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第32話

 トイレが直ったのはよかったのだが修理を業者に依頼していた学校はその対応で2日ほどごたごたしていた。

 普段の学園生活に戻ったが英二と秀輝は後処理が大変だった。


「英二ぃ~、あたしと菜子と晴美は焼きプリンでいいぞ」


 昼休み、弁当箱を持った小乃子が座っている英二の頭をポンポン叩く、


「わかったよ、焼きプリン3個な、ガルちゃんはチーカマだろ、サンレイは何アイスにするんだ? 」

「今日は何のアイスにするかな、弁当食いながら考えとくぞ」


 英二が立ち上がりながら訊くとサンレイが弁当箱を広げながらこたえた。


「わかった。ガルちゃんはチーカマでいいよね」

「わふふ~ん、今日もチーカマ奢ってくれるがお? 英二気前いいがう」

「今週いっぱいは奢るって約束だからな」


 ふんばり入道の話を聞いた小乃子と委員長が何で私たちを除け者にしたのかと怒って、それを宥めるために1週間食後のデザートを奢るということになった。

 サンレイは便乗してアイスをねだる。サンレイと違って何も言わないガルルンは可愛いのでチーカマを買ってあげるのは苦にならない。


 弁当を食べながら秀輝が口を開く、


「今日は俺が金出すよ」

「サンレイとガルちゃんはともかく、小乃子たちの分は悪いよ」


 向かいに座ると英二も弁当を広げた。


「連帯責任だぜ、お菓子くらい安いもんだ」


 話を聞いていたのか後ろから小乃子の声が聞こえてきた。


「そー、そー、連帯責任だ。あたしを除け者にしやがって」

「そうよね、他のことならともかく妖怪退治するのを見れなかったのは残念だわ」


 英二が振り返ると委員長も一緒になって睨んでいた。


「だから謝っただろ、1週間お菓子奢るってことで話は付いたはずだぜ」


 秀輝が顔を顰める向かいで英二が弱り顔で口を開く、


「悪いと思ってるよ、でも相手がどんなのか分からないから小乃子と委員長を危ない目に遭わせたらダメだってサンレイも言ったから呼ばなかったんだよ」

「おらそんな事言ってないぞ、英二が邪魔って言ったんだぞ」


 パクパク弁当を食べながらサンレイがケロッとした顔で嘘をつく。


「俺は邪魔なんて言ってないだろ……すぐ俺の所為にするんだからサンレイはズルいよね、一緒になってアイス奢らせるし」

「おらズルくないぞ、本当のことを言っただけだぞ」

「いやいやいやいや、急にバイト入ったことにして先に帰らせろって言っただろ、ガルちゃんも聞いたよね? 小乃子と委員長を先に帰らせたのはサンレイが言ったからだよね」


 顔の前で手を振って否定すると英二はガルルンを見つめた。

 一心不乱に弁当を食べていたガルルンがバッと顔を上げる。


「ガルはあんまり覚えてないがう、ウンチ妖怪が温水洗浄便座を壊そうとして英二が人工肛門で戦ったがお」


 聞いても無駄だった。ガルちゃんバカ犬だ……、弱り切った顔で英二が続ける。


「俺は人工肛門なんかで戦わないからね、ふんばり入道が霊力を取り込もうと俺の命を狙ってきて俺は爆発能力で戦ったんだからね」

「まあいいじゃない、済んだことは、次からは除け者にしたら許さないからね」


 優しく微笑みながら言う委員長の目が笑っていない。


「わかったよ、でも危険な相手の時は呼ばないからな」


 小乃子よりも怖いよな……、有無を言わせぬ委員長の目付きに英二は約束するしかない。

 委員長の顔がパッと明るく変わる。


「でも英二くん凄いよね、爆発能力があったらこの前の化けガエルなんて簡単に倒せるんじゃない」

「爆弾魔だっけ英二の力? 人間吹っ飛ばせるんだろ? 」


 ふんばり入道の話しをする過程で小乃子と委員長には爆発能力を実際に見せている。

 英二が嫌な顔をして小乃子を睨む、


「爆弾魔じゃないからな、人を犯罪者みたいに言うな」

「化けガエルなんて敵じゃないぞ、そこらの妖怪なんか倒せるくらいに強くなるぞ、人間どころか家も吹っ飛ばせるようになるぞ、なんたっておらが教えてるからな」


 ニパッとサンレイが自慢気だが実際に教えているのはガルルンだ。

 サンレイは大雑把な説明をするだけである。


「英二は飲み込みが早いから直ぐに強くなるがお、ガルやサンレイの足手纏いにならないくらいには強くなるがう」

「うん、強くなるよ」


 弁当を食べながら言うガルルンを見て英二が頷いた。

 サンレイやハチマルが消えた時に何もできなかった自分が悔しかった。

 次に同じようなことが起きたら……いや、絶対に起こさせない、俺の命に代えても、そう思う英二の気持ちが訓練に表れてめきめきと上達していた。


