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妻畜  作者: 阿流木女手主
1/1

春の季節外れの風邪がもたらす災厄

 妻畜と書いて、家族と読む。


 数世代前まで、妻は夫の家族と同居のため、妻は姑からの小言や仕打ちに悩まされていた。

 今では、夫の親とは別に住居を構える。

 跡取りであろうが、そうでなかろうが、姑も気を遣う必要が無いので、結婚した夫婦は、新たに住居を構える。

 妻は姑から解放された。

 姑に遠慮をする必要がなくたったため、自分の感情を抑える必要がなくなる。

 妻は家庭の中のご主人様となる。

 そして家族は所有物か何かとなっている。

 よって、家族は、妻の家畜と同様となり、妻畜となった。


 夕方からのバイトに行くため、着替えをしていたところ、妻がインスタントラーメンを持ってきた。

「私、これかから買い物に行くから、これ食べね。」

 そう言って、インスタントラーメンの丼と箸を持ってきて、そそくさと、買い物に出かけて行った。

 いつもも通りの、ちょっとゆで過ぎの麺のラーメンに野菜が絡まった状態のラーメンである。

 私は固めの麺が好きなのだが、どうしても柔らかめになっている。

 作る都合上こうなってしまうと、以前言っていた。

 私が作ると、そうはならないのだが、性格が大雑把な性もあって、いつも同じ様に、ゆで過ぎの麺のインスタントラーメンになっている。

 まぁ、作ってくれたものは、ありがたく頂くことにした。


 一昨日の発熱、昨日は平熱に戻ったが、今日はなんだか体に痛みがあり、調子が悪かった。

 どうも、風邪がぶり返したみたいである。

 夕方からの仕事へ行こうと準備をしていると、なんだかけだるく微熱がある感じだった。

 体温を測ると、36.9度、社則の37度をギリギリではあるが下回っている。

 これなら、なんとか仕事に入れそうだし、具合が悪いと言って、休んだら、妻に何と言われるか分かったものじゃない。

 だるさもあるが、妻の雷のほうが気になり、仕事に向かうことにした。

 仕事は、レストランチェーン店のキッチンスタッフ、自営業の傍ら、足りない分の生活費を稼いでいる。

 まだ、熱っぽいので、店舗に備え付けてある常備薬から、風邪薬を頂戴して、飲んでおくことにした。

 多少は、気休めになるだろう。


 平日の夜ピークの始まる時間ではあるが、沿線に同業他社のチェーン店が進出してきて、今では昔の忙しさはない。

 同業他社のチェーン店が出店する前は、平日であろうが休日であろうが、昼・夜のピークはいつも満席で、待ち数も10組以上が毎日だったのだから、そんな優良物件を独り占めさせるほど、同業他社も甘くはない。

 立て続けに同業他社が2社も出店して、お客の取り合いとなってしまい、平日に満席になることは無い。

 キッチン作業に入るか、それとも棚卸かと思っていたところ、やはり、店は暇なので、棚卸を店長に指示された。

 棚卸は、食材の数量を数えるだけだが、昼間もそれほど忙しくなかったらしく、冷凍食材や備品の数量は数え終わっていた。

 数えるのは、当日使用するためにおいてあるキッチン内の冷蔵庫のみ、80品目ほど数えれば終わりだ。

 一品目の数量も平日の夜と、明日の昼ピークの立ち上がりの数量が有れば良いだけなので、多くても十数点だが、ほとんどが、数個しか置いてないので、数えるのも目で追う程度で数えられる。

 それ程時間の掛かる作業ではないが、なんだか熱っぽい。

 けだるさがあり、微妙に熱が上がってきているのが、自分でもわかる。

(うーん、ちょっとまずい、顔がほてってきている。)

