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LAST60  作者: 秋雨冬至
13/20

夏祭り 後編

8月17日 17時の公園。


公園で待っていた僕と彼女のもとへ、先にやって来たのは美空だった。


「あの……春川先輩ですか?」

「こんばんは、美空さん。」


ツインテールで少し童顔な美空の浴衣姿は、彼女とはまた違う可愛らしさがあった。


「なるほど。」


また……心の声がダダ漏れになった僕を、「なるほどって何?」という顔で彼女が見ていた。


「いや、あはは。」


ほんの少しムッとした彼女の表情もまた……可愛かった。


「大地が惚れる理由がわかるってことだよ。」


僕は彼女の耳元で、小さな声でそう言った。


フォローになっていたかは……謎である。


しばらくして大地がやって来た。


「すまーん! 遅くなった!」


そう言ってやって来た大地の姿は、浴衣姿だった。


「このやろう! 裏切ったな!」


前日、私服でと言っていた大地の裏切りに思わずヘッドロック。


「イタっ。 わりぃわりぃ。」

「うりうりうり!」

「ごめ、ごめんって!」


そんな僕達のやりとりを彼女と美空が笑いながら見ていた。


「先輩、わたしが言ったんです……浴衣でって。」


美空が望んだなら仕方ないかと、僕はヘッドロックを外した。


それにしても……浴衣3人に私服1人は、流石に少し浮いていた。


悪びれた様子もなく美空と会話している大地に、それなら先に言えよ……と思った。


「とりあえず、行こうぜ!」


そう言って大地と美空が神社へ向かい歩きだした。


「僕達も行こう!」

「うん!」


大地達に続いて僕達も神社へ向かった。


計画では、4人でしばらく屋台をまわり、盛り上がった所で2人きりにする。


大地が美空を、拝殿の裏側から少し奥にある高台に連れて行き告白するというもの。


この計画はことはもちろん彼女も知っていた。


神社に入った僕達4人は、大地達がお参りをするために拝殿へ向かった。


お参りを済ませた大地達と僕達は、近くにあるヨーヨー釣りの屋台へ向かう。


懸命にヨーヨーを釣る大地を応援している美空の姿。


僕と彼女はその姿を見て、笑顔で顔を見合わせた。


「秋くんも頑張れ!」


そう言われて気合が入った僕は、次々とヨーヨーを釣りあげ……店主に苦笑いされた。


とても持ちきれないヨーヨーを店主に返し、僕達4人は1個ずつヨーヨーを貰った。


「春秋すげーな……。」

「まーな!」


そんなやりとりをしていると、美空が指をさして言った。


「先輩、あれ食べたいです!」


美空が指をさした先にあったのは、たこやきの屋台だった。


「そういやお腹減ったな。」


大地がそう言って美空とたこやきの屋台へ向かう。


「僕達も食べようか?」

「うん!」


嬉しそうな彼女の手を握り、僕達も屋台へ向かった。


僕達4人はたこやきを買って、屋台の裏手で食べることにした。


あつあつのたこやきを口に放り込み、熱そうにしている大地に美空がお茶を渡す。


「山崎先輩大丈夫ですか?」

「ふぅ……助かった。」


2人を見ていると、既に仲の良いカップルに思えた。


「そそっかしいな……大地は。」

「うるせー。」


そんな僕と大地のやりとりを、彼女と美空が笑いながら見ていた。


たこやきを食べ終えた僕達4人は、そのあともしばらく屋台をまわった。


型抜きの屋台では、型を受け取った瞬間に割ってしまった大地の姿に大爆笑だった。


このときは確か18時頃、花火が始まるのが19時だった。


しばらくして僕と大地が目配せをして、僕と彼女は大地のもとを離れた。


「あの様子なら大丈夫そうだね。」

「うんうん! きっと大丈夫だよ!」


僕達はそんなやりとりをしながら、2人でもう少し屋台をまわることにした。


「遥は何がしたい?」

「全部!」

「あはは。」


そんな冗談を交えながら……向かった先はリンゴ飴の屋台だった。


「昔、お姉ちゃんに買って貰ったんだ。」


そう言って懐かしそうにリンゴ飴を見つめる彼女の表情は少し寂しそうだった。


大小並ぶリンゴ飴の中で、僕達は小さい姫リンゴのリンゴ飴を買った。


「甘くておいしいね!」

「そうだね!」


リンゴ飴をぺロっと舐めてそう言った、彼女の表情に笑顔が戻った。