 英二の思い詰めるような顔を見て小乃子が口を開く、


「あ~あ、それにしてもウンチ妖怪見たかったなぁ~~ 」

「ウンチ飛ばしてくるヘンタイ妖怪だぞ」

「飯時にそんな話しはするな、それよりサンレイはアイス決まったのか? 」


 変な方向へ行かないように英二が話を逸らす。


「今日はイチゴ味のカップにするぞ、無かったらモナカでいいぞ」


 ニパッと笑顔でサンレイがこたえた。

 アイスの時だけ返事がいいんだから……、溜息をつくと英二は弁当を食べ始める。

 サンレイたちは女子トークに移っていた。


「宗哉も誘ってコンビニ行こうよ、もう一度ちゃんと謝りたいんだ」

「そうだな、あいつも何で呼ばなかったって怒ってるからな」


 宗哉にもふんばり入道の件は話してある。

 小乃子たちと違い嘘をついて先に帰らせたりはしていないので突っ掛かってくるほどは怒ってはいないが仲間はずれにされたという気持ちはあるのか今でも少しムスッとしていた。

 さっさと弁当を食べ終わると英二と秀輝が立ち上がる。


 教室の後ろドアから出て行く際に宗哉を誘う、


「宗哉、コンビニ行かないか? 」

「僕は別に用は無いから」


 素っ気ない宗哉の腕を英二が引っ張った。


「話がしたいんだ。一緒に行こうよ、頼むよ宗哉」

「英二くんがそこまで言うなら…… 」


 宗哉が立ち上がる。

 ムッとしながらも英二に頭を下げられては嫌とは言えない。


「ララミとサーシャも来るんだろ? 」


 秀輝が両隣に座るララミとサーシャに聞いた。


「当然デス、御主人様を御守りするのが役目デスから」

「はい、来るなと命じられない限りは何処までもお供致します」


 サーシャとララミがスッと立ち上がった。


「んじゃ行こうぜ」


 秀輝が教室を出て行く、その後を英二と宗哉が並んで最後にララミとサーシャが続いた。



 コンビニまで行く道すがらふんばり入道のことを再度説明して英二が改めて宗哉に頭を下げた。


「宗哉を除け者にしたわけじゃないんだ。小乃子と委員長は危ないから初めから連れて行く気はなかったけど宗哉が残ってたら一緒に行ったよ、でも宗哉は忙しいから先に帰っちゃうだろ、だから呼べなかったんだよ」


 英二が宗哉の顔を伺うように話を終えた。

 前を歩いていた秀輝が振り返る。


「だな、相手も妖怪って決まってたわけじゃないし、あの日は確認するだけのはずだったんだぜ、弱かったからその日の内に倒したけど化けイチョウのように強い相手なら日を改めて宗哉にも手を貸して貰ってたぜ」


 何だかんだ言いながら秀輝も今では宗哉のことを仲間だと認めていた。

 賛同するように頷くと英二が続ける。


「うん、宗哉は頭が良いし……女の子の委員長には危ないことさせたくないし、頼りにしてるんだよ、化けイチョウの時だって宗哉の作戦があったから戦えたんだと思うし……」

「だな、俺は作戦なんて考えられないからな、俺より頭が良いって言っても英二はクラス平均だからな、お前がいてくれなきゃ困るぜ、宗哉は仲間なんだからな」


 仲間と言われて宗哉の顔から険がスッと消えていく、


「お世辞でも嬉しいよ、正直言って怒ってたけど事情を聞いたら仕方ないね、今回の件は納得いったよ、でも今度からは僕にも話をしてくれよ、たとえサンレイちゃんがダメって言っても話しだけは通してくれ、無理に連れて行けなんて言わないからさ」

「わかった。約束するよ」


 安堵する英二の向かいで秀輝がニッと悪い笑みになる。


「じゃあ早速話しするぜ、サンレイちゃんとガルちゃんだけじゃなくて小乃子と委員長と晴美に奢らなきゃならなくなってんだ。助けてくれ宗哉」

「ちょっ、秀輝、止めろよ、俺たちが勝手にした約束だろ」


 慌てて止める英二を見て宗哉が声を出して笑い出す。


「あははははっ、了解した今日の分は僕が奢るよ」

「ダメだよ、悪いよ宗哉」

「いいよ、仲間だろ、英二くんは爆発能力で戦うことが出来るようになったし、秀輝は昔から喧嘩強くて戦えるからな、僕ができることは僕がするさ」

「流石宗哉だ。頼りにしてるぜ」


 秀輝が前に向き直って歩き出す。


「まったく調子いいんだから…… 」

「早く買って帰らないとサンレイちゃん怒るよ」


 愚痴る英二の腕を宗哉が引っ張る。


「まったく…… 」


 もう一度溜息をつくと英二は宗哉に引っ張られるようにして歩き出した。

 こうしてトイレ騒動は収拾した。


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