 とりあえず、数量の確認が終わった。

 ここで、通常なら少し忙しくなるのだが、今日はそれ程でもない。

 キッチン作業につく必要もなさそうだし、仕込みも、片付けも足りているみたいだ。

 多分、ネタ出しの作業に移ることになるだろうが、一応、店長に確認を入れてみる。

「棚卸、数え終わりました。」

「じゃあ、そのまま、明日のネタ出し、お願いします。」

 直ぐに、回答がでたので、やはり、店長も忙しくないので、無駄に人件費を使いたくないのだろう、通常なら夜ピークが終わる、9時近くに行う仕事を指示してきた。

「ネタ出しに行ってきます。」

 そう断って、事務所に戻る。

 ネタ出しといっても適当な数量を出すわけではない。

 売上予測と単位売上当たりの使用量が店ごとに決まっているので、その数量を出す。

 計算は、端末が行ってくれるので、翌日の売上予測金額と予備金額を入れれば、当日の冷蔵品の棚卸数量を差し引いて自動で行ってくれる。

 自動で行ってくれる解凍指示書である。

 それをプリントアウトして、ワゴンを押して外にある冷凍庫へと向かう。

 ネタ出しの際は、冷凍庫の電源を切ってネタを出すが、中は、マイナス20度なので冷え切っている。

 上にジャンバーを羽織っているので、首から上が出ているので、丁度良い感じで冷気が頭に当たる。

 明日も平日なので、ネタを出す量はそれ程でもない。

 これが、金曜日だと、土日の量を考慮して出すので、一度では出し切れない量になるが、今日はそれ程多くない。

 けだるさを考慮に入れても、それほど時間はかからない。

 順番に記載された数量を出し、出したところに、赤マジックで簡単な印をして二重出しや、出し忘れを防いでいるが、これは、私だけがやっていること。

 年中無休の店舗なので、毎日同じ人が行うことは無い。

 二・三人の人が同じ作業を行うが、そういった細かいことは決まって無い。

そうこうしていると、お客も少ないせいか、ホールのフリーターが休憩に入って煙草を吸いに来た。

 タバコを吸う場所は、外の冷凍庫の近くなので、タバコを吸う人は休憩時に必ず来る場所となっている。

「お客さんは?」

 暇なのは判ってはいるが、一応、たずねてみる。

「多かったら、休憩には来ないでしょ。」

 ちょっとニヤケタ感じで、そのフリーターは答えた。

「それもそうだね。」

 一応コミュニケーションをとって、作業を続ける。

 けだるい。

「そういえば、一昨日、熱あって帰ったけど、大丈夫ですか?

