彼女の後輩
会長視点。
リコの過去発覚。
さてっと。ここが彼女の出身中学か。といっても今日は休日だし、居るのは部活の子だけだろうけど。……話が聴ける子がいるといいんだけどね。
校門で考え込んでると、中から二人組の女子生徒が出てきた。
「あの、学校に何かご用ですか?」
「ああ、うん。『渡辺真理子』さん、知ってる?」
「……真理子先輩が何か?」
警戒心もあるけど、彼女の知り合いらしい子発見。……うまく聞き出さないと。
「……彼女、高校で自分を偽ってるみたいなんだ。なんとかしたいんだけど本人に聞くのもね」
昨日も逃げられたし。
「偽るって?」
「テストも、運動もかなり手抜き。わざと地味な格好で猫背にしてる。……手抜きはともかく、猫背とかよくないし、できればやめさせられないかなと思って。……まあ僕の独り善がりなんだけどね」
できれば本来の彼女を見たい。しかしほかのやつらにはあんまり見せたくない。……ジレンマだね。
「……分かりました。お話しします」
「……いいの?」
「だって先輩、そうなっちゃったのはきっと……」
ほんとに大変な事が合ったようだね。
「ここじゃ何だし、時間があるならお茶でも奢るよ? ああ、そうだ。僕は○○高校2年で生徒会長をしている青塚っていうんだ。心配なら、渡辺さんに連絡を入れて確認してもらっても構わないよ?」
見ず知らずの男に話すのはやっぱり抵抗があるだろうしね。……少なくても知り合いっていうのは分かってはもらえるだろうし、本人に許可をもらえればなお良し。
「……いえ、大丈夫です。お話しします」
あっさりと返事がきた。なんでも彼女のお姉さんに槙原さんからそれらしい連絡があったとか。さすがだね、グッジョブ。
そして聞いた話。
もともと帰国子女で、中2の夏に転入してきたらしい。美人、運動神経バツグン、学力に至ってはスキップで高校卒業済みというチートぶり。性格も正義感がつよく、面倒見がいい。人気者だったそうだ。もっともほとんどの人は高嶺の花と憧れてただけみたいだけど。
そうしているうち、女子生徒の一人が粘着質な男に狙われ、渡辺さんがそれを阻んだ。すると、その男は今度は渡辺さんに狙いを変えた。それだけじゃなく、ストーカー行為やら、ないことないことを噂として振り撒いたそうで、警察沙汰にまでなった。
それが自分のせいだと抱え込んでしまったらしい。
友人や、校内の生徒たちも守ろうとしたそうだけど、相手側が親の権力とかも使いまくった事で、いろいろたいへんだったらしい。
それでちょうど高校から向こうの県に引っ越しすることになった槙原さんを(精神的な)護衛として、寮のあるうちの高校に来たそうだ。……ちなみに権力使いまくったバカは、家ごと潰れたそうだ。……渡辺さんの実家のコネはとんでもなかったー……。
それで、今は目立たないように、こっそりと活動はすることにしてたんだね。……こっそりと後ろから困った人をたすけてたのはそのせいか。
「ありがとう、助かったよ」
「いえ。……それより真理子先輩をお願いします」
「……わかった」
うん。全力で落として、絶対に守るよ。
リコの実家というよりは、両親が個人であちこちに恩と貸しを売りまくってる状態です。
……おかげでお偉いさんの中にも、リコの両親に頭が上がらない人が多いとか……。