表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LAST60  作者: 秋雨冬至
4/20

おとぎ話

7月13日 休日の昼。


目が覚めて一番に彼女の顔が浮かんだ。


「会いたいな……。」


学校がある日は会えるが、休日は少し憂鬱だ。


「休みの日は何してるのかな。」


彼女と仲良くなってから1週間足らず、連絡先の交換すらしていない。


「連絡先聞いておけば良かったな……。」


彼女と電話やメール……妄想は膨らむ。


「はぁ……。」


早々に聞いておけば、と少し後悔した。


「そういえば……。」


彼女が良く公園で読書していたことを思い出した。


僕は公園へと向かった。


ベンチにいる彼女を見つけた! なんて都合の良いことは当然なかった。


僕はベンチに座り、空を見上げた。


「それにしても良い天気だな。」


吸い込まれそうな青空だった。


「何しようかな……。」


以前は休日もバスケの練習で外に出ていたが、今はどちらかというとインドア派だ。


ひきこもりではないが……。


「商店街でぶらぶらするかな。」


公園とは反対方向だが駅前に商店街がある。


僕の住む街はあまりにぎやかな場所ではない。


寧ろ、少し田舎だろう。


大きめのショッピングモールなどは、電車で2駅くらい行かないとない。


まぁ商店街で大体の物は揃うので不便ではないが。


商店街にはお気に入りの本屋がある。


いつ潰れてもおかしくないような小さな書店。


だが、ここで扱う古書などは歴史好きの僕にはたまらなかった。


駅前までは距離があるため、一度家に帰り自転車で商店街へ向かった。


駅前の駐輪場に自転車を止めて本屋の中に入る。


しばらく物色していた僕の目に、1冊の本が飛び込んだ。


「人間以上サル未満」



それはそれで興味深い……がその隣だ。


「少女と白い短冊」


僕は手にとり本を開いた。


「これって……。」


状態が悪くボロボロでところどころ破れている。


「売り物なのかな……。」


読み始めた僕は、出だしの内容に驚く。


神社で少女がお参りをしているところから始まる。


その神社の名前が笹葉神社だった。


「白い短冊に神社か。」


僕は本を買い、家でじっくり読むことにした。


「ぐぅぅぅ。」


そういえば起きてから何も食べてなかった。


商店街のお惣菜屋でおにぎりを買い、食べながら駐輪場へ向かう。


ゴロゴロ ピカッ


さっきまでの青空が嘘だったかのように曇り空になっていた。


「降りそうだな……・。」


僕は急いで家に向かう。


途中降り出した雨に少し濡れた。


家に着いた僕は、風呂に入り部屋で本を読むことにした。


「母親の病気を治して欲しいと少女は願った。」


内容としてはこんな感じだった。


母親が不治の病に倒れた少女が、笹葉神社でお願いする。


雨の日も毎日。


ある日、神社で真っ白な短冊を拾う。


少女は短冊に願いを書き、神社にある木の枝に吊した。


そのあとも毎日、毎日少女は願い続けた。


願い始めて60日後 少女は……。


肝心なところが破れてるいる。


「良いところなのに。」


この辺りの状態が特に酷く、虫食いや破れたページも多い。


母親は  少女の  て   泣き続けました。


「母親は治ったのかな? 少女は……。」


どうなったんだろう?


読み終えたころには、すっかり夜になっていた。


「ご飯出来たわよー!」

「わかったー。」


夕食中もずっと気にはなっていた。


少女と真っ白な短冊 笹葉神社 老婆 僕と短冊 60日後。


夕食後、部屋に戻った僕は短冊を見つめた。


短冊の数字は54だった。




この日気付くべきだったんだ。


この物語の結末に……。


僕はまだ、何ひとつ知らなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