 見たところ、まだ、ひたいのあたりから、熱っぽいの、判りますよ。」

 キッチンスタッフは、帽子とマスクが必須なので、案外、熱っぽいのは判らないかと思っていたが、見破られてしまった。

「一応、熱は下がっていたから出勤してきた。」

「今日は、それほど忙しくないから、あまり無理しないほうが良いですよ。」

「ありがとうね。」

 他愛もないない会話である。

 向こうも、一応コミュニケーションのつもりなのだろう、それだけ言うと、灰皿のほうへ去っていった。

 残りのネタ出しを行う。

 もう、半分位は終わっているので、残りもそれほど時間は掛からない。

 ネタをワゴンに詰めたら、倉庫でネタを冷蔵庫に移す作業に入る。

 凍った状態では使えないので、明日までにチルドに戻す。

 ラックに立てて、冷蔵庫へ入れる。

 やはり、けだるさは残る。

 ネタの移動が終わったのでキッチンに戻り、作業が終わったことを報告する。

 キッチン内は、暇な夜ピークを迎えていた

 これじゃ、人は要らなそうである。

「顔、少し熱っぽいね。」

 一昨日、発熱で早退したので、体調を気にしていたのと、お客が来ないと踏んで人件費のカットに頭がいったのだろう。

 まぁ、自分がその立場なら、同じことをするだろう。

「ちょっと、熱、測ってきてね。」

 うーん、そうきたかと、思いつつ。

「行ってきます。」

 事務所の体温計で測定してみると、37.8度。

 あー、アウト。

 キッチンに戻って、店長に体温を報告する。

「仕方がないね。今日はこれまで、お疲れ様です。」

 やっぱりこうなったか。

「うちも客商売だから、熱がある場合は、すぐに返すことになっているから。

 それに、お客様や同僚の人にうつったりすると大変だから、今日はこれで帰ってね。」

 ごもっともな理由です。

「では、そうさせていただきます。

 お先に失礼します。」

 そう言って、1時間もたたずに帰ることになりました。

 今日は、ゆっくりしよう。

 熱のせいか、何か忘れているのも気が付かず、言われたまま、帰宅することとなった。

 悲惨な思いは、ここから始まる。


「ただいま。」

 帰ってみると、居間には、妻と仕事から帰った娘が、横になっていた。

 二人とも、昼寝(?)というか、夕寝の最中だった。

 けだるいので早く横になりたい。

 仕事着を脱いで、普段着に着替え始めたところ、妻が一言。

「えっ! 誰? お父さん?」

 少し、虚ろ虚ろしていたのだろう妻が、寝ていた体を起こして、そう言ってきた。

(やばい!)

妻の存在と、言うか、妻の性格に、気が付いた。

 そうだった、こんな時間に帰ってきたら、何言いだすかわからない。

 あー、熱のせいか、ここまで気が回らなかった。

 9時までどこかで時間をつぶせばよかったのに、帰ってきてしまった。

「仕事に行って、1時間で帰ってきたの?」

 その言葉に、状況説明をさせてもらうことにするが、多分、何を言っても聞いてはくれないだろうが、一応、答えることにした。

「熱が、37度を超えたので、帰って体を休めなさいって、言われて返ってきました。」

 ちょっと暗かったので、妻の表情までは判らなかったが、おそらく、目が吊り上がっているだろうと思えた。

 妻の思考は、自己中心的というか、俺様思考なのだから、こういったことにはうるさかったのだ。

「仕事に出て、1時間で帰ってきたって、いくらも稼げないじゃないの。

 何しているの!」

 始まってしまった。

 こうなると、もう、見境なくなるが、答えないわけにはいかない。

「会社の規定で、37度以上熱がある者は働かせない。という規定があるので、帰らされました。」

「そんなことは黙っていれば、いいだけでしょ。

 何、すっとぼけたこと言っているのっ!」

 あー、出た。

 ご都合主義、自分の考えの押し付け、もう、止まらない。

八つ当たりまで出なければいいけど。

「たかだか、1時間で帰ってくるなんて、全然稼げないじゃない。」

 そこだよね。

(旦那が熱あって、けだるい程度なら、どうでもいい、私に貢献しろだよね。

 ここは、ブラック企業というより、ブラックホームだな。)

「そうはいっても、客商売だから、37度超えたら働けないんだから、仕方がないだろう。」

「そんなの黙っていれば判らないのにぃ、なんで、帰ってくるの。」

 こうなったら、止まらないのはわかってはいるが、自分も熱のせいか、よく考えることができなかったため、一言言ってしまったら、止まることは無い。

 そして、次の一言が出た。

「だったら、病院行ってこい!」

 あー、出た。

 今、午後7時なのだけど、この時間に空いている病院なんて、風邪位じゃ受けてくれないよね。

 でも、もう止まらない。

 いつまで続くか。

 私も言わなければよかったのだろうけど、熱のせいか、これに呼応してしまった。

「今、午後7時ですけど、空いている病院って有るんですか?」

 言ってしまった。

「そんなの、知るか!」

 あー、やってしまった。

「判りました。

 とりあえず、近所の渡辺医院に行ってきます。」

(空いているわけないけど。)

 そう言って、玄関に向かおうとすると、

「今から行ったって、空いてない!

 自分で調べて行け!」

 あー、言われたとおりにしようとすると否定する。

 いつものパターン。

 自分のいった事を棚に上げて、その通りにしようとすると、私の行動を否定する、いつものパターンです。

「判りました。」

 と、小声で言いつつ、以前も、時間外診療をネットで調べたんだけど、ヒットしなかったことを思い出しながら、パソコンを開こうとすると。

「具合が悪いんだったら、パソコンなんか開かず、今すぐ寝ろ!」

(はー、またかよ。)

 今、自分で調べろと言った事は忘れて、また、私の行動を否定します。

 何も考えてないからなのでしょうね。

 前後の事も考えず、思ったことだけ声に出す。

 この世で一番質の悪い性格です。

 熱のせいもあって、こっちもあまり考えず言葉に出していることを差し引いても、激しすぎる感情で言葉に出してます。

「はい。」

 そう答えて、座布団の上で横になろうと思ったら、

「何してるの、布団しいてでしょ。」

(えっ!)

