ちょっとご機嫌
会長視点。
生徒会室での仕事中、妙に視線を感じて顔をあげると、メンバーが全員こっちを向いていた。
「どうかした?」
「どうかしたって、様子がいつもと違うのは、青塚君の方でしょう?」
うーん、そんなに分かりやすかったかな?
「原因は例の女の子だろ?」
「うん。まあ、まずは外堀埋めと、情報集めかな? どうして隠してるのか、確認しないと動きづらいし」
「かいちょーが女の子って⁉」
「誰⁉」
そうなるよね。
「2年2組の渡辺真理子さんだよ。分かりにくければ、槙原詩織さんの友人でもいいけど」
「って、あの地味な子」
「……」
あれ、会計はともかく庶務が黙っちゃった。
「地味、ね。だけどたぶん英語はかなり得意みたいなのよね」
「ほう、そりゃどういうことかね」
佐藤、おもしろがってるな。
「今日の授業でね、教科書も出さずにいたから、先生が怒って指名したんだけど、迷わずに正解をいったのよ。しかもまだ習ってない、教科書の一番後ろの方、おまけに発音も完璧で」
「ほう、そりゃ興味あるってか、ちょっと納得だな」
「なんで」
「テスト。半分は完璧に解いて、残りは空欄で提出してんだよ。つまり、埋める気なら全部埋めれるってことかってね」
つまり、学力も隠してるのか。
うんこれは。
「明日、彼女の出身中学に行ってみるよ」
「おい、場所わかんのかよ」
「槙原さんと一緒でしょ」
「あ、そっかー。じゃ、オレもいくー」
「ダメね。明日は備品の買い出しの予定でしょう」
「う、それはー」
「いくって言ったのはあなたなんだから、真面目にはたらくように」
「……はい」
相変わらず庶務は強い。居なくなるのが残念だ。
「私の後任も必要だし、渡辺さんに頼むの?」
「渡辺さんか槙原さんのどちらかかな。もう片方はその補佐という形で手伝ってもらえればいいかなって思ってるんだけど」
「お、そりゃいい! ぜひそうしろ!」
「やれやれ」
佐藤にため息をつく庶務。期待を高める佐藤と会計。……副会長は我関せずと仕事中。僕も明日のために、さっさと片付けよう。
追いかける前に外堀埋め中。
次回の会長視点でリコの過去発覚予定。