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第124話

 サンレイの横でガルルンが教室の前ドアの近くを指差す。


「早川がヤバい目付きがお」


 サンレイたちとは気軽に挨拶するくらいの仲の良い女子である早川が澱んだ目で此方を見ていた。


「ふへへっ、高野と伊東と佐伯でしょ、あんたたち何時も一緒よね」


 ニタリと不気味に笑いながら早川が続ける。


「いひひひっ、伊東×高野とか高野×佐伯とかさ……佐伯は高野にべったりだからマジ有り得るよね、ふはっ、ふひひっ、佐伯は総受けかな……リバって高野×伊東もありよね、意外とがっしりした体で伊東が受け専だったりして、ふひっ、うひひひひっ 」


 サンレイが困り顔で振り返る。


「早川、何言ってんだ? 」

「顔がヤバいがお、獲物を狙う目付きになってるがお」


 早川が襲ってくるとでも思ったのか弱り顔のガルルンが両手を構える。

 2人の傍で英二が顔を引き攣らせる。


「早川さんマジかよ…… 」

「隠れオタだぜ、まさか早川が腐だとは思わなかったぜ」


 険しい顔の秀輝の脇を英二が肘で突く、


「って言うか俺たちカップリングされてるぞ」

「冗談でもゾッとするよな、BLは勘弁だぜ」

「でもこれが地獄なのか? 只の妄想だよな」


 弱り顔を見合わせる英二と秀輝の見つめる先で空間が裂けて鬼が出てくると早川に薄い本を手渡す。


「あれって同人誌なんじゃ…… 」

「腐女子が見る同人って言ったらBLだぜ」


 薄い本を食い入るように見ていた早川が突然苦しみ始める。


「いやぁ~~、止めてぇ~、○○と××のカップリングなんて有り得ないでしょ」


 術に掛かっている所為か止めてと言いながら早川は同人誌から目が離せない。


「止めてぇ~~、○○様が総受けなんて認めないわ、リバでも許さないわよ」


 苦しむ早川を見てハチマルが顔を顰める。


「いかん! 有り得ない組み合わせに早川の自我が崩壊し始めておる」

「腐女子は闇が深いからな、BL地獄ってとこだぞ」


 普段通り呑気な声でサンレイが言った。



 廊下側の壁が大きく裂けて教室に列車が走ってくる。


「おおぅ、メトロ6000系だぜ、なんで走ってるんだ? 凄ぇぞ」


 叫びながら藤田がカメラを構えた。

 藤田はおとなしい性格でサンレイたちはもちろん英二も余り話したことはない只のクラスメイトという感じの男子だ。


「やった! やった! やった! いい写真が撮れた」


 ハイテンションで写真を撮る藤田を見て何とも言えない顔で英二が呟く、


「藤田のヤツ鉄ちゃんだったのかよ」

「なんか生き生きしてるぜ、普段はぼーっとしてる癖によ」


 隣で秀輝も呆れ顔だ。

 サンレイが不思議そうな顔で訊く、


「鉄ちゃんってなんだ? 」


 英二たちが説明する前にガルルンが得意気に話し始める。


「鉄道オタクがお、電車のパーツ集めたり、旅行じゃなくて色んな電車に乗るのが目的で旅をしたりするがう、観光とかしないで僻地の駅へ行ったりするがお、藤田は写真撮りまくる撮り鉄ってタイプのオタがお、鉄ちゃんの中でも1番迷惑な奴らがお」

