表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっかけっこ  作者: 海影
32/34

決着

リコ視点。

 開始してからまずは一周。ゆっくりと校舎を回る。そのあと、昇降口まで戻ってきて、あたしは本気で逃げ始めた。

 屋台の前に置いてある看板を踏み台にして、屋台自体を飛び越える。回りから歓声と驚きの声が響く。

 リュートはそれを予測していたようで、最初から屋台を避ける方向に走っていた。……最初の一周で、現在の状況とか人の流れとか、分析できてたからかな。

 あたしがアクロバットなことをしながら逃げるのにたいして、リュートはあたしの動く先を予測しつつ堅実におってくる。前とちがってリュート自身もあたしの思考とか読めるようになっているようだね。まあ一緒にいる時間も大分増えたからねー。

 ふふふふ。ずいぶんと楽しくなってきたよ!


 そうやって逃げることしばらく、ふとするとリュートの気配が後ろからなくなった。どうやらなにかたくらんでるのかな。あたしは今のうちっと校舎の二階の窓から飛び降りる!ーー良い子はまねをしないように。思いっきり危険だからねーー下にはさっきのイベントで使われていた、トランポリンがあったりするのだ。というわけで、そこに飛び降りて反動で飛び上がって空中回転。スチャっと見事に足から着地! その瞬間だった。


「……捕まえたよ」


 後ろから抱き締められて、思わず硬直する。


「……いつの間に?」

「階段を上がったときかな。たぶんこう来ると思って」


そうですか。しっかりと読まれてましたか。


「はあ、しょーがないな。あたしの負けだ」


その瞬間、ワーっと歓声があがる。


「やりました! 生徒会長がメイドさんを無事捕獲です! 皆様、暖かい拍手を!!!!」


 拍手があがるなか、リュートがあたしを離して隣にたつ。そしてふたり揃って観客に一礼をする。

 これで、このイベントは正式に終了した。





 このあと、あたしとリュートは閉会まで仕事はない。まあ、さすがにあそこまで走りまくったら、余裕がないと思うのも無理ないけどね。……実はあたしもリュートもまだまだ体力的な余裕はあったり……。このイベントが決まってから、ふたりして毎日一時間マラソンしてたからね。ある程度の速度を保ちつつ走るのは体力がいる。ましてや今回のはentertainmentエンターテイメントだからね。

 というわけで、今はふたりして人気もない生徒会室でのんびりと休憩中。


「やっと、捕まえられた」

「ん。捕まっちゃったよ」

「うん。だから、はっきりといっていいかな?」

「何を?」

「僕がリコのことを好きだって」

「へ⁉」


 あ、いや知ってはいたけど、そういえばはっきり言われたのは初めて⁉


「返事、聞いてもいいかな?」

「えっと……」


 うん、リュートのことは嫌いではない。大事なのもたしか。だけど……。


「……ごめん。正直わからないんだ。リュートのことは好きだけど、この『好き』がリュートの『好き』と同じかわからない。だから、返事といっても……」


 あたしの戸惑いがわかったみたいで、リュートはクスクスと笑う。


「大丈夫。今はその『好き』でいいよ。その代わり、僕と付き合ってほしい。リコが僕に対する感情をはっきりと決めるまで。……できれば好きになって、本当の恋人になってほしいけどね」

「……わかった。捕まっちゃった訳だしね。だけど、あたしがほしいなら、本気で頑張るように。……あたしがリュートのことをちゃんと好きになるように」

「もちろんだよ」


 そういってリュートはあたしを抱き寄せた。あたしは逆らわずにされるままでいる。

 外からはまだ、祭りの騒ぎが聞こえてきていた。

一応、決着はつきました。

次回でラストです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