

「会計は任せたぞ宗哉、んで帰りにアイス買うのも忘れるなよ」

「ガルのチーカマも頼むがお」


 偉そうに胸を張るサンレイの隣でガルルンが甘えるように宗哉を見上げる。

 顔を顰めた英二がサンレイを睨み付けた。


「奢って貰うんだろ? ガルちゃんはともかく何でサンレイは偉そうなんだ」

「あははははっ、構わないよ、サンレイちゃんは神様だからね、偉くて当然さ」

「そだぞ、おらは神様だぞ、そこんとこ忘れるなよ英二」


 ニヤッと意地悪顔をしたサンレイが英二の胸をポンポン叩いて歩き出す。


「まったく…… 」


 顰めっ面で呟く英二に秀輝が買い物籠を渡す。


「俺はついでに買いたい物あるからガルちゃんの籠頼むぜ」


 ガルルンが入れたラーメンを隠すように後ろに持っている。


「何だよ? 帰りでいいだろ? 」

「今欲しいんだよ、頼んだぜ」


 面倒臭そうに言う英二を置いて秀輝が逃げるように走って行った。

 遠くのレジへと走って行く秀輝を見てガルルンが鼻を鳴らす。


「がふふん、上手くいったがお、ラーメン楽しみがう」

「ラーメン? そんなの買ったのか? 英二に怒られるぞ」

「サンレイにも一個あげるがお、だから内緒がう」

「仕方ないなぁ~、んじゃ夜にでも隠れて食うぞ」


 並んで歩くサンレイとガルルンが顔を見合わせてニヤッと悪い笑みをした。



 あの女がレジの前で待っていた。

 会計は全て宗哉がするので待っていろと言ってある。


 サンレイやガルルンだけでなく英二たちが何を作るのか買い物籠を覗くが見られても平気なのか女は隠しもしない、余程自信があるらしい堂々としたものである。


「この匂い…… 」


 女の籠の中を見てガルルンが顔を顰める。


「あのデカい貝は何がお? 」


 籠の中の大きなハマグリを指差した。


「あれはハマグリって言うのよ、焼いたりお吸い物にすれば美味しいわよ」


 レジに並ぶ前に委員長が教えてくれた。


「ハマグリがお…… 」


 買い物籠を持ってレジに並ぶ英二と委員長と女と会計する宗哉を置いてサンレイとガルルンと小乃子と晴美はレジを抜けて外に出る。


「あの匂い……ハマグリがお………… 」


 マジ顔で何か考えているガルルンに晴美が声を掛けた。


「ガルちゃんどうしたの? 具合悪いの? 」

「どうせ食い物のこと考えてるんだぞ、デカいハマグリ食いたくなったんだぞ」


 からかうサンレイにガルルンがバッと振り向く、


「んだ? やるってのか? 」


 ガルルンの険しいマジ顔を見てサンレイが喧嘩腰だ。


「ハマグリがお、あの女ハマグリがう」

「ハマグリ? なに言ってんだ? 」


 喧嘩腰だったサンレイの顔から険が消える。


「あの女とハマグリの匂いが一緒がお、ハマグリの妖怪がう、サンレイ知ってるがおか? ガルは山の妖怪なら結構詳しいけど海のはあんまり知らないがう」


 今度はサンレイの顔がみるみる険しくなっていく、


「ハマグリの妖怪……知ってんぞ、ハチマルに聞いたことあるぞ、ハマグリ女房だぞ」

「ハマグリ女房? 凄い名前だな、どんな妖怪なんだ? 」


 小乃子が興味津々の顔で訊いた。


「英二の家に来てからハチマルが料理に興味持っただろ、そんで旨くなったからハチマルは料理の神様になれるぞってからかった事があるんだぞ、そん時に料理の旨い妖怪がいるって教えて貰ったんだぞ、それがハマグリ女房だぞ、料理の得意な妖怪だぞ」