「ふ~ん、鉄ちゃんか、覚えたぞ」


 成る程と鼻を鳴らすサンレイに英二が弱り顔で振り向く、


「余計なこと覚えなくてもいいからな」

「それにしてもガルちゃんは詳しいな、感心したぜ」


 褒める秀輝にガルルンがドヤ顔を向ける。


「ガルは英二の家に住むまで旅をしてたがお、走るのより楽だから電車を使うことも多かったがう、それで僻地の駅とかで写真撮ってる鉄オタを色々見てきたがお」

「成る程な、無人駅とかに態々行って写真撮ったりしてる奴らいるもんな」

「英二の所に来るまでガルちゃんは一匹狼だったんだな、流石だぜ」


 感心する英二の隣で秀輝が持ち上げる。


「がふふん、ガルはできる女がお」


 一匹狼と言われてガルルンが嬉しそうに鼻を鳴らした。

 廊下の壁側から入ってきた列車が運動場側の壁の裂け目に抜けていくと続けて運動場側から違う列車が入ってきた。


「なに!? 寝台列車の四季島だ。凄ぇ、凄えぜ」


 カメラをくるっと回すとまた写真を撮りまくる。


「次は……まさか? 小田急5000形かよ、まだ走ってるところ見れるなんて感動だぞ」


 寝台列車が走り抜けると廊下側から列車がやってくるのが見えた。

 カメラを構えながら藤田が教室に敷かれた線路に入り込む、


「ベストポジションだ! 」


 夢中でシャッターを切る藤田に列車が迫る。

 列車はスピードを緩めない、次の瞬間、ぐしゃっと藤田の体が四散した。


「ぎゃあぁぁ~~ 」


 絶叫を上げる藤田の頭が英二の足下に転がった。


「うわあぁぁ~~、藤田が! 」

「マジかよ! 死んだのかよ藤田」


 叫ぶ英二と秀輝の目の前で藤田のバラバラになった体が集まってくっついていく、


「良い写真撮れたかなぁ~ 」


 何事もなく藤田が起き上がった。


「なっ……なにが………… 」

「マジやべぇ……マジでやべぇぞ」


 ビビりまくる英二と秀輝の前で藤田がまたカメラを構える。


「ぎゃあぁぁ~~ 」


 また列車に轢かれた藤田が秀輝の足下に転がってきた。


「痛ぇ……痛いよぉ~~ 」


 暫く泣いていたが直ぐに体が集まって元に戻っていく、


「電車がくる。写真を撮らなきゃ…… 」


 バッと起き上がると藤田がまた線路に立った。


「藤田止めろよ」


 止めようとした英二にハチマルが声を掛ける。


「無駄じゃ、撮り鉄地獄じゃ、迷惑行為をした鉄ちゃんが送られる地獄じゃ」

「鉄オタの地獄かよ」


 秀輝が厭そうな顔で振り返った。


「迷惑行為って……まぁ線路に降りて写真はダメだよな」


 伸ばした手を引っ込める英二の前で藤田がまた列車に轢かれて悲鳴を上げて吹き飛んでいく、


「轢かれても轢かれても電車がくる度に撮り続けるんだぞ」

「ミンチになっても再生するがお、痛みは当然あるがう、でも止められない地獄がお」


 サンレイとガルルンも顰めっ面で見ている。


「中川や早川と違ってハードだな」


 何とも言えない表情の英二に顔を顰めたハチマルがこたえる。


「プラモや腐女子と違って他人にも迷惑を掛ける行為じゃからな」

「成る程な、でもおとなしい藤田が意外だったぜ」


 秀輝を見つめて英二が頷く、


「ああ、藤田の大声初めて聞いたよ」


 戸惑う英二と秀輝を見て濡れ男が得意気に話し出す。


「ふはははっ、どうだ。恐ろしいだろう、これが俺の力だ。オタ地獄流しだ」


 高笑いする濡れ男にサンレイとガルルンが向き直る。


「マジで怖いぞ、オタクの地獄に送り込む技だぞ」

「恐ろしいがお、肉体的な痛みはもちろん精神的にも追い詰められるがお」


 2人とも怖いと言いながら口元が笑っている。



 サンレイとガルルンが英二と秀輝を見つめた。


「英二と秀輝はゲーオタだからな、エロゲー地獄だぞ」

「おっぱい地獄かも知れないがお」

「どんな地獄だ! 」


 怒鳴る英二の横で秀輝がエロい顔をして口を開く、


「エロいなら地獄と言うより天国だぜ」


 秀輝を見てサンレイがニヤッと悪い顔で笑う、


「エロエロだけど地獄だぞ、エロい女の鬼に色々Hな事をされるぞ、でも絶対にイクことは出来ないんだぞ、そんで溜まりに溜まったところへ男の鬼が出てきてイカされるんだぞ、それが永遠と続いてそのうちに男鬼を見ただけでイクようになるぞ」