大地のことはもちろん心配だったが、彼女と2人の時間がとても楽しかった。


お面の屋台ではしゃぐ彼女の姿や、なげわの屋台で見事に外す僕を見て笑う彼女の表情。


彼女のどの姿も……僕にとっては最高の宝物だった。


しばらくして彼女が言った。


「ねぇ……見に行こうか。」

「えっ?」


大地と美空が少し心配になった彼女が、こっそり見に行こうと言い出した。


「バレないかな……。」

「暗いから大丈夫だよ!」


確かに大地に教えた場所は、少し暗い場所なのだが……。


しばらく悩んだ僕だったが、大地と美空を見に行くことにした。


拝殿の裏手から階段を上り、途中の分かれ道を左側へ、右側へ行くとさらに奥の山道に入ってしまう。


「大地……間違えてないかな。」


物覚えが悪い大地を心配をしながら、僕達は高台へと向かった。


距離にして5分くらいの道中、暗くて少し怖そうな彼女の手をずっと握りしめていた。


高台に着いた僕達は大地と美空を探す。


「あれ? おかしいな。」


大地達の姿はどこにもなかった。


「まだ来てないのかな?」


そう彼女が言ったあと、僕は大地にメールを送った。


「まだ高台行ってないのか?」


ブルブルブル。


「ずっと上ってるんだけど、まだ着かない……。」


不安は的中……分かれ道を右側に行った大地達は山道を進んでいた。


「大丈夫か?」


心配して大地にメールを送った。


ブルブルブル。


「なんとかする! サンキューな、春秋。」


大地からのメールを見た僕は、そのメールを彼女に見せた。


「大地くんならきっと大丈夫だよ!」


笑顔でそう言う彼女を見て、僕はそっとしておくことにした。


そのあと僕達は、夜景が見える場所にあるベンチに座った。


意外と知られていないが、この高台は隠れ絶景スポットというやつだ。


「凄く綺麗……。」


そう言った彼女の表情は、可愛い……というよりは綺麗に思えた。


ひゅー どんっ ひゅー ぱらぱら。


突然上がった花火の音とともに彼女が立ち上がった。


「凄いね!」


勢いよく上がる花火を見て、嬉しそうに彼女が言った。


「うん、凄いね!」


僕達はギュッとお互いの手を握りしめて、打ちあがる花火を見ていた。


ひゅー どんっ ひゅー どんどんっ ひゅー ぱらぱら。


牡丹や菊や柳……どの花火も綺麗だった。


連続花火が上がった頃だったろうか……花火を見ていた彼女の目から涙がこぼれ落ちた。


「どうしたの?」


そう聞いた僕を見た彼女は、小さく首を振り涙を拭った。


そんな彼女が愛おしくて……僕はそれ以上何も聞かず……ギュッと彼女を抱きしめた。


「秋くん……大好きだよ。」

「僕もだよ……。」


花火の音が激しく鳴り響く中……僕達はギュッと抱きしめ合い、そして……初めてのキスをした。


花火に照らされて地面に映った僕達の影は、しばらくの間……重なったままだった。


そのあと僕は、彼女の肩をそっと抱き寄せ……打ちあがる花火を見上げていた。


「おーい、春秋!」


声に振り返った僕達の先には、手を繋ぎ照れくさそうに笑う大地と美空の姿があった。


「で、どうだった?」


手を繋いでる姿を見て、成功を確信した僕がわざとらしく聞く。


「ばっちり!」


笑顔で大地が言うと、美空が恥ずかしそうに笑った。


あのあと……更に奥まで行った大地達だったが、途中で花火が始まり2人で見ていたらしい。


予想外だったのは、告白したのは美空だったこと。


美空いわく、怖がる美空の手を握る男らしい大地の姿に惹かれたらしい。


災い転じて福となす……というべきか、結果的には大成功だったわけだ。


そのあと僕達4人は、最後の花火が上がったあと神社をあとにした。



公園で別れた僕は、家に帰りベッドに横たわった。


そして、彼女とのファーストキスを思い出していた。


今でも覚えている、彼女とのファーストキス……それはとても甘い、リンゴ飴の味がした。



こうして、僕にとっての人生最高の日は幕を閉じた。


そして……運命の、僕達の運命を大きく動かす……あの日を迎えることになる。



短冊の裏の数字は19……残された時間は19日。


僕はまだ……何も知らない。



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