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LAST60  作者: 秋雨冬至
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6/20

曇り空

7月19日 夏休み初日。


セミの鳴き声で目が覚めた僕は時計を見てつぶやく。


「ちょっと寝すぎたかな……。」


時計の針は12時に差し掛かるところだった。


起き上がった僕は、カーテンを開け窓を開ける。


部屋に差し込む太陽の日差しは、ジリジリと肌を焦がすような暑さだった。


「暑いな……。」


レースカーテンだけ閉めて、僕はベッドに座り携帯を手に取った。


昨日のメールのやりとりを見ながら、少しにやついた表情になっていたと思う。


「笹浪さん、何してるかな……。」


そんなことを考えながら、ベッドに横たわり携帯を眺めていた。


「メールしてみようかな。」


特に用事があるわけではないが、メールをすることにした。


「おはよう! 今日も暑いね。」


全く内容のないメールとはこんな感じだろうか……。


文章能力のかけらも感じさせない僕のメールに返事をしてくれるだろうか?


まぁ、考えたところで送ってしまったあとでは意味はないけれど。


そうこう考えているうちに彼女から返事が来た。


「おはよう! 今起きたの? お寝坊さんだね(笑」


彼女のメールがあまりにも可愛くて、思わずドキッとした。


「そうそう、起きたら昼前だったよ(笑 

 笹浪さんは朝から起きてたの?」


普段、あまりメールをしない僕にとっての精一杯の文章だろうか?


「うん、起きてたよ! 今は夏休みの課題をしに隣町の図書館に来てるの。」


夏休みの課題……それは誰にとっても、夏休みという夢から現実へ戻される言葉だろう。


夏休み初日は特に、その量の多さに嫌気がさすものだ。


「そうだった、僕もやらないと……。 お互い頑張ろうね!」


メールを送信したあと、山積みの課題をするため机へと向かう。


「うんうん。 頑張ろうね!」


ひとまずメールは終わりにして、僕は課題をやり始めた。


彼女が頑張っている姿を想像すると、思いのほかはかどった。


3時間ほど経過した頃には、簡単な課題が2つほど終わった。


「ちょっと疲れたな……今日はこれくらいにするか。」


背伸びをしながら椅子にもたれ掛かる。


「散歩でもしようかな。」


僕は気分転換をかねて、公園まで散歩をすることにした。


昼前は良い天気だったが、この頃にはあたり一面曇り空になっていた。


公園の入り口でのこと。


公園の中から走って来る女性とすれ違う。


瀧川先輩だった。


「瀧川先輩……?」


泣いていたのだろうか? 走り去る彼女の目は少し赤かった気がした。


「何があったんだろう……。」


気にはなったが、どうすることも出来ない僕はベンチへと向かった。


僕がそこで目にしたものは、下を向いて涙を流す彼女の姿だった。


僕はゆっくりと近づき、そっと彼女の隣に座った。


「笹浪さん……大丈夫?」


僕の顔を見上げた彼女は少し驚いて涙を拭った。


「あっ、春川くん……。 大丈夫。」

「もしかして、瀧川先輩と何かあった?」


彼女は再び、下を向いて黙り込んだ。


「ごめん、変なこと聞いたかな……?」

「ううん。」


下を向いたまま彼女が答える。


「図書館からの帰りだったの?」

「うん……。」


事情がわからないだけに、掛ける言葉がなかった。


重い空気の中、しばらくして彼女が立ち上がった。


「もう大丈夫、ありがとう。 わたし帰るね。」


そう言って彼女は立ち去った。


「先輩と何があったんだろう。」


彼女の反応からして、瀧川先輩と何かあったのは間違いないだろう。


僕はしばらくの間、ベンチに横たわり曇り空を見上げていた。


彼女が帰ってから10分後くらいに、彼女からメールが来た。


「さっきはごめんね。」


この一文が彼女の精一杯なんだろう。


「僕は大丈夫。 もし良かったら……相談に乗るからなんでも言ってね。」


今から思えば、なんでも言ってね……は、彼女にとっては残酷な言葉だったかもしれない。


誰にでも、誰にも言えないことは幾らでもある。


そんな単純なこともわからないほど、僕は彼女の涙に動揺していたのだろうか。


「はぁ……。」


ため息をつきながら僕は家へ帰った。


部屋に入った僕は、ベッドに横たわり天井を見上げる。


彼女の涙は……僕の胸をしめつけた。


「笹浪さん、どうしてるかな……。」


携帯を握りしめ、僕はまた……ため息をついた。




結局その日、彼女からの返事はなかった。




彼女と瀧川先輩の間に何があったのか……。


そもそもどうしてふたりが……。


僕がそれを知るのは、もう少しあとのことだった……。




そして、短冊の裏の数字が48だったことを僕は知らない。




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