 ガルルンがハッとした顔をサンレイに向ける。


「エロはエロだけどあっちの世界に行くエロがお」


 悪い顔をしたサンレイが続ける。


「そだぞ、おっぱい星人だろうとロリだろうと熟女好きだろうと最終的にはゲイになるんだぞ、厳つい男鬼でしかイケない体になるんだぞ」


 ガルルンがブルッと震える。


「恐ろしいがお、最終的にお尻を責められるがお」

「そだぞ、ケツ地獄だぞ」

「ある意味、一番恐ろしい地獄がお」


 サンレイとガルルンが英二と秀輝を見つめる。


「英二と秀輝があっちの世界に行っちゃうぞ」

「早川が喜ぶがお、BLの世界に行くがお」


 キラキラと期待顔の2人に英二が頭を下げる。


「勘弁してください、美鈴ちゃんといい地獄といい、俺のお尻はもう限界だからな」

「そんな地獄があるなら俺エロゲー止めるわ、怖すぎるぜ」


 流石の秀輝も厭そうな顔だ。

 濡れ男が大声で話し始める。


「どうだ俺の力は! オタ趣味を白日の下にさらすのだ。普段オタをバカにしている隠れオタどもも全てバレるのだ。人は何かしらのオタ趣味を持っているものだ。それなのにアニメやアイドルのオタクだけがキモいと罵られる。俺はそれが我慢できん、俺の力でバカにした奴らのオタ趣味を晒し者にしてやるのだ」