 こいつ何言っているんだと、思っていたら、

「あんたが、自分の布団をしいて寝るんでしょ!

 誰が、あんたの布団をしくの?

 自分でしいて、寝るのが当たり前でしょ!」

 6畳の居間はこたつ兼用のテーブル・サイドボード・テレビが有り、空いているスペースには、娘がうたた寝しており、布団を敷くスペースが無いのにどうするのか。

(こいつ、ぶん殴ってやろうか!)

 本気で思いました。

しかし、どんな理由があろうと、殴ったほうが悪い。

 世の中は言葉の暴力より、実際の暴力のほうが悪いとなっている。

 傷は、癒えるが、言葉で受けた傷は、一生残るのに、世の中は実際の傷のほうを優先する。

(こらえろ、こらえろ、暴力だけはダメ。)

 そう、念じて、どうやって布団を敷くスペースを確保しようかと思っていると、テーブルと押し入れの間の狭い場所を指さして

「そこに、布団を敷けばいいでしょ!」

 そのスペースには座布団は敷けても、布団は敷くことができない。

 仕方がないので、テーブルを移動させる。

 移動させようにも、一番広いスペースには、娘が寝ている。

 娘の足元の方にテーブルを移動させてなんとか布団を敷くだけのスペースを確保する。

押し入れから布団を下す。

 熱のせいと、妻の言動で、頭に血が上ったせいか、作業が雑になってしまい、布団を畳の上に落してしまった。

「ホコリッ!」

 布団を落としてしまったので、妻のところまでホコリが飛んで行った。

「ちゃんと、やりなさいよ、布団も敷くことできないのっ!」

 顔の前を手であおりながら、また、怒り出す。

「すみません。」

 一応、謝って、布団を敷いた。

 こうなってくると、私も何が何だか分からなくなっており、毛布を布団の上に敷いたら、間違って裏表を逆にしてしまった。

(あ、間違えた。)

 そう思った瞬間。

「裏表逆でしょ、何、やってるの!」

 思いっきり突っ込んできます。

「すみません。間違えました。」

 そう言って、ひっくり返して、布団をその上に敷いて寝ようとしたら、

「風邪なら、なんで薬飲まないで、寝るの!」

(はあぁ、お前が寝ろって言ったからでしょ。)

 なんか、もう、反論する元気も無くなってきました。

「はい、風邪薬飲んで寝ます。」

サイドボードの中にある風邪薬を取ろうと思ったら、6袋も取ってしまった。

よくある市販の顆粒の風邪薬である。

2袋が、真ん中のミシン目で切れるようになっているタイプだ。

気力も妻の毒気に当てられ最悪の状態、体調も熱でだるい状態なので、いつものようにはいかない。

一瞬、この持ってしまった6袋全部飲んでしまおうかと思ったが、さすがにそれはまずいと思って、一対だけ取り出す。

でも、いちいち真ん中で切って1袋だけにするのも面倒なので、風邪薬を2袋を持ち、台所へ行き、風邪薬を飲んだ。

その風邪薬を飲んでしまったときに、記憶がよみがえってくる。

(あれ、確か、仕事場でも飲んだよな、約1時間前に・・・。)

 気が付けば、ここ1時間とちょっとの間に、3回分の風邪薬を飲んでしまった。

(昔の風邪薬の市販薬でも、早く治したいからと言って、2倍飲んでしまって、死んだから、2倍でも致死量にならない様になっているって聞いたことがあるけど、3倍って、どうなんだろうか?

 うーん、まぁ、これで死んだら死んだ時だな。

 そうなれば、このブラックホームともおさらば出来てちょうどよいか?)

