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蒼と影と、煌きと

作者: いちのせあつき


俺は、人目を気にする。

どう見られるかとか以前に、俺に視線を向けられるのが嫌いだ。

だからいつも人通りの少ない道を選ぶし、土日の昼間なんて滅多に外出しない。

まあ大抵仕事があるから、そんなに土日がフリーになる事は無いのだけれど。


だが生憎、今日は土曜日だった。

そう、仕事が休み。ついでに明日も休み。二連休。

平日の休みの方が俺は嬉しかった。

出来れば近所の大きなスーパーに買い出しに行きたかったけれど、家族連れが多いだろうし、諦めてしまった。


でも、買わなくちゃいけないものはある。少し高くつくが、仕方ないのでコンビニに行くことにした。コンビニ自体は夜にしょっちゅう行くが、いつも水くらいしか買わない。


時間は22時40分。


土曜の夜の、このまだ遅過ぎない時間は、意外と人が少ない。

俺の住んでる場所は住宅街だからそもそもそんなに夜人は歩かないけれど。


急ぐ必要はない。すぐ近くにはあるが、ゆっくり歩いた。


コンビニに着いても、客は俺しか居なかった。店員は2人見えた。

必要なものを買い、すぐに店を出た。


そしてまた、ゆっくりと歩く。

だけど、この停止しているような時間を、なんとなく進めたくなかった。

もうすぐ家に着いてしまう足を止め、ガードレールに腰をかけた。


買うつもりのなかった缶コーヒーを袋から取り出し、腰掛けたまま飲んだ。


そんなに天気は良く無いが、空を見ると少しだけ星が見えた。でも、ほぼ雲で覆われていた。だが、そんな空も俺は好きだし、今止めようとした時間を、流れる雲がゆっくりと進めてくれた。


今おそらく、俺はとても機嫌がいい。


俺は機嫌がいいと急に歌うからだ。

まぁ外だし、口ずさむ程度だけど。でもいつのまにか歌ってた。



めちゃくちゃ気分いいな。



少しだけ風が吹いてて気持ちいいし、誰も居ないし、ゆっくりしてるし、歌いながら寝てしまいそうだった。


「あの、」


俺は不覚にも驚いた。

いやだって気配なかったし、いや、俺がリラックスしすぎたのかもしれない。

でもうまく驚きを隠せなくて、空になったコーヒー缶を落としてしまった。


「あーごめんなさい。」


女だった。

こんな夜にこんな人気のない場所で1人でコーヒー飲みながら歌ってる男に普通声かけるか?俺はもうその時点でこの人とは色々と”無理”だと感じた。


女は俺がその判断をしてるうちにコーヒー缶を拾った。

失敗した。先に拾われてしまった。


「どうもありがとう。」


とりあえず礼を言う。

俺はその場からすぐ去ろうとした。


「あの!」


来た。歌上手いですね?とかなんかコミュニケーションとってくるんだろう。まぁ俺は歌上手いから仕方ないけど、別にこの女に興味がない。むしろおそらく”無理”だ。でも返事はする。