「ハァ~イ、ハイハイ、質問だぞ」


 手を上げながら大声で言うとサンレイが続ける。


「確かに凄い技だぞ、でも何の攻撃にもなってないぞ、中川や早川や藤田のオタ趣味がバレただけだぞ」

「面白いものが見れてガルは楽しかったがお、もっと見せるがお」


 ガルルンは芝居でも見ているような気軽さだ。


「確かに俺たちは何のダメージも受けてないよな」

「だな、藤田のバラバラはキモいけど血とかは今までの戦いで見慣れてるからな」


 英二と秀輝だけでなく後ろで見ている宗哉も平然とした表情だ。

 小乃子たちはまだ苦しいのか机に突っ伏してダウンしていた。


 濡れ男が英二たちを見回す。


「マジだ! しまった!! バカにした奴らのオタ趣味を暴くことしか考えてなかった」


 焦る濡れ男をガルルンが指差す。


「こいつバカがお、恨みすぎてバカになってるがお」

「重度のオタって捻くれたヤツが多いからな、直接殴ったりする仕返しより嫌がらせとか呪いとか陰湿な方に行っちゃうんだぞ」


 サンレイに呆れられるのはよっぽどである。



 ハチマルが床に手を着く、


「儂が結界を破るから英二はさっさと濡れ男を倒すんじゃぞ」

「おっ、俺が? 」


 自分を指差しながら英二がサンレイを見つめる。


「サンレイ手伝ってくれ」

「やだぞ、あいつベタベタしてキモいぞ」


 即答するサンレイから視線をガルルンに向ける。


「ガルはここで英二を生暖かく見守ってるがお、英二がやられそうになったら助けるがう、初めから手助けしたら英二のためにならないがお」


 ガルルンにも断られて英二が秀輝を見つめる。


「仕方無い俺たちでやるぞ」

「一寸待っててくれ」


 秀輝が慌てて後ろの壁に立て掛けていた木刀を持ってきた。


「魂宿りって呼子の時に一回だけできた技だろ? 物に霊気を込めて力の無い俺でも使えるようになるヤツだろ」


 秀輝が期待顔で木刀を英二に差し出す。


「うん、でも5回に1回くらいしか成功しないんだ。やってみるけど…… 」


 自信の無い顔で木刀を受け取ると英二が霊力を集中する。

 息を整え目を閉じる英二の体から白い霊気が湯気のようにもわっと立ち昇る。


「魂宿り! 」


 静かに言うと白い湯気のような物が手に集まり木刀へと吸い込まれていく、次の瞬間、ボンッと英二の手が破裂して木刀が床に転がった。


「失敗だぞ」

「霊気が旨く練れてないがお」


 サンレイとガルルンがじとーっとした目で言った。


「痛ててて…… 」


 英二が痛そうに爆発した両手を振る。出血はないので怪我はしていない様子だ。


「失敗かよ、5回に一度じゃ仕方無いぜ」


 木刀を拾うと秀輝が差し出す。


「もう1回やれってか? 凄ぇ痛いんだぞ」


 文句を言いながら木刀を受け取ると英二が後ろのハチマルをちらっと見た。

 ハチマルは床に手を着いて目を閉じている。オタ地獄流しの結界を解いているのだ。

 サンレイとガルルンは手伝ってくれそうにない、英二が息を整える。


「魂宿り! 」


 ボンッと先程より大きな音がして英二が手を押さえて近くの机に寄り掛かる。


「痛てて……マジで痛い………… 」


 泣きそうな顔で痛がる英二を見てサンレイがジト目で口を開く、


「また失敗だぞ、高等術は英二には無理だぞ」

「ガルは信じてるがお、英二はやれば出来る子がお」


 ガルルンの呑気な声を聞きながら英二が秀輝に声を掛ける。


「もう1回だ。こうなったら出来るまでやってやる」

「無理すんなよ、手は大丈夫か? 」


 木刀を手渡す秀輝は心配顔だ。

 様子を伺っていた濡れ男が体をブルッと震わせる。


「何かするつもりだな、英二が爆発を使えるのは知ってるぞ、何かする前に片付ける方がいいな」


 英二を睨む濡れ男にガルルンが右手を向ける。


「毛火矢! 」


 ガルルンが火の着いた毛を矢のように飛ばす。


「この程度の火など効くか」


 突き刺さった毛火矢がジュッと音を立てて消えていく、濡れ男の体液で消火したのだ。

 濡れ男の上にサンレイがバチッと現われる。


「雷鳴踵落とし! 」

「げへぇ~ 」


 バチバチと青い火花を放つ蹴りが濡れ男の頭に直撃だ。


「がふふん、ガルのはフェイントがお」


 仰向けに転がった濡れ男を見てガルルンが楽しそうに笑った。

 ガルルンの横にサンレイが戻ってくる。


「髪の毛もベトベトだぞ、雷纏ってなかったら濡れ雑巾のキモい汁が付いてたぞ、やっぱキモ過ぎるぞ」


 足に濡れ男の体液が付いていないか確かめるサンレイをガルルンが厭そうに見つめる。


「よく殴れるがお、ガルはキモ過ぎて近付くのも厭がお」

「キモいけど仕方無いだろ英二を守るんだぞ」


 倒れていた濡れ男が起き上がる。


「貴様らぁ~、バカにしやがってぇ~~ 」


 ブルブルと体を震わせる濡れ男をサンレイとガルルンが指差して笑う、


「濡れ男がブルブル震えてるぞ、水滴が飛んでキモいぞ」

「ぶれ男がお、キモさ倍増がお」