 などと、考えつつ、布団に入って横になった。

この大騒ぎでも、仕事から帰って横になっている娘は、目を覚まさないでいた。

さすがに、起きるだろうと思うぐらいの騒ぎでも起きない。

大物なのかどうかは判らないが、一度うたた寝をした娘は朝まで起きない。

これも、妻の不満の原因でもある。

でも、今日の騒ぎでは話は聞こえているだろう。

いつもは妻があきらめて、そのまま寝かしている。

それに、まだ、時間的に寝かしつけていても良い時間帯だ。

それが、今度は矛先が娘に切り替わった。

「陽ちゃん! こんなところで寝ちゃダメでしょ。」

(おいおい、お前も一緒に寝てただろう。)

 まぁ、私と妻のあれだけの大騒ぎでも起きなかったのか、ネタふりしていただけなのかは判りませんが、次の犠牲者です。

「夕飯もお風呂もまだなのに、寝ちゃダメ。」

 それは、ごもっとも。

「ねーぇ、起きてよ。」

 そろそろ、切れだすころでございます。

 先ほどの事もあるので、私が口を出すと、全開モードになって私に矛先が変わってしまうので、私は身を潜めておくことにします。

 そう思っていると、

「この毛布は、私とお兄ちゃんのだから、陽ちゃんは使っちゃダメなの。」

 私は反対を向いて目をつむっていたので、判らなかったが、どうやら娘毛布を取り上げようとしているらしい。

「ほら、さっさと起きて! 一緒に夕飯作って。」

 夕飯の手伝いなんていつもはさせないのに、今日だけ約束していたのかどうなのかは、判らないが、そう言って娘を起こそうとしている。

 しかし、娘は起きようとしないのが、見ないでも判る。

 いつもなら、ゆするか「起きなさい」等の言葉だけなのだが、今日は、先ほどの事もあって、実力行使に出たみたいである。

 娘の毛布を取り上げたみたいだ。

「そんな恰好じゃ風邪ひいちゃうよ。 下着だけじゃ寒いでしょ。」

(え、春だよ。

 もう8時ぐらいだよ。

 下着姿じゃ、本気で風邪ひく。

 ましてや、ここに風邪ひきで熱がある人いるのに。)

 最近は異常気象で、この時期でも最高気温が30度を超える日があったが、まだ春である。

 さすがに、日が沈んで薄暗くなったら、寒い。

 そう思っていたら、

「クチュン」

 娘のくしゃみである。

「クチュン! クチュン!」

 寒いだろうに、本気で、毛布を取り上げたみたいです。

 娘は、仕事から帰って、スーツとスカートを脱いでそのまま、うたた寝をしたのだろう。

 何度か助け舟を出そうかと思ったが、そんな元気は無く、無言でいると、さすがに寒さに耐えきれず、娘は、二階へ上がっていきました。


 こんなことは日常茶飯事、忘れようと思うのですが、忘れようと思っても忘れられません。

 そんなことが、約30年続きました。

 何かの拍子に、そういったやり取りを(大体こんな時に出てしまいます)口に出してしまうと、

「あんた、そんな事、よく覚えているね。」

 そう言われてしまいます。

 このことは、忘れようと思うのですが、しばらく、頭の中から離れません。

 何かのテレビで聞いたことがあります。

「いじめは、いじめた側は、そのことを忘れているが、私は、今でも鮮明に覚えています。」

 なんだかそんなことが頭をよぎります。

 私が良く覚えているということは、いじめられたってことなの。


 次は何のきっかけで、また、同じようなことが起きるのか・・・。

 家の中で妻は、自分が中心なのだと、無意識に思っているのでしょう。

 自分の都合の悪いことは、家族のせい。

 自分の感情だけで、動けるのが家庭の中、子供も家族も妻の所有物。

 だけど、人には感情も考えることもできます。

 家族であろうと、自分の感情だけで扱っていると大変なことになります。

「体の傷は治せても、心の傷は一生残る。」

 そんな言葉が、頭の中に浮かびました。


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