「マジかよ、だから料理勝負を挑んできたんだぜ」


 いつの間に来たのか買い物袋を下げた秀輝も顔を顰める。


「だとしたら大変だよ、料理妖怪に勝てるわけないよ、委員長も晴美も料理得意だけどあくまで素人レベルだからな、プロみたいな妖怪に勝てるわけないよ」

「だな、この勝負どうにかして無効に出来ないかな? 」


 小乃子と秀輝が悩むように顔を見合わせるのを見てサンレイがニパッと笑った。


「売られた喧嘩は買うぞ、心配すんなって、おらが勝つぞ、愛という調味料の前にはどんな美味しい料理も敵わないんだぞ」

「がふふん、ガルはできる女がお、貝の妖怪なんかに負けないがう」


 何処から湧いてくるのか自信満々の2人を見て秀輝が弱り顔でレジにいる英二たちに振り返る。


「取り敢えず。ハマグリ女房に気付かれないように英二たちに報告だな」

「正体ばれても気にしないんじゃないか? 何作るのか向こうから言ってきた相手だよ」


 ヒソヒソ話す秀輝と小乃子の前をレジを通ったハマグリ女房が歩いて行く。

 秀輝が目で追っているとサンレイとガルルンがハマグリ女房の前に立ち塞がった。


「お前の正体わかったぞ!! 」

「がふふん、ガルの鼻は誤魔化せないがお」


 ビシッと指差すサンレイの隣でガルルンが得意そうに鼻を鳴らした。


「ああ……隠す気全くないぜ」

「あちゃ~、作戦も何もあったもんじゃないな」


 一瞬の出来事だ。止める間もなく秀輝が顔を顰め、小乃子が顔を手で覆う。


「何かあったのか? 」


 英二と委員長もレジを通してやって来た。


「あの女の正体がわかったぜ」

「ほんとか? 凄いじゃないか」


 声を張る英二の肩を小乃子が叩く、


「ハマグリ女房って妖怪らしい、それで今大変だよ」


 小乃子が指差す先でサンレイとガルルンがハマグリ女房と対峙していた。


「わあぁ~~、ダメだからな、こんな所で戦うのはダメだからな」


 慌てて止める英二にサンレイとガルルンが何事かと振り返る。


「なに言ってんだ? 戦いなんてしないぞ」

「そうがお、こいつとは料理で勝負するがう」


 ケロッとした顔で言う2人を見てハマグリ女房が笑い出す。


「フフフフフッ、私の正体を知って料理勝負を受けるなんてバカなのかしら? それとも私を見くびっているのかしら? どちらでもいいわ、腕力では敵いませんから海ならともかく私もこんな場所では戦いません」