 キモいキモい言われて濡れ男の顔が怒りで真っ赤に染まっていく、


「英二を捕まえろとの命令だが俺をバカにしたチビと山犬を先にぶっ殺してやる」


 濡れ男が正体を現わす。

 上半身は変わっていないが腹から下、下半身が蛇のようになっている。


「蛇男だぞ、キモオタの上半身はともかく蛇の部分は格好良いぞ」


 サンレイの顔がパァ~ッと明るく変わる。


「ヌルヌルしてそうがお、蛇じゃなくてデカいナメクジがう、英二、キモいからさっさとやっつけるがお」


 変な生き物が好きなサンレイと違って蛇やナメクジは嫌いなのかガルルンは厭そうな表情だ。


「せっかくの蛇もキモオタの上半身で台無しだぞ、グルグル巻にしてウンコ男にしてやれ英二、濡れ雑巾にはウンコがお似合いだぞ」


 魂宿りを成功させようと霊気を集中していた英二がバッと振り返る。


「集中してるのに変な事言うな! 」

「そこまでバカにするか……貴様ら全員ぶっ殺してやる」


 半身蛇になった濡れ男が教室内を見回す。


「お前たち来い」


 操られた男子が2人フラフラと濡れ男の後ろに立った。

 加山と志村だ。2人とも目立たない普通の男子だ。


「打つぞ! 」


 後ろに立つ加山と志村と共に濡れ男が踊り出す。

 クネクネと体を動かして3人呼吸を合わせたかのように踊ったと思えば急に動きを止めてサンレイとガルルンをじっと見つめたりする。


「なっ、なんだアレは…… 」


 サンレイがブルッと身震いした。


「何の踊りがお? 加山と志村は操られてるがおか? 」


 操られているにしては一糸乱れぬ動きにガルルンが戸惑いの顔だ。

 濡れ男と加山と志村の踊りは続いている。



 パン、パパン、拍手をした後で『ヒュー 』と声を掛ける。

 頭上で手拍子を叩きながらその場で右や左に回転ジャンプをする。

 急に静かになったと思えば直立不動で熱い視線を送る。



 サンレイとガルルンが数歩後退る。


「キモいぞ、キモ過ぎるぞ、キモ過ぎて力が抜けてくぞ」

「見てるだけで寒くなってくるがお、鳥肌立ちまくりがお」


 サンレイがガルルンに振り向く、


「わかったぞ、変な踊りでおらたちの霊力を吸い取るつもりだぞ」

「がわわ~~ん、そう言えば鳥肌立ちまくりで体が動かなくなってきてるがお」


 大きく口を開けて驚くガルルンにサンレイが続ける。


「鳥肌のイボの一つ一つから霊力が抜けて行ってんだぞ」

「只のキモオタだと思ってたがお、なんて恐ろしい攻撃がお」


 サンレイとガルルンが英二と秀輝の後ろに逃げてきた。


「英二助けてぇ~~、死の踊りだぞ」

「ガルはもうダメがお、キモさで体が強張って動かないがお」


 縋り付く2人を両脇で抱きながら英二が秀輝の顔を見る。


「これって……只のオタ芸だよな」

「ああ、ドルオタがコンサートとかで踊ってるヤツだぜ、加山と志村がドルオタとは知らなかったぜ」

「確かに知らない人が見るとキモいよな」

「だな、やってる本人だけが満足だからな」


 本気でビビるサンレイとガルルンを見て英二と秀輝は弱り顔だ。


「デブのキモオタがあんなに俊敏に動けるなんて……甘く見てたぞ」

「今までで一番凄い攻撃がお、大妖怪クラスのダメージをガルに与えてるがお」


 英二の腕に縋り付くサンレイとガルルンはビビりまくって戦意喪失だ。そう言う意味では攻撃成功と言ってもいいだろう、


「違うから! 攻撃なんてしてないから、只の踊りだから……本当の戦いの前に士気を鼓舞しようとして踊っただけだからな」


 濡れ男が真っ赤な顔をして怒鳴った。

 後ろで結界を解いていたハチマルが一息つく、


「ドルオタ地獄じゃな、特典欲しさにアイドルのCDやDVDを大量に買って始末に困って捨てた奴らが落ちる地獄じゃ」


 サンレイとガルルンが振り返る。


「アイドルオタクだな、おら知ってんぞ、キモさではアニメオタクと双璧を成すオタクだぞ、キモオタと言えばドルオタかアニオタだぞ」

「おとなしいオタクはいいがお、でも変な踊り踊る活発なオタはキモいがお」

「一括りにするな、キモいのは一部だけだからな」


 2人を叱りつける英二を見てハチマルが溜息をつく、


「怒っておらんでお主は霊気を集中せんか、次で魂宿りを決めて見せろ」

「ごめんハチマル」


 卑屈に笑うと英二が呼吸を整える。

 一番後ろで話しを聞いていた宗哉が口を開く、


「もう結界は解けたのかい? 」

「HQの結界じゃ、少し時間が掛かる」


 宗哉にこたえるとハチマルが前に向き直る。


「結界を解くよりお主らが濡れ男を倒した方が早いかも知れん、サンレイ、ガルルン、英二に力を貸してやれ」


 英二にしがみついていたサンレイが離れる。


「仕方無いなぁ、キモいけどわかったぞ、濡れ雑巾なんておらがバチッと倒してやるぞ」

「英二はそこで気を溜めてるがお、魂宿り成功させるがお」


 ガルルンが英二の背をポンポン叩いた。

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