「はい。どうしました?」

「その缶コーヒー私もさっき買ったんです!」


そういって見せて来た。確かに同じだった。

なんなんだろうか、この女は。

もっと危機感ってものがないのだろうか。


「こんなこと言うのもアレですけど、こんな夜に出歩いて、男の人に話しかけるの危ないですよ。」

「いや、大丈夫だと思ったので。」


よくわからない。

完全にこれは俺が捕まってる。

でもまあ、純粋そうな子だし、捕まった俺の負けかな。少し付き合ってあげることにした。


「よくわからない根拠だね。話しかけたのが俺で良かったって感謝したほうがいいよ。」

「ほんと良かった!感謝します。」


随分と明るい子だ。


「でもほんと危ないよ。なんでこんな時間に出歩いてるの?」

「あー、バイト終わった帰りなんです。」

「じゃあ早く帰らないと。」

「でもなんか話しかけたくて!」


話しかけたいと言われて話しかけられても、何を話せばいいのかよくわからない。缶コーヒーが同じなだけでどうして話しかけたかったんだろう?明らかに変な男だと思うけど。


いや、この子も変なのか。


「変わってるね。」

「よく言われますよ。でも、えっと〜…。」

「ん?」

「あの、名前、なんていいますか?あ、偽名でも良いですけど!」

「ソウイチ。」

「ソウイチさん!」

「君は?」

「ヒカリです。」


少し笑った。俺が。


「どうして笑うんですか?」

「いやほんとに、名前通りの子だなあって。」

「目立ちそうな名前ですよね。」

「いいじゃん。似合うから。」


するとヒカリちゃんの顔が少し暗くなった。


「私は、ソウイチさんの方が光って見えますけどね。」

「こんな夜中に出歩いてるのに?」

「はい。」

「明るくて騒がしいところが苦手でね。」

「私は結構好きです。」

「好きそうだよね。」


また、ヒカリちゃんの顔が暗くなった。


「もう帰りなよ。俺は帰るよ。」

「わかりました。明日もバイトなんで、この時間に座っててください。」

「俺が明日仕事だったらどうするの?」

「仕事でも、この時間はさすがに終わってますよね。」


まあ終わってるけどさ。


「喉乾いたらまたそこのコンビニには来るよ。」

「待ってます!」


最後に明るい顔を見せて姿を消した。


あんなに明るい子にこんな暗い場所は似合わなさすぎる。

俺はこう言う場所が似合うから、俺とヒカリちゃんも合わない。

あんなにキラキラしてる子はもっと陽に当たる場所で笑って行くべきだし、夜に密会してるみたいであんまり良くない。やめるように言おう。




22時半、俺は仕方なく家を出た。コンビニに寄るのはすっかり忘れ、そのまま昨日座ったガードレールの場所まで足を運んだ。


なんとなく楽しい時間だった気はする。

だけど、夜に外で女の子と会うのはなんか俺が捕まりかねない。性格も正反対みたいだし、別にこれで終わっても良いはずだ。


「あ!」


ヒカリちゃんが来た。


「良かった!居て!」


ヒカリちゃんは、コンビニの袋から水を取り出した。


「これ飲んでください!」


俺がいつも飲む水だった。


「この水俺も好きだよ。」

「えっ、あ、そうなんですね。良かった。」


長居しても良くないので俺はすぐに切り出した。


「話しかけてくれて嬉しかったけど、ヒカリちゃんは明るいしキラキラしてるよね。俺は正反対で絶対目立ちたくもないし、暗闇に紛れてたいんだ。影に隠れて生きてる。こんなに正反対で、仲良くできるとも思わないし、夜は本当に危ないからもうこの時間に俺と会おうとするのはやめてくれない?」


「…え?」


なんか本当に不思議そうな顔をしてた。


「ごめん、どこがわからなかった?」

「いや、私の考えと違うなっていうのと、正反対でもないなって思って。」

「うん?」


「私は確かに、明るくて騒がしい場所好きなんですけど、それって、みんな照らされてて、喋ってて、そのたくさんみえるなかの1人でいれば、目立たないからなんです。」


「私は、逆に、暗闇にいる1人のほうが、すごく目立って見えると思います。」


「だからなるべく明るくて騒がしいところにいれば、私だけを見る人ってそんなに居ないんですよね。風景で終わるんです。」


「だから、私は目立ちたくなくてそうしてるから、別に、正反対じゃないのかなって。」


「実際、目立ってたから、私に目をつけられてますよね?」


ヒカリちゃんは笑った。


「なるほど、そうかもしれないね。」




「目立ちたくないなら、一緒に昼間デートでもしませんか?」


無茶振りをされた。


「それはちょっとなあ。蒼い空は眩しすぎる。」

「蒼そうな名前してるのに?」

「いやいや、それは関係ないでしょ。」

「影にいたソウイチさんは蒼く煌めいてましたよ。」

「そんなに目立ってた?」

「ソウイチさんもいってるじゃないですか、夜は危ないって。それって、目立つからじゃないですか?」



「わかったわかった。デートしよう。一回だけな。」



突然書きたくなり、2時間で書き上げました。

時間制限もうけてかいたので、すこしはしってしまったかもしれません。でも書きたいことをかけました。

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