 ハマグリ女房が艶のある目を英二に向ける。


「正々堂々勝負して英二さんを私のものにしますわ」

「それならいいけど………… 」


 頬を赤く染めながら英二が安堵して呟いた。


「何があったんだい? 」


 会計を終えた宗哉が不思議そうに訊いた。

 隣で委員長も詳しく知りたそうに秀輝と小乃子を見つめる。


「あの女の正体がわかったらしいぜ、ハマグリ女房って言うらしい」

「ハマグリ女房? 凄い名前だね、それでどんな妖怪なんだい? 」

「あっ、そういやどんな妖怪か聞いてなかったよ」

「肝心な事を聞いてないんだから、まったく…… 」


 呆れる委員長を押し退けて小乃子がひょいっと顔を出す。


「サンレイ、その女どんな妖怪なんだ? 」


 大声で訊く小乃子に他の客の視線が集まる。

 慌てて宗哉が小乃子の腕を引っ張った。


「ここじゃなんだし車の中ででも話そう」

「あんたは! 場所をわきまえなさい、まったく」


 怒る委員長の元へサンレイとガルルンが駆けてくる。


「あの妖怪はな………… 」


 元気よく話し始めるサンレイの両肩を英二が掴む、


「続きは車の中だ。ハマグリさんもいいよね」


 振り向いて聞くとハマグリ女房がニッコリと妖艶に笑った。


「いいわよ英二さん、愛する英二さんの頼みなら何でも聞いちゃう、だから早く勝負を行いましょう」

「了解した。忘れ物はないね? じゃあ車へ行こう」


 英二の代わりに宗哉がこたえると他の客の視線から逃げるようにスーパーを後にした。



 走り出した車の中でサンレイが女を指差した。


「お前、ハマグリ女房だぞ」

「フフッ、よくわかったわね、そっちのワンちゃんのお手柄でしょ? 」

「がふふん、そうがお、ガルの手柄がお、匂いで直ぐにわかったがう」


 ガルルンが得意気に鼻を鳴らす。

 褒められているのでワンちゃんと呼ばれても気にした様子はない、女は正体がバレても余裕である。


「それでハマグリ女房ってどんな妖怪なんだ? 」


 サンレイとガルルンに挟まれて窮屈そうに座りながら英二が訊いた。


「何百年も生きたハマグリが妖怪化したんだぞ、そんで料理を作るのが旨い妖怪だぞ」

「それで? 」


 続きを促す英二の隣でサンレイが顔を歪める。


「だから料理の腕がプロ級なんだぞ」

「 ……もしかしてそれだけしか知らないのか? 」


 サンレイが頬をプクッと膨らませる。


「だってだって、妖怪の事なんか全部ハチマルに任せてるぞ、おらは実践派だから戦うのが専門だぞ、だから一々詳しくなんて知らないぞ」


 逆ギレだ……、弱り顔で溜息をつく英二の2つ後ろ小乃子と一緒に座っている委員長が口を開く、


「私知ってるわよ」

「あんた、本当によく知ってるな」


 呆れる小乃子の隣で委員長が説明を始めた。


「妖怪図鑑に載っていた話しでは昔、漁師の網に大きな蛤が掛かったの、漁師はここまで育つには大変だったろうって大蛤を逃がしてやったのよ、暫くして漁師の元に美しい娘が嫁にしてくれとやって来たの、漁師は喜んで嫁にしたわ、その嫁は美しいだけでなく料理がとても旨かったの、特に味噌汁やお吸い物は絶品でそこらの店顔負けだったのよ、でも料理中は絶対に見てはダメと言って作っている姿を見せてはくれなかったの、そこらの料亭より遙かに美味しいものをどうやって作るのかと我慢できなくなった漁師がある日こっそりと作っているところを覗くと女が鍋の上に跨がって自分の尿を入れていたの、毎日食べていた料理は女の尿入りだと知った漁師は怒って女を家から追い出したの、暫くして漁師が見に行くと女は浜辺で大蛤に変身した。先日助けていただいた大蛤です。見られたからには海へと帰りますと言って帰って行ったと言うのが私の知っている話しよ」


 長い話を終えて委員長が息をついた。


「なんだ鶴の恩返しのハマグリバージョンじゃん」


 隣で小乃子が言うと前に座っている秀輝が顔を顰める。


「でもオシッコはちょっと、いや、いくら可愛くても絶対に嫌だぜ」

「ヘンタイがお、こいつもヘンタイ妖怪がう」

「なんでこんなのばっかり…… 」


 軽蔑した目でハマグリ女房を見つめるガルルンの隣で英二が弱り切った顔で呟いた。


「類友だぞ、英二がヘンタイだからヘンタイ妖怪が集まってくるんだぞ」


 英二を見てサンレイがにやっと意地悪に言った。


「誰がヘンタイだ!! 違うからな! 」


 怒鳴る英二に構わずガルルンが続ける。


「そうがお、漁師に特殊性癖があればハッピーエンドだったがお」

「飲尿健康法だぞ、よかったな英二、ハマグリが勝てば毎日オシッコ味噌汁を食えるぞ」


 ハッとしてガルルンが英二に振り向く、


「がわわ~~ん、もしかして英二には特殊性癖があるがお? それでヘンタイハマグリがやってきたがお」

「食べませんから! そんな性癖はありませんから、2人とも絶対に勝ってください」


 英二はもう怒ると言うより泣き出しそうだ。

 助手席の後ろに座っているハマグリ女房が振り返る。


「英二さん安心してください、それは昔の話しです。今はオシッコなんて入れません、料理の腕自体が格段に上がりましたからね」

「そっそうですよね、ハマグリさんみたいな美人がそんな事するわけないですよね」


 安堵した英二が作り笑いを浮かべる。

 隣に座るガルルンが顔を強張らせて口を開く、


「ウンコがお、オシッコじゃないとすればウンコしかないがう」


 英二を挟んで反対側でサンレイが身を乗り出す。


「マジか!! 手料理じゃなくてケツで作るスカトロ料理だぞ、よかったな英二、ハマグリが勝てば毎日スカトロ料理食えるぞ」

「勘弁してくれ、食べないから、絶対に勝ってくれよサンレイ、ガルちゃん」


 2人を抱き寄せて英二が泣き声だ。


「そんな下品な料理作りません! 正々堂々と普通の料理で勝負します。英二さんへの愛情たっぷりの料理で勝って見せますわ」


 ハマグリ女房が声を張って怒った。


「大丈夫だよ、今回用意したキッチンはオープンだからね、ハマグリさんだけ隠れて作るなんてできないよ、勝負だからね、細工ができないように見通せるほうがいいだろ」


 助手席に座る宗哉が爽やかに言った。

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